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『DOGMAN』 第10話 捨て猫


穴蔵で一眠りした後、午後からはプラネタリウムのバイトなので、早速首輪につけてある紐を食いちぎり、犬小屋に隠しておいたサングラスとスーツの入ったカバンを加え、柵を飛び越えた。

さぁ、プラネタリウムに向かおう。
「ミー。ミー。」
む?
プラネタリウムに行く途中の公園のベンチの前に、ダンボールが置かれている。そこから何やらかすかなかすれた鳴き声が聞こえる。

リャンは気になり、プラネタリウムに直行しなければ遅刻してしまうのだが、何か事件性を感じ、ダンボールに近づいた。
「ミー・・・。」
確かに聞こえる。
リャンは、ダンボールを開けて中を見てみた。
子猫だ!
ん?何やら子猫と一緒に手紙のようなものが入っている。
『この子を拾ってくれた方、チェリーをよろしくお願いします。』
捨て猫か?この子はチェリーというのか。
なんとひどいことをするのだろう。
猫の命をなんだと思っているんだろう。

リャンは憤りを感じたが、考えている暇もなくバイトの時間に遅れてしまうので、しのごの言わず子猫をバックに入れてプラネタリウムへ走っていった。

しまった!午前中のプラネタリウムで満月を見ないと、人間としてバイトのおっちゃんに会いに行くことができない!

「こねーなー・・・。ばっくれたか?」
やべぇ。おっちゃんやっぱりプラネタリウムの入り口で待ってる。
どうしよう。
とりあえず、ダメ元でこのまま会いに行ってみようか。
「お!ワン公。どうした。よしよし。そのバックはなんだ?」
「ミー。ミー。」
「お?カバンの隙間から子猫が顔を出しとる。しかもこりゃ生まれたばかりじゃねぇか!なんでお前がこんな子猫連れて歩いとるんだ?・・・お腹空いてるみたいだ。ミルクでもあげねぇと・・・。」
おっちゃんが子猫をバックの中からすくい上げると、事務所の中へと入っていった。
今のうちに上映中のプラネタリウムの満月を見て変身しないと・・・!
「グオォォォッ!」
よし、とりあえず変身完了だ。
スーツに着替えてグラサンかけて、と。

「すいまセーン!遅刻しましたぁ!」
事務所の中の、チェリーにミルクをあげているおっちゃんに挨拶した。
「おぉ、今犬が子猫連れてやってきてなぁ。生まれたばっかりで、ミルクでもあげねぇとと思って・・・。あれ!犬がおらんくなっとる!」
これはなんと言い訳しよう・・・。
「その犬、俺が飼ってる犬で、ここのバイトに来る途中ではぐれちゃって・・・。バイト先知ってるから、荷物だけ届けにきたんじゃないかと思うんすけど・・・。子猫は知らないんで、ひょっとするとうちの犬がどこかから拾ってきたかもわかんないすね。ご迷惑おかけします。多分、あいつのことだから、一人で家に帰ってるんじゃないかと。」
「じゃあ、帰るときしっかりこの子猫を連れて帰ってくれな。わしはこの子猫の面倒みといてやるから、お客さんの見送りを頼むよ。」

相変わらずサングラスをかけたオオカミ男のマスコットは人気であり、昨日きたお客さんで、わざわざ俺を見に来るためだけにきてくれているお客さんもいた。

「いやー、なかなかいい看板マスコットになっとるよ!はっはっは。また頼むよぉ!」
おっちゃんからチェリーを引き渡されると、挨拶をしてバイト先を後にした。

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