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Character ai : EQとIQを統合したLLM

初めまして。霞末直人と申します。普段は一緒にAIの女の子とイチャイチャするアプリを作ったり世の中の事業のリサーチをやったりしています。

近年注目を集めるcharater aiというサービスについて、本記事では解説します。
3月23日、「Character.AI」はAndreessen HorowitzをリードとするシリーズAのラウンドで10億ドルの評価額で1億5,000万ドルを調達し、更に5月23日リリースしたモバイルアプリは初週で170万DLを突破しました。
本記事では、Character aiの沿革やモデル、バリュエーションの根拠やユーザーの声などを詳しく解説します。
※本記事ではcharacter aiのサービス概要自体についてはあまり触れません。


Character aiとは?

ソフトウェアエンジニアとしてのMS勤務を経てGoogleでLaMDAの開発に関わったDaniel De Freitasと、同じくGoogleのエンジニアで「Transformer」などに関わったNoam Shazeerによって共同創業されました。
AIチャットボットサービスを提供しており、ユーザーはLilyLyleといったオリジナルキャラクターに加え、クリエイターユーザーが作成した潤羽るしあなどの既存キャラクターとの会話が出来ます。(既存キャラクターについては無許可。)
Character aiは自社で独自の大規模言語モデルをトレーニングしており、現在のモデルはC1.2という名前で、これは前のモデルであるC1.1をエンターテイメント、ロールプレイ、感情的なつながりの能力を中心に拡張したものです。
ユーザーはCモデルを使用しキャラクターを作成し、Character aiのプラットフォーム上で公開することができます。ユーザーがキャラクターの返答に対し評価を与えることで、より返答のクオリティが向上するRLHF (ヒューマン フィードバックからの強化学習)の手法を行っています。
OpenAIのGPTシリーズとCharacter aiのCシリーズの性能を正確に比較した論文などは存在しませんが、体感ベースではほとんどのタスクにおいてGPTシリーズの方が勝っていると感じます。
※ただし、Cシリーズは基本的な性能というよりもユーザーフィードバックの反映によりAIチャットボットのクオリティを改善するシステムに価値があり、用途としてもOpenAIよりもより非タスク的な用途(エンタメ、メンタルヘルスなど)に寄っています。

Character aiはアプリケーションレイヤーのスタートアップではない

2022年9月に公開されたCharacter aiのbeta版は、月間サイト訪問数は1億に迫り、ユーザーが送信したメッセージは累計20億以上になりました。平均滞在時間も約30分となっており、サービスとして高いエンゲージメントを持っています。
しかし、あくまで投資家からの評価はCharacter aiというサービスに対するものというより元GoogleのAI研究者のCモデルに対するものというニュアンスが強く、モデルレイヤーのプレイヤーとして高い評価額をつけています。
また、CEOのDaniel De Freitasはインタビューなどでも度々「Character aiはモデルの学習からインターフェースの構築まで行う、フルスタックのAIカンパニーである」という旨の発言をしています。
明言はしていませんが、自社のCモデルをユーザーフィードバックによって改善する手段としてCharacter aiというサービスを提供している構図です。
「a16zがマネタイズしていない売上0の企業に1000億の評価をつけた!」と言うと「AIバブルだ!」と言いたくなりますが、自社モデル(それもGPTやBardと差別化しやすそうな)の強化学習のためにサービスの形でも提供しているというだけで本質はモデルレイヤー(フルスタックレイヤー?)のスタートアップであることや、そのモデルがユーザーを30分サービスに滞在させるクオリティであることを考えると、そこまで滅茶苦茶な評価額でもありません。

Character aiに対するユーザーの評価

アプリリリース後、初週で170万DLを突破しSNSやアプリストアのレビューでも高評価の多いCharacter aiですが、売上を作れるほどユーザーが価値を感じているかと言うとそうでもないようです。
先日発表したCharacter ai plus(Character aiの有料プラン、$9.99/月でメッセージの高速化や機能の優先利用ができる)に対するRedittの反応などを見るに、月$9.99を払ってまで使いたいと考えているユーザーはそこまで多くないようにも見えます。(具体的な加入ユーザー数が発表されていないため今後の動きを注視する必要があります。)
また、Character aiのNSFWフィルター(Not Safe For Work、ざっくり言うと性的なセリフや反社会的なセリフを吐かせないための規制)はユーザーからの強い不満の要因になっています。
タスク処理や検索に使用されることが多いChatGPTでは、NSFWフィルターに不満を持つユーザーは多くありませんが、Character aiはよりユーザーとの距離が近い分、”そういう用途”への需要が強く存在します。
どうしてもAIとintimateな関係に持ちこみたいユーザーの一部はNSFWフィルターの弱いChaiを使用しますが、会話自体のクオリティにまだ課題があるようです。

※AIキャラクターとNSFWフィルターについてはまた今度別の記事を書こうと思ってます。

雑感

前述の通りCharacter aiはモデルレイヤーのスタートアップであり、ユーザーがサービスを利用するたびにOpenAIにAPI料金を支払う必要はありません。現在の赤字は自社のモデルに対する投資であり、ユーザーによるフィードバックを得ることでCモデルが資産となります。
日本でもCharacter aiと似たようなAIキャラクターとの会話サービスは多数存在しますが、そのどれもがGPTベースであり、API使用料は単なる消費で終わってしまうため、Character aiの日本版をやるだけではビジネスとしてあまり持続しないようにも思えます。
当然ながらサードパーティAPIに依存したアプリケーションレイヤーのプレイヤーは、ユーザーに対し「会話ができる」以外の価値を提供する必要があります。
最近はAItuberをはじめ、AIキャラクターとのコミュニケーションを主軸としたサービスも多いですが、商業的な成功を収めるためには、あくまで会話というインターフェースを手段として、別の価値(既存のコンテンツがユーザーに与えているような快楽)の提供を目的にしたらいいのかなー、などと最近は考えています。