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キリシマミドリシジミの受難

 この蝶々は三重県の天然記念物。九州の霧島連峰で最初に発見されたとして名前があるが、実は御在所岳一帯が最初の発見であり、日本有数の棲息地だった。学会への報告が遅れたのが名前を霧島に譲る原因である。夏にこの蝶のオスは、美しい緑の羽を輝かせて谷間の樹林の間を飛びかう。幼虫はアカガシやウラジロガシの葉を好んで食べる。親もそれを知っていて、これらの樹の葉や小枝に卵を産みつける。それが羽化し群れをなして飛びかうと、
まったく登山を忘れて見入ったものだ。
 昭和20年代までは、この辺りで年間4000~5000匹もいた。それが温暖化や環境の変化、あるいはスカイライン開通で激減した。


 この蝶々にとって最大の被害は堰堤工事。裏道沿いの蒼滝のすぐ上に堰堤を2つ造るため、資材運搬道路の工事をしたときだ。山肌をブルドーザで削り、大きな岩石や土砂を下の北谷の沢へ投げ落とした。この乱暴な工事のため、アカガシなどの樹木は巨岩に折られ倒され、山肌が露出してしまった。これでキリシマミドリシジミの住居が消滅したのだ。登山者や自然保護団体の応急復旧がなされたが、翌年の台風でまた完 全に山肌が剥き出しになり、美しいキリシマミドリシジミが乱舞することはほとんど無くなった。この車道はスカイライン駐車地から裏道へ入るとき、登山者は誰もがいまも通行する。

 ここを通るときは右下の崩落したガケを見てほしい。そこがかって日本有数のキリシマミドリシジミの棲息地だったことを知ってほしい。

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