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【短編小説】望月のころ(全11話)+あとがき

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透、武、さくら、環は高校の同級生。卒業してから10年、武とさくらが結婚し子供が生まれてからも四人組は親しくしていたが……西行法師の詩から始まる、一途で切ない恋愛小説。
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#失恋

【短編小説】望月のころ 第8話

   第8話  短いメッセージがさくらから届いたのは、夜半のことだった。  返信しようと、何度も文字を入力しかけては消す。どんな言葉も、相応しいとは思えない。  もう一度彼女のメッセージを読み返した。 『こんなに反省している武を見るのは初めてで、驚いています。まだ複雑な気持ちだけど、操のためにも家族としてやり直さないとね。如月くんには迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ないです』  友としての親しみが込められている。けれどもそれはすなわち、僕と彼女との間に横たわるはっき

【短編小説】望月のころ 第10話

   第10話  そこで目が覚めた。  詰めていた息を吐いた。横隔膜が震える。  片方の手で顔を半分覆った。暗闇の中に、愛しい人の姿が浮かんでくる。 「さくら」  名を呼んだ。とたんに、涙があふれる。  すべて終わったはずだった。  それなのに、炎はまだここにある。  激しく燃え盛るのではなく、静かに、けれどもしたたかに、僕の心を震わせている。  行き先を失った僕の心を灯している。  存在したがっている。  生きたがっている。  ああ、と声が漏れた。温か