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第13話 信号待ちで足を止めた。息を整えるつもりが、強く弾んで止まらなくなった。横隔膜が震えて嗚咽のような音を漏らし、心臓はますます慌てて早鐘を打つ。 膝に手を置き、肩を上下させていると、向こうから来た人たちがちらりと視線を投げかけながら通り過ぎていった。 信号が青になる。渡り終えた先にある陸橋を、重い脚を蹴り上げるようにして駆けあがった。段に足を引っかけて転びかけたところを、かろうじて手すりにしがみつく。 上まで登ると、対岸のマンションが現れた。前の通
第14話 マンションに隣接した公園はさほど広くなく、入り口はひとつしか無かった。遊具はいくつかあるが、滑り台とブランコと鉄棒、それから砂場くらいしかない。小さな子供がずっと隠れていられるような場所があるようには思えなかった。 滑り台の裏に回り込んでみたが、そこに孫の姿はない。ベンチや水飲み場の奥には何本かの木が植わっており、その先へ続く小径を水色の金網がふさいでいた。取り壊しが決まっている公営団地が見える。 『あの団地、ハナが小学生になる前には取り壊される予定
第15話 その後、孫はしばらくの間夜泣きが続いたらしい。 しかし半月くらいでそれも治まったと聞き、胸をなでおろした。今朝方、妻のスマホに届いた写真では、入園式と書かれた看板の前で、しっかりとした目つきをしていた。 「あら、いい顔で写ってる」 妻の言葉に黙って頷きかけた私は、「そうだな」とつけ加えた。「ひろみの小さい頃によく似てる」 私の喉は再び言葉を取り戻していた。一日に五回という制限もなくなり、まずは妻に謝罪と、事情を説明することができた。 妻は疑
このたびは、短編小説『コトノハのこと』をお読みいただき、本当にありがとうございます<m(_ _)m> 第一話の投稿から最終回まで、1箇月以上もかかってしまいました。途中も時間が空いてしまい、これではせっかくお読み下さっている方が、どこまで話が進んだのかわからなくなってしまったのではないかと💦 それでも最後まで読んで下さった方に、感謝と熱い投げキッスをお送りします(@^3^)/~~~💖 『コトノハのこと』は、2019年に書いた作品をリライトしたものです。 コロナ