第16話「そしてわたしも園児となる?」の巻

穏やかに過ごした冬休み、幼稚園行けるかも?と予測していた両親でしたが
朝、机に用意された制服をみて、ムスコは泣き出した。
まだダメだったか〜。今日もスモールステップで行くことにした。
園の入り口で担任の先生が迎えてくれた。
ちょうど園の工事が始まり、ここで立ち話は車が危ないねと園庭にはいる。
少し遊具で遊んで、もう帰ろうかなぁ…と思っていたら
担任が「メガネ作ったんだよ!ムスコちゃんのもあるよ!」と、教室に手を引いて行った。
冬休み前、園児が画用紙とセロファンでメガネを作ったようだ。
好奇心が強いムスコは、新しいオモチャで恐怖心が和らいだのか
教室に入って行くではないか!?
予想外のて展開!「お母さんも一緒にいて」とムスコ。園も了承。
この日から、親子一緒で幼稚園に通うこととなった。

この時は、園を辞めて転園なり他の道を考えていた。
園のアラ探しする気で、通うつもりでいた。

翌日、まだまだ母親から離れる様子はない。
オトモダチとのコミュニケーションを中心に観察をしていこうと思った。
朝の外遊びの時間、誰も使ってない遊具で遊んでいた時
近寄ってきた園児が「ここオレたちのキチだから。つかわないで」という。
はぁ〜、て思った。凸凹ちゃんはこの見えないルールが苦手なのだ。
空気を読むとか、相手の顔色をうかがうとか。
もう、こんな頃から始まってんのか…
先生も見てないし、こんな状況でも子ども同士の中で学べというのか?
こう言われて、泣ける子はSOS出せる。口で応戦する子もいる。
言葉が乏しい子は手が出るだろう。知恵のある子は大人に密告する。
このどれもできない子は、ただ傷つくだけだな、と思った。

教室に入ってからのムスコは、といういと。
出席を取ったりする団体行動の時は、輪に入らず絵本を読んだり、廊下に出たりしていた。
みんなが座っていても、ひとり歩き回ったり。
同じようなことを他の子がすれば注意されるけど、ムスコだけは許される。
『大目に見てもらってるようで何だか気がひけるなぁ』そんな気分だった。

翌週、自由に遊んでいる時は、私の存在も忘れて、楽しんでいるように見えた。
発表会で歌った歌を先生が弾いた瞬間、ピャーッと廊下に逃げ出した時があった。
『あぁ、トラウマになってるなぁ』と感じた。
担任も気づいたようで、あとで申し訳なさそうに声をかけてくれた。
この日は、発表会のDVDが出来上がり、購入者に配られた。
自宅で観ていた時も、合奏・合唱が始まると「おかあさん、けして!」と言って逃げ出した。
イヤなことあったんやなぁ…家で元気に歌ってたのになぁ…
その歌とは「おへそのうた」なのだが、歌詞がけっこうややこしい。
歌詞が難しくて覚えられなかったのか?
自分は覚えてるけど、みんなが間違うのが気になったのか?
文字が読める分、耳だけで覚えるのがしんどかったのかもしれない。

園に長くいるので、他のクラスの先生もみるチャンスがあった。
1月生まれさんの誕生日会でのこと。
この日は、誕生日月の子の親と、出し物をするクラスの親達が見学に来ていた。
講堂に全員が集合する中、端っこに私も座らせてもらっていた。
催しが始まる直前「お母さん、ムスコくんも落ち着いてますから後ろの方へ移動してください」と急に言われた。
なぜ近くにいたらダメなんだ?すこし違和感があった。
他の保護者がいるから?あの親だけなんで近くにいるの?て苦情くるから?
この時は、移動の必要が本当にあったのか…いまだに違和感がある。

園の畑について行った日もあった。
年長クラスのある先生は、大きな声でわかりやすく色んなことを教えてくれる。
となりのクラスの先生は、明るく面白い。怒る時は、本気でビシッと!その子のために怒っていた。
補助のある先生は、ムスコにオチャラカを教えてくれていた。
幼稚園の先生達は、本当に明るく元気で一生懸命なんだな、と感じた。
たぶん、送り迎えだけではこんなに先生をしる機会はなかっただろうな。

こんなことを感じながら、園児になりきるつもりで過ごした。
歌や踊りも一緒になってやったし、避難訓練の滑り台も滑ったし、お弁当もみんなと一緒に食べ、すっかりクラスの子達と仲良くなっていた。

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