見出し画像

相棒21 第19話「再会」感想

素晴らしい作品をありがとう!!!

間違いなくS21最高傑作。

•相棒23年間の歴史を辿るような構成
•今の右京と亀山だからこそ解決できた事件
•事件としても2023年を表していて面白い
•笑いも入れるギャグ要素

これを描くのがメインライターの輿水さんを除いた脚本家の中で、第一期亀山から神戸カイト冠城と全ての歴史に関わってきた徳永さんというのも素敵。
徳永さんが『相棒』というドラマを愛してくれてる事が伝わりまくりました。

【あらすじ】

右京は、角田から頼まれ、奥多摩の山中に足を運ぶ。
大きな物音がしたという通報の確認を押しつけられたのだ。
ところが、山間の集落で聞き込みをしていたところ、二人は何者かの襲撃を受けて拉致されてしまう。
監禁場所を抜け出すことには成功するが、襲撃犯の目的も人数も不明で、スマホなどの通信手段も奪われていた。
背後から追跡者が迫る中、右京と薫は敵を惑わすため二手に別れる。
しかし、そこは地図もコンパスもない山の中。二人は遭難寸前の状態で歩き回ることに。
そんな中、右京は偶然見つけた山小屋で、怪しげな男と遭遇。
男は1か月ほど前、白装束に身を包んだ謎の集団を目撃したというが…!?
いっぽう薫は、集落に住む山部守という青年が、行方不明になっているという情報を耳にする。

孤立無援の山中で追い詰められる特命係
白装束の集団と謎の爆音の関係は!?
偶然の“再会”が驚きの結末をもたらす

【感想】

《ただ生きていたくないだけ》

俺な、長い間よその国行ってたんだ
この国で学んだ"正義"ってやつを教えに行ってた
けど今じゃ、この国の方がおかしくなっちまってる!
みんな一人になって…
自分の事だけ考えて…
そのせいで、お互いに傷つけ合ってる
何とかしたいと思ってる
何度でも言うぞ
お前は一人じゃない
一緒に生きてくれ

相棒21「再会」より

亀山薫13年間の教師の面が垣間見えた素晴らしい台詞だった。

今回は自殺志願者の守が爆弾で周囲を巻き込んで自殺して、万が一生き残っても死刑になろうとするっていう理不尽極まりない内容だった。
実際問題世の中には自殺の手段として人を巻き込むような大量殺人を犯して死刑を狙うような所謂"無敵の人"が存在する。
それに対して自分もだけど
「死ぬなら1人で勝手に死んでくれ」って意見になりがち。

そこに対して今回亀山は
「周りの命と同じ様に、自分の命も大事で大切にしてくれ」
守自身も大切っていう返しをしている。
この"無敵の人"問題はここ数年で発生したので亀山渡航前だからこそ、あの頃と変わらない亀山がそんな人物に対して説得するって言うのが熱いし説得力がある。

守の言う様に日本の将来は決して明るいものではない。
少子高齢化は進むし税金は増えるし外国人は増えるし政治も食糧も戦争も可能性があり、先はどちらかと言うと暗い。
そんな勝ち目の無いゲームを降りたくなる気持ちも分からないでもない。
でも亀山の言う様に皆が協力して人と人とが思いやれば解決する。
それが完全な理想論だとしても、それを本気で言えるのが良い。
そして右京もS12「待ちぼうけ」で
「どんなに目の前が絶望的でも諦めなければ奇跡が起きる事もある」と訴えている。
特命係の二人が奇跡を信じているのは素敵。

そしてそんな守を支えてくれるのは優しい祖父母だけでなく自殺目的だとしても集まったネット友達もいる。
ただぶっちゃけ彼等も守を止めようとしてたのに特命係を拉致監禁してスマホで監視するってのは流石に無い。
まだ自分達で守を止められると思って内々で済まそうとしてたって説はあるけど亀山を差し出したり普通に連絡とって純粋に敵ムーブしてるからなぁ…
好意的な見方をすれば、守と仲間達の関係に亀裂が入りかけててそこに特命係が出てきて守は焦って計画を実行する事を直前で勝手に決めた…って流れだと納得感もあるんだけど爆弾の持ち出しや仲間達が特命係に自白する事も踏まえて相当スピーディーな気がする。
というか大量殺人は防げたとはいえ、警察官である特命係をボコボコにしたんだしアイツらも逮捕しとけよ。

他にもツッコミどころもある。
亀山が杉下右京から正義を教わったという事。
ぶっちゃけ野暮かもしれないけど、S6「黙示録」やS7「最後の砦」で右京の苛烈な正義を目の当たりにして疑問を持ってたじゃん…。
警察官としての正しさか、人間亀山薫の正しさのどちらを選ぶかで苦悩してたじゃん…。
ここはもうそうゆうものなのかもしれないけど、第一期亀山を語る上で外せない名作エピソードなので無かった事にしないで欲しい。

《再会》

㊗️歴代相棒全員登場㊗️

まぁ本人達そのものではないんだけど、全員にひと工夫があって最&高だったね。

まず相棒23年間の歴史をなぞってるのが素敵。
①亀山と一緒に行動
②亀山と別れる
③神戸と出会う
④享と出会う
⑤冠城と出会う
⑥亀山と"再会"して事件解決
この流れは本当に美しい…

行く先々で出会う人達に救われながら事件解決のヒントを得ていくって流れは正直強引な感じもするけど、それが歴代相棒の名前を冠する存在というだけで許しちゃうのが相棒ファンの性分よ…

簡易的に歴代相棒要素をまとめてみました。(カイト君は後述します
[神戸の場合]
•山小屋での出会い(厳密には旅館だけど
•炭酸水を飲んでる
•「お言葉ですが」という台詞
•前の上司と最近会ってない(4年間未登場

[冠城の場合]
•名乗りから始まるのは同じ
•察しの良さと皮肉っぽい言い回しが冠城っぽい
•前の上司と長く一緒にいた
•変わらず心のままにやっていると思う(最終回の台詞

そして三人に助けられた所で現れる本命の亀山薫よ!!

亀山と出会った事、そして神戸カイト冠城とも出会った事、そして亀山と再会した事…。
全部運命と伝えた場面は、リアルで水谷さんが寺脇さん復帰を交渉する際に

これが僕らの運命なんだよ

by水谷豊

と伝えた話も連想される。
通常回最後のラストで現実の関係性やエピソードとリンクさせるのは本当に心憎いしオシャレ。

最後は夢か現実か煙に撒いてたのでちょっと脚本や演出に照れがあったんだろうけど、それも込みで良かった。
ただ最後に二人が運命の話をして良い雰囲気近付きながら軽いボディタッチをして、その後夢って流れだから何か凄く濃厚なBLを見たような気分にもさせられる。
あの後二人は激しいキスをしてベッドに…とか描写されても違和感が無い…。
そう考えると夢オチとはいえやり過ぎ感もあったのかもしれないけど、ノーブレーキで走り切るのが『相棒』なので致し方無し。

《今回のMVP》

バス停にいた若者、享くん

白状します。
10年ほどカイト君を推しているので彼をMVPにしました。

享君は父親と同じ業界に来て対立して、認められたくて空回った結果一緒に起業した先輩だけでなく対立していた筈の父親にも迷惑をかけてしまい、今回は足を挫き止まっていた。

まさに峯秋さんと対立して、右京さんに拾われるも嫉妬と焦りでダークナイト事件を犯してしまった甲斐享を暗示している。
そして運命に導かれるように彼と出会ったのも同じバスという事。
享が足を挫いていたのはカイト君が事件で心が傷付いていた事も示している。

地味に好きな要素としては安易に名前を"甲斐"にするんじゃなくて、下の名前にしてる所。
甲斐だと父親の峯秋さんとも被るし、作中で甲斐と呼ばれる事は殆どなかった。
カイトはあだ名だしね。

享は登山で御堂に来ていたって話だけど、迷惑をかけた先輩と父親と、そして自分の運命等々も含めて何に祈ってたんだろうか…

でもふざけて今回享をMVPに選んだ訳ではなく

この杉下右京の表情よ…

カイト君を思い返してるこの表情を引き出せただけでMVP。

1枚目は若者の名前が享だと知って面食らった表情。
2枚目は享がバスに乗って去っていったのを見送った後の表情。

自分が育て歪んだ道を歩ませてしまった愛弟子かつ相棒。
名前を聞くだけで呆然とさせられ、その後に物悲しいような切ないような表情…。
亀山薫が帰還しても、この傷と後悔は消えない。

【小ネタ&雑感】

•「最後の灯り」を思い出すスタート
•松ぼっくりは水に濡れると閉じる
•右京さんは背後からの一撃に弱い
•亀山君の丈夫な身体を褒め…てるか?
•スマホが監視カメラになってるのは時代
•素人が結んだとはいえ縄抜け技術凄い
•OPへの入り方が過去イチで最高
•ちょっとした遭難どころかガチ遭難よ
•亀山のサルウィン生活知識が活きるの好き
•下山で沢を下るのはNG
•犯人の一味かもしれないのに遭難者の可能性を考えて沢下りする亀山の優しさ
•デジタルデトックスは憧れるけどしたくはない
•携帯壊れがちなのもカイト君リスペクト要素(?)
•亀山と伊丹のやり取りに出雲ニコニコ
•伊丹「どこの亀山だよ!?」→亀山「特命係の亀山だよ!!」
•伊丹は独身貴族だから金がある
•半日くらいなら行方不明扱いせんでもええやろ
•おじいちゃんとおばあちゃん良い人だな
•敵の本拠地かもしれない御堂に丸腰で突入する右京さんはヤバい
•両親は離婚して祖父母に育てられるってのはツラいない…
•冠城なんて名字そう簡単にいるか!!
•前の上司とは長かった
•心の赴くままにやっている…
•リストカットか…
•ここで右京さんと"再会"
•敵の本拠地が分かるように動いてた亀山の手柄
•最初に特命係を襲うなよ!!
•命を無駄にするような事はしてはいけないって主張はS20「ある晴れた日の殺人」を思い起こされる
•亀山との再会は運命
•この後二人は激しい○○した
•過去の記憶も捉え所のないもの

【次回】


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?