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自分を好きになる文章の書き方 vol.3

『自分を好きになる文章』は、日常的に触れるものに対する心の解像度を上げることと、言葉による具体的な心の描写を練習することの相互作用によって生まれます。


もしも、自分を好きになるという言葉に興味を持ってこれを読んでくださっているとすれば、自分を好きになれないって感じることもあるからですよね。

そしたら、ちょっと発想を変えて、誰かのことを好きになるのってどんな時か?思い出してみてください。

一目惚れや運命的な出逢いなどもあると思いますが、多くの場合は、相手の人のことを良く知っていくにつれてだんだん好きになっていきませんか?

例えば小学生時代だったら、隣のクラスだった時は名前くらいしか知らなかったけど、同じクラスになって一緒に過ごす時間が増えたらとても気が合うことがわかって大の仲良しになった、とか。

会社の同僚や上司の場合、同じ部署になって一緒に厳しい局面を乗り越えると、良い面も悪い面も含めて親しみや信頼を感じるようになった、とか。

恋愛なら、長い間友達だったけど、何かのきっかけで意外な一面を知ってから恋心が芽生えた、ということもあるかも知れません。

自分のことも同じで、知れば知るほど好きになるものだと思います。よく、ジャッジしない、良い悪いの判断を加えない、ありのままに見る、と言ったりしますが、そういう態度で自分のことを知っていけば良いと、私も思ってます。

そのために役に立つのが、日常的に触れるものに対する心の解像度を上げることと、言葉による具体的な心の描写を練習することだと思うんです。その2つの相互作用によって、『自分が好き』という感情が生まれ、『自分を好きになる文章』が書けるようになる。

仮に、いつも社交辞令のようなことしか言わない人がいたら、その人を深く知ることができず、好きになりようがないですよね。文章を書く時も同じです。誰でも使う形容詞だけでは伝わらないし、自分でも自分のことがよくわからないままです。逆に自分の気持ちがよくわからないから書けないんだという人がいたら、日常的に触れるものや、その時に感じていることを丁寧に観察してみてください。

ちょうど今日、私が管理しているサイトでインタビュー記事をアップしたのでその文章を引用しますね。これは、インタビュー相手の方が書いてくださった表現です。

最後の舞台はプロコフィエフの協奏曲を演奏しました。戦争の影響を色濃く受けた、暗い、けれどかっこいい、大好きな曲です。ホールに朗々と響き渡る音。
多分、それまでで最高の演奏ができたと思います。6年間の努力が実を結んだのです。
買い換えた、良く鳴る楽器のおかげでした。以前の楽器ではいくらさらっても出なかった音が、スカンとあっけなく鳴る。とにかく鳴りまくる。大砲のような音。私の細い腕には、このぐらい良く鳴る楽器でないと見合わなかったのでしょう。なぜもっと早く出会えなかったんだろう。
馬鹿らしい。あの血の滲むような報われない努力が、楽器であっさり解決するなんて。笑える。
ABC INDIA! アーティスト紹介#4 / バイオリン奏者 Asuwa Murayamaより

例えばこれを、一般的な形容詞だけで済ませたらどうなるでしょうか?

『最後の舞台は、暗いけれどかっこ良くて大好きな、プロコフィエフの協奏曲を演奏しました。買い換えた、良く鳴る楽器のおかげで、6年間の努力が実を結び、最高の演奏ができました。』

と書くこともできますが、ここでは短い文章で区切られた修飾表現がいくつも散りばめられています。瞬間瞬間を丁寧に味わって、感じたそのままをできるだけ具体的に表現しようと工夫された文章ですよね。嬉しいや悲しいだけでは表し切れない様々な感情や、時間の流れ、映像まで見えてくるかのようです。

この例は高度すぎたかも知れませんが、心の解像度や、具体的な心の描写という意味がわかってもらえたでしょうか?

私は、長くヨガを続けてきました。ヨガをしていると、決まった形や日々のルーティンに従って体の感覚を丁寧に見つめるので、それに比例して心の解像度もあがってきます。

対する具体的な心の描写の練習が、言葉のヨガです。基本的な文章の書き方や整理の仕方を再確認し、書く練習をします。その文章は、前の記事でも書いたように、内側の言葉と外向きの言葉を意識した文章です。

内側の言葉と外向きの言葉の違いをヨガのポーズで例えると、その時自分が感じている快不快の感覚と、先生のガイドやお手本の違いです。

ヨガのウォーミングアップやポーズを一歩ずつ覚えていくかのように、体の声に従って出来ることから積み重ねていきます。

この2つを繰り返していると、自分自身のことがより良くわかってきて、もっともっと好きになっていくんじゃないかと思ってるんです。気づいたら書くことが大好きになっていて、自分のことも大好きと思えていたら素敵ですね。そんな想いで、言葉のヨガ®︎をお伝えしています。






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