脳に何かがあったとき 2024年5月号

相馬杜宇(あいばもりたか) ブックレビュー「脳になにかがあったとき 2024年5月号」

5月号は、失語症を抱える中井美内子さん、鈴木美穂さんのお二人の当事者が登場します。

「中井さんが出るなら」という気持ちが嬉しかった、救ったのは音楽、そしてピアノ 中井美内子さん(声楽家)

・中井さんが演出補助をしたときに、演出家のダメ出し(今はダメ出しと言いませんね。正しくは指示)を出演者に伝える役割がリハビリになったというエピソードが興味深かったです。出演者に伝える時は言葉を選びますし、覚えきれない時は自ら考えて工夫します。音楽の世界に完成が無いように、見方次第で上手くなるヒントはある。そんな言葉が浮かびました。
・演出家の「中井さんが出てくれるなら」という言葉、嬉しかったと思います。信頼から生まれた言葉ですね。また、病気を通じてリハビリや発声を伝えていく活動をしていきたいという話は心から音楽を楽しんでいると思いました。
・4月号にも感じたことですが、山口さん→スポーツ、中井さん→音楽(ピアノ)という繋がりを感じ、コーラスラインの「What I Did For Love」のBGMが流れているようでした。

復職条件はパソコン入力60文字・・・失語症ってなんなのでしょう? 鈴木美穂さん(会社員)

・病院で「一生車椅子で生活して下さい」という話、断定的に話すのは医師ですよね。決めつけるはやめて欲しいです。決めるのは自分自身であり、目標達成のためにコーチングしてくれる存在が必要だと感じます。そしてコーチングは別の方が担うべきで、多忙の医師に責任を押しつけなくて良いとも感じます。
・パソコン入力60文字は失語症にとっては難しいですよね。条件を示されたことは、会社は失語症について理解が無いのではと感じました。
・「待って欲しい」という鈴木さんの言葉とても理解できます。それは失語症に限らず認知症も同じかもしれません。認知症当事者が言葉に詰まっていると家族が先回りして全て話してしまうという丹野智文さんの本を思い出しました(丹野智文著「認知症の私から見える世界」より)。失語症は話せない訳ではなく、きちんと頭の中で考えています。急かすのではなく、支援者や家族は気長に待って欲しいと強く思いました。

書評後期
4月から障がい者差別解消法が施行され、会社にも合理的配慮が義務化されました。
私も半側空間無視を抱えており、会社に合理的配慮をお願いたことがあったのですが、小説家の市川沙央さんは合理的配慮より合理的調整と呼ぶべきだと発言しており、なるほどと思いました。お読み頂けると幸いです。
https://x.gd/j4xZa

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?