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ホロぐら考察【絶対に許さない!】

サムネイル引用【アニメ】絶対に許さない!

今回考察するのはホロぐらの頓痴気回と有名な【絶対に許さない!】です。文章だけでは伝わらない部分もあるかと思いますので、字幕つきで動画を再生しつつお読み頂けるとより理解が深まるかと思います。

では。

冒頭は時計くんと呼ばれる喋る時計に向かってマリンが「でも時計くんのココ…すっごいチクタク言ってんぞ~?」と言います。その時に時計くんの針を指で回すのですが、この時に逆時計回りで動かしています。これは時間の逆行、巻き戻しであり、時間の流れという不可逆を無視した人智を越えた力を表しています。つまり、動画の冒頭から今回は常識を超越した不思議な現象が起こりますという前置きがあったのです。

続いてマリンが「嘘ついてる証拠だよなぁ!!??」と脅迫します。この台詞から、時計くんがすっごいチクタク言う、つまり針が速く動くということが人間が緊張した時に心拍数が上がることと同義だとわかります。では、嘘とは何か?そう思っているとすぐにあくあが横から顔を出し、「あたしたちのお菓子勝手に食べたの知ってんだからね!!!」と怒りを露にします。つまり、二人(?)のお菓子を無断で食べたからマリンとあくあから責められていて、尚且つマリンからは針の速さで嘘を見抜かれているというストーリーだとわかります。この間僅か七秒。一切の無駄を切り落とした台詞により、かなりスマートな始まりです。少年漫画だと読者にわかりやすい様に、嘘をついているか脈を取らせてもらう、汗を舐めて味を確認する等の解説シーンがあり、嘘が確定してから物語を進めるのが常套手段となっていますが、流石はホロぐら。嘘を見抜いた理由を説明しつつ二人が断定的な口調で犯人だと責めているので、時計くんが犯人だと視聴者の心にスッと入ってきます。個人的にかなり上手いやり取りだと思います。

次のシーンでは時計くんがマリンの手の中から逃げ出して「捕まえられるもんなら捕まえてみろ!!!」と余裕を見せます。全然関係ありませんが、初期の『ウソップ』もこんなことを言っていた気がします。

続いてあくあが「下手に出りゃ調子に乗りやがって!!!」と言います。下手とは?と検索してみると、へりくだった態度を取るとあります。そうです。ここはギャグです。明らかに二人で拷問していたのに、逃げられた瞬間下手に出ていたと言うのですから。普通のギャグ漫画ならここで一瞬沈黙が訪れたり、ギャグですよという記号を用いるのですが、そこにマリンの「二度と口きけなくしてやるからな!!!」を被せて言うことによって隠しています。こういう何の解説も無しにさらっとやるギャグはわかる人にしかわからないので、普通は避けがちです。そして、このシーンでは逃げる時計くんの針は時計回りで進んでおり、巻き戻されていた時間が急速に進んでいることになります。背景に注目すると、事務所から飛び出して廊下に出てごみ箱の前を通過、それをループしています。背景が歪んで徐々にぼんやりとしていきます。この時、ごみ箱がエイリアンらしき姿に変わっていて、これにより不思議な世界を強調しています。

追い掛けていた二人はカラフルな空間に落下します。この時にあくあが「なんであたしも!??」と言いますが、ここでギャグ以外の可能性を考えたいと思います。時計くんを苛めていたのに、まるで自分に非はないといった態度。先程の「下手に出りゃ調子に乗りやがって!!!」という台詞を含め、これは子供の頃に誰もが経験する、無意識な加害者の様に見えます。大人でもパワハラをパワハラと気付かない人もいますが、無意識にやっているあくあを見せて、視聴者の心に引っ掛かりを作ったのではないでしょうか。そして、それをやるなら適任はあくあしかいないと。

さて、落下したマリンは頭から地面につきました。この時のポーズがシャチホコに酷似していることにお気付きでしょうか?シャチホコは火除けの守り神としてお城に飾られています。ここ、実は伏線になっていますので回収の際に改めて説明することにします。そして、シャチホコの鯱しゃちとは空想の生き物であり、その隣にある不思議の国の看板に説得力を持たせています。これが単に不思議の国の看板だけでは説明不足は否めないでしょう。

次のシーンでみこちとおかゆが登場し、おかゆが「ふぉふの名前はュウヒャネェフォ」と言います。ふにゃふにゃした話し方で聞き取れませんが、字幕には「僕の名前はチェシャ猫」と書かれています。『チェシャ猫』とは『不思議の国のアリス』に登場する猫で、人の言葉を話し常にニヤニヤ笑っています。また、姿を出したり消したり自由自在であり、このシーンで宙に浮いて回転していることの理由付けとなります。「ん?なに?」とマリンに聞き返されたので「ュオンヒャネェイポォ」と繰り返します。発音が最初のュウヒャネェフォとほぼ変わらないのでこれも『チェシャ猫』と言っているのだとわかります。問題は三回目、明らかに発音が変わります。字幕には「クォントンジョノイクォ」とあります。これは「こんとんじょのいこ」です。『トリビアの泉』にて紹介されたもので、えなりかずきさんが「簡単じゃないか」と言っている様に聞こえるというものです。

次に、ハッキリと喋らないおかゆに腹を立てるマリン。みこちが「トゥースフェアリーに歯を根こそぎ持ってかれちまったんだよ」と説明します。おかゆがマリンに歯を吐いてぶつけ、「喋れないんです~~」と小馬鹿にしながら言います。はい。喋れていますね。

切れたマリンの肩に小さなみこちが現れます。その体は歯そのもの。動画内で一切説明はありませんが、恐らくこれがトゥースフェアリーだと思われます。何故断言出来ないかと言うと、直前におかゆから歯を根こそぎ奪った犯人だと説明があったにも関わらず、この次のシーンでじゃれあうからです。歯を全部持っていった鬼畜と仲良くする奴がいるか!?となるのですが、マリンに抜けた歯を吐いているので、どうも映像と台詞が一致しません。台詞と映像が一致しない作品というと、真っ先に宮崎駿監督が浮かびました。もしホロぐらも同じことをやろうとしているのなら、台詞ではなく映像に着目すべき、と言うことでここからは映像を真実として見ていきます。

さて、次のシーンでは、みこちが背中が痒くなって掻こうとします。「このウニウニ、掻きたくてたまらん!」と言うのですが、ウニウニって何だ?そう思いませんでしたか?これ、調べてもよくわからなかったので、ニュアンスで捉えさせて頂きます。背中の痒みがウニウニと芋虫が這っている様な感覚、だと私は解釈しました。不思議の国なので言葉も不思議なのです。

さ、次いきましょう。おかゆの「こりゃまた歯痒いですなぁ...」という駄洒落が入ります。この時おかゆの口の中が見えますが、綺麗に歯が並んでいますね。やはり映像は嘘をつきません。トゥースフェアリーに歯を根こそぎ持っていかれたとは何だったのか。

駄洒落の直後、トゥースフェアリーとおかゆはマリンに踏みつけられます。みこちの「よく磨いてくれよな!!」を素直に受け取れば、これは歯磨きに近い行為と解釈出来ますが、映像的には負け惜しみに聞こえます。ではこのシーン、何がしたいのかと言いますと、実はハイドラマの作り方なんですよ。ハイドラマとは何か?ドラマにはロードラマとハイドラマがあり、ロードラマは誰でもわかるものです。小学生でも中学生でも何をやっているかわかるもの、見る敷居が低い作品です。ハイドラマはその逆にレベルが高くてわかる人にはわかるけど、わからない人には何やってるかさっぱりわからん作品です。つまり、踏みつけられたことに対し、怒ったり苦しんだりするのではなく、よく歯磨きしてくれと頼むこの認識のズレをギャグと理解出来るかどうかです。「踏みつけられてんのによく磨いてって何言ってるの?」となるか、「その踏みつけは磨いてんじゃねーよw」となるか反応が分かれたかと思います。これがハイドラマです。ホロぐらの頓痴気回って適当にやってる様に見えて、実は高度なテクニックが隠れているのです。

次にミオ車に乗ったあくあとルーナがマリンを発見します。おかゆはマリンに踏みつけられながら、「もっと頂戴略してもっちょ~~」と言います。何故かここだけ丁寧にギャグを説明していますね。「もっちょ~~」を「もっ頂~~」にしていれば「もっと頂戴略して」の部分は略しても伝わった可能性は十分にあります。こうした理由は恐らく元ネタが無いオリジナルのギャグだからです。実際に検索してみましたがヒットしませんでした。

次に、「恥ずかしい猫だね!!!」と罵られて「ワンワン」と犬になります。説明は不要かと思いますが、猫と言われて犬で返すこういった種族のズレもギャグでやっています。

次のシーンではマリンがいきなり背後の時計くんに気付いて振り返ります。第六感的なものが働いたのかも知れませんが、理由は不明なままです。たまたま気付いたのでしょう。不思議の国ですから。

「ヘイタクシー!!!」のくだりがあり、「もっとスピード出ないんですか!???」と言うあくあに対し、「出してもいいけど...」と乗り気でないおかゆ。この時点で何か嫌な予感がしますが、ルーナが「倍プッシュなのら~」と謎のスイッチを押します。倍プッシュとはギャンブルにおいて掛け金を倍にする言葉ですが、プッシュを押すの意味で用い、スイッチを倍押すといった意味で使っています。

ここからミオ車が三段変形をして、あくあの「なに出してんだよ!!!」が三連続します。最初は車の下から人間状態の生足が、二回目は上半身と紅茶(?)を、三回目は耳からカラフルな布を出します。「なに出してんだよ!!!」はそれに対して突っ込みでもありますが、スピードを出してと頼んだのに出してくれないことへの苛立ちも含まれています。

続いて森の珍走団が登場します。本人達は「移動動物園なめんなよ」と言っているので、移動動物園が正しいのかも。ラミィが「酒は飲んでも呑まれるな」と書かれた一升瓶を手に、「宝鐘の頭蓋でキメるポン酒は格別なんよなぁ」と言います。頭蓋とは頭の骨であり、続くポルカの「園長は杯をご所望である」の発言から、マリンの頭蓋骨を杯にして酒を飲みたいという意味だとわかります。すいちゃんでもこんなこと言わんだろってサイコパス発言ですね。では、頭蓋骨で酒を飲むにはどうすればいいか、『ハンターハンター』で脳に針を刺して『念』について話させる描写がありますよね。ああいう感じで頭蓋骨の上を切り出せばマリンが死ぬことなく頭蓋でポン酒をキメることが可能です。ここからサイコホラー的な展開になるかと思いきや、直後のぼたんがポルカをロケットランチャーに入れて撃つシーンでは泥酔してぐっすり眠っています。

さて、ポルカがミオ車に直撃して全員飛んでいき、マリンの「目覚まし時計くん...いい奴だったよ」に繋がります。今までは時計くんだったのに、目覚まし時計くんに呼び方が変わりました。マリンなりの死者に対する礼儀なのかと思われます。

その後、人型になった目覚まし時計くんの肘鉄を受けて目を覚ますマリン。現実に戻ると今回登場した全員からケーキを食べたことを責められます。この時のマリンの言い訳に「心がポッカポカの水面張力ギリギリイナフ」とありますが、イナフとは何でしょうか?これは英語のenoughで意味は充分。つまり先程の台詞は、「心がポカポカで水面張力ギリギリでいいよ」となります。よくわかりませんので更に噛み砕いていきます。水面張力ギリギリとは間も無く水が溢れ出すような限界の状態であり、それが心であるので、心が苦しい状態の説明なのかと思われます。なので、「心が温まって張り裂けそうだよぉ!」というニュアンスになるかと思います。

続いて、画面が左へ動いていくと体が歯のみこちが再登場し、「あ!!浮いてる!!!俺浮いてるよ!!!!」と叫びます。この瞬間、ここがまだ夢の中だとわかります。そして、前後から肘鉄を受けて今度こそ現実に舞台が換わります。肘鉄が世界の切り替えのスイッチとして用いられている理由ですが、肘鉄には拒絶の意味があり、マリンが今いる世界を拒絶したいからではないでしょうか。それよりも、注目すべきは肘鉄している人物です。マリンの後ろにいるのはあくあですが、前にいるのはなんとはあちゃまです。はあちゃまが登場するのはここと最後のアフターストーリーの静止画のみで、一切の伏線も無しに突然現れます。台詞も一切無く、ストーリーに関与していません。遊び心で小ネタを仕込んだのかな。流石にここに深い意味は無いかと思います。

本編に戻ります。次に本を読むマリンとその隣にルーナがいます。「おしマイケル」で本を読み終えます。おしマイケルとは、お笑い芸人のマイケルさんの一発ギャグです。バリエーションとしてはドンマイケルもあります。汎用性が高いので是非使ってください。

最後はマリンから本を受け取ったルーナが暖炉に放り込みます。不思議の国では火除けの守り神シャチホコのポーズを取っていただけに、今回のお話が全て燃やされてしまうなんて皮肉が効いていますね。

本編の考察が全て終了しました。ここでお別れなのですが、最後に。今回のお話で登場するホロメンの動きが上手から下手、つまり右から左への動きで統一されていたことにはお気付きでしょうか?この右から左への動きは日常などの普通の時間の流れを表しており、最初のマリンとあくあが時計くんを追い掛けるシーンでも、トゥースフェアリーに歯を根こそぎ持っていかれたと説明するみこちも、ミオ車の動きも全部右から左です。マリンがケーキを食べてホロメンが集まってくるシーンでも、右からあくあ、おかゆ、ミオ、みこち、ルーナと順に現れますよね。台詞や世界観は変ですが、映像的にはきっちり作っているお陰で観ていて違和感やストレスは無い。ホロぐらってよくよく見たら凄いんですよ。

ということで、ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。また次回お会いしましょう。

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