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【短編小説】コトノハのこと(全15話)+あとがき

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「あなたが一日でしゃべった回数、たったの五回」呆れる妻に指摘されてから、本当に一日五回しか話せなくなった!? 昭和気質の無口なおじいさんは、孫を救うことができるのか!?
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#少年

【小説】コトノハのこと 第11話

   第11話  その夜、夢を見た。  冬の寒い夜だった。冷たい廊下に正座する母の隣で、裸足の足をこすり合わせる。  玄関が開き、父の姿が現れた。黙ったまま差し出される外套とカバンを母が受け取る。 「お父さん、見て! 僕、学校の将棋大会で優勝したんだよ」  小さな賞状を差し出した。教科書の間に挟み、折れないように大切に持って帰ってきたものだ。  しかし父は一瞥もせず私の前を横切り、廊下の奥に向かって大股に歩いて行った。母が追いかける後ろから私もついていく。 「僕がク