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相棒3 第5話「女優(後編)」感想

前編はこちら

まぁ前後編にしなくても1話で充分。
特命係再結成とか「双頭の悪魔」編の後始末とか諸々あるから致し方ないが、前回終盤で犯人達は追い詰められてるので、心理戦の余地が無い。
消化戦の意味合いが強い後編でした。

【あらすじ】

右京亀山は殺された脚本家の古谷の家を捜索。
古谷の内縁の妻で女優の夕月の髪の毛を亀山がトイレで発見する。
2階のトイレに入ったことがないという夕月の証言が崩れて亀山は意欲を燃やすが、実は髪の毛は右京が仕組んだ細工と知ってふてくされる。
そんな亀山に、右京は2人の戸籍謄本を手に入れてほしいと頼む。

脚本:輿水泰弘
監督:和泉聖治

【ゲスト】

小峰夕月(演:羽田美智子さん)
松永慎二郎(演:岡田浩暉さん)
古谷彦六(演: 深水三章さん)

【感想】

《9年半》

夕月は古谷の実娘で、古谷はそれを知りながら肉体関係も含め夕月と内縁関係を結ぶような鬼畜だった。
それを知った松永が夕月を解放しようと殺害計画を企てた。

今作は輿水脚本の真骨頂である歪な親子関係でも近親相姦という特に激重なテーマをぶち込んできた。
古谷は別れた妻と夕月を同一視して仮初の夫婦関係に喜びを見出していた。
内縁関係になったのが10年前で20代半ばと考えると、結構な歳の差。
女盛りとはいえそんな未来ある娘に劣情を抱くのはマジで鬼畜の所業。
そりゃ愛する人を苦しめられ続けた松永も殺意を抱くわ。

でも夕月も同棲して半年で古谷が実父と知ってたんだから、家を出ろよ!!
絶望して気力を失い
「私は妻の役を演じさせられ続けた」みないな事を言ってるが9年半もいるのは夕月もヤバいだろ!
DVや行く当てが無いとかなら分かるが外出など外部との交流はとれたし、女優として大成してたので生活能力もあった。
それなのにずっと悲劇のヒロイン気取りで状況を打破しようとしないのに腹が立つ。
松永も松永で気持ちは分かるが、夕月を愛しなら駆け落ちするなり自分だけが殺人犯になるとかもっと手はあっただろ!

ひとりぼっちには飽き飽きなの
繋がっていたいの
純真無垢な想いのまま Loud out

『ウタカタララバイ』より

とはいえ、好意的に見れば彼女はそれでも父との繋がりを断ち切れなかったという解釈は出来る。
母が死に祖母が死に、唯一の肉親は父親だけ。
穢らわしく離れたい気持ちはあっても、娘として愛されたい…家族と共にいたいって本能がそれを許してくれない。
だから古谷を殺害後、松永と一刻も早く結婚して繋がりを得たかったんだと思う。
松永も彼女を含めた2人の手で殺す事で区切りを付けてあげたかったとも考えられる。

また、前回記載した"夕月は捕まりたがってる"という考察はあながち外れてなかったと思う。
松永とは共にいたいが父を殺した罪の意識はあるし、"妻"を演じ終わったのに次は"未亡人"を演じる事に疲れ切っていた。
更に特命係やマスコミからも疑惑を向けられ心身共に限界なのは想像に難くない。
松永と一緒にいる時だけは飾らない姿でいられるが、刻一刻と捕まるまでのタイムリミットは近づいていた。
捕まって楽になりたいが、松永とは離れたくないという矛盾した思いが強く伝わってくる。
この矛盾が人間の面白さよ

最終的に2人は特命係を立会人として婚姻届を出し夫婦揃って逮捕された。
亀山はそんな2人を見て、紙切れ1枚だとしても美和子と繋がろうとしていなかった事を自覚して悔いるようになる…ってそんな風に考えなくて良いよ!!
じゃあ半年間亀山を騙してたのは何なのか、亀山も来る可能性高いのにお見舞いに行ってたのは何なのか、写真見せられて逆ギレするのは何なのか、別れた後に元カレも行く店に頻繁に訪問するのは何故なのか、元カレから仕事のネタを貰おうとするのは何なのか!!
S3多分美和子にずっと厳しくなりそうで嫌になる…。

事件として残念なのは、何故松永と夕月が惹かれあったのかが分からない事
夕月はどのようにして松永に自身の境遇を打ち明けたのか、何故打ち明けるに至ったのか…
松永は何故仕事を越えて夕月を愛したのか…
単純な犯人との攻防戦だけなら正直前半で圧勝ペースで追い詰めてたんだし、後半が結構間延びしていた。

一回警察から帰って、その後スペイン行こうとして速攻捕まってるんだし捜査一課に恥をかかせる以上の意味合いが無い
せっかく前後編なんだし、2人の関係性をしっかり描いて欲しかった。

《今回のMVP》

久々のMVP不在
夕月と松永の自滅に近く、古谷メモが出てきた所で送検可能だったはず。
そうなると松永にはアリバイが無いのでサクッと逮捕されていた可能性が高い。
実際2人もスグに捕まると思ってスペインへ渡航しようとしてたしね。
そうなるとMVPなのは彼等を追い詰めたマスコミって話になるんだけど、隠し撮りや付き纏いをするような基本ゴミ以下の仕事を肯定する気は無いので不在って事になった。

縦軸の部分のMVPならば杉下右京を見事に復帰させた小野田公顕
加賀谷の後任にすると木佐貫に提案して、代わりに右京を復帰させるという剛腕っぷりを発揮。
小野田が右京にした罪は決して償い切れるものじゃ無いが、それでもここまで優しくされると好きになっちゃうよ…。

しかし肝心の杉下右京は亀山君を猿回しのサルのように扱うわ証拠捏造をやらかすわと、免職当然なムーブをぶちかましていく。
特に後者は夕月達に種明かしをせず、米沢の胸の内に秘めて終わりそうなので裁判になったらどうなるのか気になる。
因みに亀山君を利用したのは流石のたまきさんもドン引きした模様
というかわざわざ髪を本当に見つけさせなくても、お得意のブラフと嘘程度で良かった説。

[海音寺菊生]
あっ!?
まぁ…いいか

相棒3「女優」より

何この意味深な退場!?
これで海音寺の登場は終わった訳だけど、結局海音寺がどんな人物なのか最後まで分からなかった。
麹町東署に特命係を作ろうとした理由も、世の為人の為だと嘯いてごまかしてたし、出番も少なく出たと思ったらコメディ的な役回りなので内面の深掘りが全くできなかった。
というか重要な事を伝え忘れたって雰囲気で退場したのに、それが全く活かされないってドラマとしてダメでしょ。
望みは激薄だけど再登場して欲しいなぁ。

[芹沢慶二]
馬鹿野郎だな、アイツ…

相棒13「ダークナイト」より

論外だったのは芹沢。
松永に挑発され殴り飛ばし周囲から止められても向かっていき更に殴りかかろうという恐ろしいまでの激情家
見えない所でやれとか、顔はやめとけみたいな暗黙の了解とか全部無視。
亀山•海音寺•部長、あと伊丹と三浦にも多分どつかれてるからバランスは取れてるんだけど、結構やり過ぎ。

カイト君も被疑者を殴った事はあったが関係値のあった根津先輩、父親を馬鹿にしたS12「ビリーバー」黒幕だったり基本的には胸倉を掴むだけで抑えている。
それを考えると衝動的に被疑者をブン殴る芹沢さんマジハンパねぇ
そりゃここから11年出世しない訳だ…。

【小ネタ&雑感】

夕月IV場面の必要性を感じない

•右京にお手洗いを貸してはいけない
•亀山を煽る右京さん
•何故右京は壁紙の糊を指でクルクルしてるんだ
•トリオで仲良くランチ
•伊丹「所轄の亀山ァ」
•マスゴミいる前で警察手帳出すな
•美和子よ、元カレも行く店に通って鹿手袋に悪いとか思わないのか…
伊丹「こんな風にですカーカーカー!!」
•米沢さん初めての"花の里"
•米沢さんは酒で失敗した
•お茶かけられてお茶汲み呼ばわりの芹沢
•亀山は飄々と生きてる右京が羨ましい(ただ右京は自分以上に飄々と生きる冠城を羨ましく思っている
•亀山と海音寺と部長にどつかれる芹沢
•トリオザ便所掃除
•ドラマの殺人トリックは現実に通用しない

【次回】

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