【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~ 第9話(最終回)
第9話(最終回)
「愛馬センパイ、ちょっといいですかぁ……?」
昼休み残り五分。パーテーションに囲まれた誰もいない会議室で、靴を脱ぎくつろいだ格好で本を読んでいると、後輩のリナが入ってきた。
「あー、お邪魔してごめんなさい、読書中でしたか」
「いや、別にいいよ。どうしたの」
本を閉じて脇へ置いた。今度は一体、どんなミスをやらかしたっていうんでしょ。
「なに読んでるんですかぁ?」
珍しくリナがそう言って、本の装丁に目を走らせる。
「『ディアトロフ峠の真相』