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相棒2 第18話「ピルイーター」感想

みんな大好き大河内監察官

冷たい態度の中に熱い血が流れ、愚直なまでに身内に対して正義を遂行する鬼の監察官。
でも隠しきれない優しさと不憫でお茶目な部分もあるという『相棒』屈指の人気キャラ。

大小コンビが喋る話に名作が多いとも言われているが、負けず劣らず大河内が登場する回も名作が多い。(例:「最後の砦」「バーター」「冷血」など

そんな彼の魅力は今作に集約されている。
彼の背負う罪を知れば、『相棒』が一層面白くなる事は間違いない。

【あらすじ】

警視庁監察員・と浮気相手のホステス・里香の死体がホテルで見つかる。
遺体にはカミソリで頸動脈を切った跡があり、警察は事件を心中と発表。
署内は、無理心中か覚悟を決めての心中かで争論に。
そんな中、右京らの監査係で、湊の上司・大河内が特命係の部屋へ。
自分の立場をちらつかせ、事件の独自捜査を頼む。

脚本:輿水泰弘
監督:長谷部安春

【ゲスト】

湊杏子(演:川越美和さん)

今回の犯人
夫の浮気を知り愛人と夫を糾弾するが、愛人の挑発に怒り殺害してしまう。
演者の川越さんは2007年に芸能界を引退。
その後摂食障害になり酒浸りとなりながら2017年に孤独死したらしい。
合掌。

湊哲郎(演:山中聡さん)

今回の被害者兼犯人
浮気相手を隠す為に別の浮気をして今回の悲劇を招いた張本人。
演者の山中聡さんは芹沢役の山中崇史の実弟なので顔がメチャクチャ似ている。
S16で別役再登場している俳優さんでもある。

【感想】

《愛》

湊哲郎と大河内春樹は性別を越えて愛し合っていた。
しかし湊には杏子という妻もあり、彼女も大切に思っていた。
故に男性である大河内との蜜愛を知られる訳にはいかず、中村里香という偽りの浮気相手を作るに至る。
しかし里香も湊に本気になってしまい、杏子により殺害される。
杏子にも里香にも責任を責任を取る為、湊は自死を選ぶ。

現在はLGBTという言葉が浸透して、ようやく同性愛者に対しての偏見は減ってきてはいるが、2003年の放送当時はイロモノであったり差別的な表現をされていた。
そんな社会情勢の中で真正面から茶化す事なく同性の恋愛を描いた本作は社会的な意義すら感じる。

まずは大河内が同性愛者というの衝撃。
しかし個人的には"同性愛者"という枠で簡単に捉える事は出来ない。
大河内と湊の会話シーンが無いので、断片的な情報から推測していこうと思う。

大河内は湊だから愛した。
性別というのはあくまで記号であり、些細な問題でしかない。
個人的大河内は湊が男だから愛した訳ではなく、湊が湊だったから愛したんだと解釈している。

神戸とか桐生とか後に
「大河内の恋愛あるか!?」って期待を持たせる描写や演出もあるが、それはあくまで匂わせやファンサービスに過ぎない。
結局大河内の心の奥底には湊しかおらんし湊しか勝たん

湊は里香と杏子に報いる為に自死を選んだが、死ぬ寸前にも死後も大河内の事を漏らさなかった。
また里香を抱かなかった事や2人からどっちを愛しているか問われた時も答えきれなかった。
それはせきに罪悪感もあるかもしれないが、大河内を裏切る事が出来なかった狂おしいほど純粋な愛があったからに他ならない

じゃあ何故死ぬ際に里香と小指を結ぶような心中に見せかけたのかっていう疑問が湧いてくる。
そこに関しては
•大河内へ危険が及ばないような配慮
•死んだ里香への罪悪感と責任を果たす為

こんな感じで2つ理由として考えられる。

大河内への愛を裏切りたくない思い…
杏子を守りたい思い…
里香へ償いたいという思い…
警察官としての責任感…

全てがゴチャゴチャで何をやっても丸く収まる事は無いが、命を持って決着させる事は出来る。
この破滅的な道でも進んでいく強さを湊は持っていた。

ただし最後の大河内の涙については右京とは少し解釈が違う。
右京は愛した湊の死を哀しんで泣いていたと指摘しているが、それなら死んだ当日に泣くはず。
それじゃあ何の涙だったのかと問われると、悔悛の涙が1番近しいと思う。

杏子が自殺してその理由が遺書で判明した場面で泣いている。
間接的ではあるが間違いなく自分のせいで湊を含む3人が死んでしまったという最悪過ぎる結末。
愛した人は自殺して、自分の身代わりのように里香は殺され、杏子も守れず死なせてしまった。
この重い十字架を背負って大河内春樹は現在まで職務を遂行してると思うと、以降の『相棒』の見方も変わってくる。

《身内に甘い》

[杉下右京]
奥様は勘違いで殺人を犯した。
中村里香さんは心を弄ばれた上に奪われる必要のない命を奪われた。
どちらも全く浮かばれないじゃないですか!

相棒2「ピルイーター」より

そ れ な

大河内達の恋愛については肯定的だが、惨状の始末という点では大河内を肯定する事はできない。
3名の命が失われる原因の一端を担いながら何の処罰も責任も取っていない。
涙を流しただけじゃ割に合わない。

湊と不倫をしたのが始まり。
不倫は当事者間で解決すべき問題だが、こと生死に絡んだ場合はそうはいかない
しっかりと司法の場で詳細を明らかにして遺族や関係各所に誠意を見せるべき。
それがどんなに尊い愛でも隠したい秘密でも明らかにして説明する責任が生じる。
それが警察官なら尚の事。
それなのに特命係以外には何も語らず、幕を引いてしまった。

事件の分岐点は杏子が大河内へ土下座して謝罪してきた時。
ここで大河内が杏子に全てを伝えて謝罪すれば旦那の真意を知る事ができたし、自殺だけは防ぐ事ができた可能性も高い。
なのに大河内はそれを伝える事ができなかった。
杏子の土下座をどんな気持ちで見ていたんだろうか…。
家まで訪ねたのは事前電話で全てを伝える気持ちがあったり、罪悪感で杏子の助けになろうとした可能性はあるが、時既に遅しだったからね…。
とりあえず杏子の前でラムネ食うなマジで

何も分からないクセにドヤ顔で事件には裏があるとか断言して報告しちゃう抜けてる所とかはすっごい好きなんだけど、ここに関してはめっちゃ不誠実。
真相が明らかになっても結果は変わらないって、少なくとも大河内だけは絶対に言っちゃいけない言葉よ。

擁護するとしたら、特命係を頼った事
全てを明らかにされる事を考慮してでも真相を明らかにさせようとしたのは立派。
ただそれは単純に湊の死の真相を知りたかった私事なのか、それとも杏子の為なのかが分からない。

まぁ自ら湊家を訪ねたのも罪悪感もあるが杏子だけは守り切ろうという気持ちの表れだったとかはあると思うし一概に私事だと切り捨てる事はできない…。

ここからは将来的な話だが、この話の影響で大河内は身内と自分には甘い様な印象も持ってしまう。
神戸の偽証罪も説教せずに甘く放置して、右京も監察官聴取されるべきなのにそれを利用して別人の聴取を行えるようにしたり、それなのに桐生は処分する
物語の都合として仕方ない側面もあるが、今回の件で自分にケジメを付けずに他の人へ厳しくしていると微弱とはいえ嫌悪感に近い違和感も覚えてしまう。

大河内には本件についてどう思っているかをしっかり語るシナリオをここから先の物語で用意して欲しい。

《今回のMVP》

伊丹憲一

刑事部長と刑務部長の争いを終わらせた男。
今回は事件の面白さもあるが、組織的な駆け引きも見所の1つ。

無理心中として送検させた理由が総務部長のキャリアに傷をつけたいという不純過ぎる動機なんだけど、見方によっては忖度無く正義を貫くという大義名分を持っているのが面白い。
そして最後に全部ひっくり返り大義名分を失って醜悪さしか残らないというオチにも笑う。

そしてその醜悪さにブチ切れるのが刑務部長ではなく現場の伊丹っていうのが最高。
ここで現場がボイコットする事を明言する事で、権力争いを強制的にシャットダウンして更に勝者も敗者も生み出さない着地点にしてるのもお見事。
それまでに亀山夫妻からも馬鹿にされてるのもいい前振りになっている。

部長にキレた後に我に返って反省しちゃうのも最高に伊丹らしくて好き。
そしてそれを支える三浦パパ。
まだ捜査一課のトリオ化は定着してないが、ここから芹沢がどうやってこの2人と溶け込んでいくかの過程を再度追えるのも楽しみ。

というか阿部刑務部長、村井総務部長、山岸広報課長、坂本人事第一課長って誰だよ!!!

【小ネタ&雑感】

•開始0秒大河内
•回想が「ベラドンナの罠」だけど最近「クイズ王」でも大河内と会っただろ
•島流以降15件の事件を解決って資料持ってきてるがそれ超読みたい
•貴重なラムネ捕食シーン
•大河内は特命係を個人的に評価してくれる優しさ(なおS7
•組対5課全員で覗こうとすなw
•下半身が不真面目w
•聴聞会脅しをかけさせた亀山君アホで好き
•米沢「講釈師見てきたように嘘をつく」
•亀山「特命係の亀山だよ〜」
•知りたがりの課長可愛い
•里香みたいなら美女に抱いて欲しいって言われたら俺なら即抱くね
•スナックのオバちゃんが経費で高い酒飲むの好き…でも今回の捜査って経費精算できるの?
•S19で本当に正義を貫く事になる内村部長
•伊丹が挙げたら信憑性が薄いwww
•右京さんが注いだビールが泡だらけ
•ビール捨てるの勿体無い
•秘密を即時バラしていく特命係w

【次回】

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