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『DOGMAN』 第3話 ゲンキンな猫


落ちぶれたもんだ。
人間の子供に、オオカミ男が飼われるなんて。

人間社会に憧れて、わざわざ山郷離れてやってきて、犬と間違われてペットにされるとは。
情けない。

「はい、晩御飯よー。」
むっ!ドッグフードだ。
なるほど食ってみるとなかなか美味い。カリカリとした食感。濃厚な香り。

くそっ!俺は犬じゃねぇ!

「リャン、お手。」

なんだ?右手を出せばいいのか?
「あら、よく出来たわねー!はい、チーズあげる。」

なんだ?チーズ?
なんだ?!この食い物は!めちゃくちゃ美味い!

・・・うむー。犬のペット生活も悪くないかも。

日が明けた。
俺は相変わらず、犬小屋に紐をくくりつけられて、この狭い部屋で朝を迎えた。

・・・なかなか清々しいじゃないか。

俺の飼い主も結構な金持ちらしく、まぁちゃんどもが住んでいる家もなかなか立派だ。
俺の家の周りも、綺麗な新緑の芝生が生えていて、眺めがいい。

悪くないな。

いや、これを受け入れていいものだろうか。
これを受け入れてしまうと、オオカミ男としてのプライドが・・・。

色々考えていると、庭に野良猫がやってきた。

貴様!俺の縄張りに何の用だ!
「ワン!ワン!ワン!」

「リャン!ダメよ。チャミーに吠えちゃ。」

むむっ!まぁちゃん!
この縄張りに入ってきたロクでもないネコの味方になるつもりか?!
チャミー?なんだそれは。

「この子はチャミー。毎朝ウチに来てあいさつに来てくれるのよ。仲良くしてあげて。」

むむー。まぁちゃんがいうなら仕方ない。

「はい、お魚よ。」

ん?よくよくみるとマグロの刺身をあげている!
おい!俺の飯より格上じゃないか!!
くそー!チャミーめ!なんて憎たらしいやつだ!
「ワン!ワン!ワン!」

「めっ!ダメよ。これはチャミーのご飯なんだから。今リャンのご飯持ってきてあげるから待っててね。」

出てきたのはドッグフードである。
くそー。俺はオオカミ界のトップだぞ・・・。こんな朝飯よこしやがってー・・・。
・・・美味いな。

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