最後のお支度
あいです。
初めての投稿から1カ月が経とうとしていてビックリしています。
時の経つののはやいこと。
今日もご訪問くださりありがとうございます。うれしいです。
今回はナースとして最後の看護、についてふれようと考えています。
センシティブな内容になるかも、と思います。
読みすすめていただくかどうか、お考えいただけましたら幸いです。
ナース人生が重なると、さまざまな経験が蓄積されます。
その蓄積によって、ナースあいが形成されています。
忘れられない患者さま、ご家族さまとのエピソードがたくさんあります。
なかでも、わたしの最後の看護に対する考え方を大きくゆるがし、育てていただいた経験があります。
たまごナースちゃんのとき「死後の処置」について学び「処置」という表現にとても違和感がありました。(エンゼルケアとも言います)
ナースデビューすると現場でたくさんの死に直面しました。
ひと晩の勤務帯で、限られたナースの中、複数の患者さまに看護を提供します。その中に臨終時の看護もあるのです。
リーダーとしてすべての患者様の状態ふまえ、臨終時の看護も顧慮し、仕事運びを勘案しなければなりません。
正直、未熟なナースのわたしには気持ちの余裕がありませんでした。
いつしかそれは、あのとき違和感を覚えたはずの「処置」になっていたと思います。
その患者さまは女性特有のがん末期で、入退院をくり返しておられました。
大学受験を目指す一人息子さまを支え、開業医であるご主人さまに献身的に尽くしておられ、笑顔が美しく、わたしたちへの労いをつねにくださいました。この方の最後を担当したくない、辛すぎる…。そんな不謹慎な気持ちがありました。
皐月色に染まる季節、うつくしい晴天でした。その日が訪れました。そして担当でした。夜勤明けで疲れきっていて、師長から指示をうけ、泣きたい気持ちでした。
「これを母に着せてほしい」
息子さまがご準備されたのは、黒を基調としたエレガントなワンピースでした。驚きました。当時、ご臨終時の衣類は寝巻き(着物の形で前あき)で打ち合わせが通常の着物の着方と異なるので細心の注意をはらっていました。
そのワンピースは背部にファスナーがあり、ボディラインに沿うよなデザインでした。正直、戸惑ったし「着せにくそう、ハードル高い」と思いました。実際、かなり難しかったけど、がんばりました。
「綺麗になって…」
息子さまの言葉にハッとしました。本当にきれいだったんです。
全身にむくみがあり、おそらく、お元気な頃のおもかげは少なかったとおもいます。でもきれいで、穏やかに佇まっておられたのです。
患者さまの傍らで、声をころしてご主人さまと息子さまが泣いておられました。そして何度も私たちに、労いと感謝のことばをくださいました。
「いっしょに帰ろう」
この言葉に大きくゆるがされました。
そうか、そういうことか。そうだよね。今まで何を考えていたんだ。
わたしたちは「処置」をしているのではない。
患者さまが、大切なご家族さまやご友人など、愛する人のもとへと帰っていく、その準備なんだ。
『最後のお仕度』
あの経験は今もなお心に焼き付き、色褪せることはない。
その患者さまがどう生きてこられ、そして最後をどのように過ごされたか、最後のお仕度がゆきとどいていていたのか。これら、終末期看護の展開は、患者さまのみならず、愛する人の死を受け生きる、ご家族さまの人生に大きな影響をおよぼす。決して忘れない学びである。
いつも患者さまの向こうにある、患者さまが大切にしたいと思っておられるであろうことに気がつける、そんな看護展開を意識している。
長文におつきあいくださり、ほんとうにありがとうございました。
では、またおめにかかれますように。
感謝をこめて。
あい。