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【短編小説】コトノハのこと(全15話)+あとがき

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「あなたが一日でしゃべった回数、たったの五回」呆れる妻に指摘されてから、本当に一日五回しか話せなくなった!? 昭和気質の無口なおじいさんは、孫を救うことができるのか!?
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#孤独

【小説】コトノハのこと 第10話

   第10話  音を立てないようにそっと玄関を開け、細い隙間から滑り込んだ。リビングからテレビの音がする。  足音がしないように廊下を進み、自室へ逃げ込む。息をひそめてじっとしていると、窓の外が薄暗くなってきた。灯りをつけるわけにいかず、暗く静かな部屋で、なにかのモーター音に耳を澄ませる。  ふと古い記憶が脳裏に浮かんだ。子供の頃、祖父の形見の懐中時計を勝手に持ち出して落とし、表面のガラスに傷をつけてしまった。  叱られるのが怖くて、押し入れに隠れた。寡黙な父がどのよ