見出し画像

星の王子さま 2章

 ”大洋の真ん中を筏でさまよう人よりも孤独” とは、どれほどの孤独でしょうか。サン=テクジュペリさんも、リビア砂漠に遭難したことがあるそうです。飲み水は8日分。孤独な夜明けに小さな人が「ヒツジの絵を描いてね」って声かけで目を覚まされます。
 心から話せる人がいないってどれほど孤独なのでしょう。
外見ではなく中身を考える人。中身は説明されるものでは無くて、自分で想像する事が大切。王子は、パイロットが死の危険の中で描いてくれた、箱の中に、感謝をみつけ同時にヒツジを見付けることになったのでしょうか。

            ★ ★ ★
 心から話せる人もなく、一人ぽっちでした。サハラ砂漠で飛行機が故障するまでのことでした。あれは6年前のこと、エンジンがおかしくなってしまって、でも、技術者もいない、乗客だって。だから、たったひとりだけで難しい修理をするはめになった。それは、生死に関わる問題だったのです。飲み水は8日分だけでした。
最初の夕方でした。わたしは人里から1000マイル離れた砂漠で眠りました。それは大洋の真ん中を筏でさまよう人よりも孤独でした。だから、夜明けごろに、ちょっとおどけた感じの声で、目が覚めた時どんなに驚いたか分かってもらえるでしょうか。こう言ったのです。
「すみません・・・羊の絵を描いてちょうだい・・・」
「何だって!」
「羊の絵を描いてちょうだい・・・」
わたしは、雷に打たれたみたいに飛び上がったのでした。よく目をこすってよく見てみると、そこには、わたしを真剣に見ている、とても小さな人がいました。これが、後になって一番うまく描けた、あの人の絵です。もちろんだけど、この絵はモデルより素敵じゃないけどね。でも、それってわたしの所為ではない。6才の時にウワバミの内側と外側を描いた他は、大人たちが偉大な画家への道を閉ざして絵を描かなかったからなのです。

 わたしは、おどろきのあまり、この人の出現に目をまるくして見つめていました。人里から1000マイルも離れたところで見つけたことを忘れないでください。そして、この人は、道に迷った風でもなく、疲れて死にそうなどと言うこともなく、餓えている様子もなく、のどが渇いた様子もない、怖くて死にそうにも見えません。砂漠の真ん中で道に迷っている子どもにはとうてい見えませんでした。ようやく、この子に話しかけました。
「いったい、君はここで何をしているの?」
すると、とてもゆっくりと、とても大事なことのように、わたしに応えました。
「すみません・・・羊の絵を描いてちょうだい・・・」

不思議さもあまりにも大きいと、従うしかないものです。
また人里から1000マイルも離れた、死の危険のある場所にいるのに、わたしは紙と万年筆をポケットから取り出したのでした。でも、 その時思い出したのです。わたしはづっと地理や歴史、数学や文法とかをやってきたことを思い出したので、(冗談もあって)うまく描けないからと言いました。すると、
そんなことちっとも問題じゃないから、羊の絵を描いてちょうだい。って、この人は言ったのでした。わたしは羊の絵とか書いたことがなかったので、今までにできた2つのデッサンの一つを渡しました。それは、閉じた方のウワバミの絵ですが、小さい人がこう言うのを聞いて唖然としました。


「違うって!違うよ!ぼくが欲しいのはウワバミの象じゃないよ。ウワバミってすごく危ないよ、それにかさばるし。ぼくのところってすごく小さいの。ひつじがいるの。羊の絵を描いてね。」
そこで、わたしが絵を描くと、小さい人はよく見てから言いました。

「違うよこの羊は病気だよ。別のにしてね。」
わたしは、描きました。

わたしの友達は、にっこり笑って
「よく見てよ。 これって羊じゃないよ。山羊だよね。角があるでしょ・・」
わたしは、デッサンをやり直しました。けれど、前と同じように断られました。

「この羊は、年取ってる。長く生きられるひつじが欲しいよ。」
もう、飛行機を早く修理しなければとはやる気持ちで、ガマンも限界でしたので、こんなデッサンを雑に描きました。

わたしは、投げ出してこう言いました。
「これがその箱だよ。君の欲しい羊は中にいるよ。」

でも、わたしの感じでは彼の表情が輝いて見えたので驚きました。
「ぼくが言いたかったのはこれなんだよ。この羊はたくさんの草を食べるのかな?」
「どうして?」
「僕のとっても小さいからね」
「十分ですよ。とても小さい羊を差し上げたからね。」
彼はデッサンに首を突っ込んで、
「そんなにも小さくはないよ・・・ほら、眠ってしまったよ。」
こんな風にして、わたしは星の王子さまと出会いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?