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OpenAIがニューヨークタイムズからの訴訟に対して声明を発表

生成AIが大いに盛り上がった2023年の年の瀬、ChatGPTやその他のAIがどんどん出てきて生成AIにとって大躍進となった1年だったなと感慨深く考えていたその時に衝撃的なニュースが舞い込んできました。なんと、世界的影響力のある米国の新聞社ニューヨーク・タイムズが、著作権をめぐってChatGPTのサービスを提供するOpenAIを訴訟しました。年末になるギリギリまでいろいろなことが起きた2023年でしたが、年が明けてからOpenAIも訴訟に対して声明を発表しましたので、こちらの記事でその内容を説明いたします。

元の記事はこちらで確認いただけます。


OpenAIの声明内容

まず、OpenAIは彼らの目標が人々の問題解決を手伝うAIツールを開発することであり、多くの人や企業にOpenAIのツールが使われていることを主張した上で、ニューヨーク・タイムズの訴訟に対する主張に同意しないと言っています。またこの件については、OpenAIにとってのビジネス、その意図、技術の構築方法についてを明らかにするよい機会だと捉えているようです。

そして、OpenAIの主張は以下の4点に要約されます。

  1. 私たちは報道機関と協力し、新たな機会を創出します。

  2. トレーニングでの著作物使用はフェアユースとして合法ですが、それが正しいと考えているのでオプトアウトを提供します。

  3. 「再生産」は稀なバグであり、私たちはそれらをゼロにするように取り組んでいます。

  4. ニューヨーク・タイムズはすべてを語っていない。

1. We collaborate with news organizations and are creating new opportunities
2. Training is fair use, but we provide an opt-out because it’s the right thing to do
3. “Regurgitation” is a rare bug that we are working to drive to zero
4. The New York Times is not telling the full story

https://openai.com/blog/openai-and-journalism

要約だけ見るとちょっとわかりにくいところがあるので、以下にざっくり解説します。

私たちは報道機関と協力し、新たな機会を創出します。

OpenAIは大量の公的記録の分析やストーリーの翻訳などでレポーターやエディターなどの作業の軽減で手助けを行い、またニュースや出版社などへリアルタイム表示などで新たな読者を増やすお手伝いができますよと述べていした。要するに、「ニュース記事作成や売り上げ貢献でOpenAIは協力しますし、OpenAIはニュースを学習に使って精度を上げますし、お互いにとってWin-Winの循環が生まれていいですよねー」と言っていると解釈してみました。

トレーニングでの著作物使用はフェアユースとして合法ですが、それが正しいと考えているのでオプトアウトを提供します。

上記の文章は翻訳したものなのですが、フェアユース、オプトアウトなどについては、それに該当する概念の日本語が見つからず、少しわかりにくいですね。
もう少し意味を踏まえて訳しますと、「トレーニングで著作物を使用することはアメリカ合衆国の著作権法にとって問題ありませんが、著作権の所有者がトレーニングに使用されたくないのであれば使用しませんよ。使用しても違法ではないんですけどね」ということですね。

ここで、フェアユースとは、著作権が存在する作品を、著作権者の許可なく、特定の条件下で使用することを許容する法的原則です。

フェアユースとはなんですか?
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「フェアユース(Fair Use)」は、主にアメリカ合衆国の著作権法において定義される概念で、著作権が存在する作品を、著作権者の許可なく、特定の条件下で使用することを許容する法的原則です。この原則は、創造性や知識の共有を促進し、表現の自由を守るために重要です。

フェアユースの判断は以下の4つの基準に基づいて行われます:
1. 使用の目的と性質:教育的、非営利的、批評的、報道的、研究的、またはパロディーのような目的での使用は、フェアユースと見なされる可能性が高いです。
2. 著作物の性質:公開されている事実や情報、非フィクションの作品は、未公開やフィクションの作品よりもフェアユースの範囲が広いとされることがあります。
3. 使用される量と実質的な部分:使用される量が少なく、また作品全体の中で重要な部分(「実質的な部分」)を使用しない場合、フェアユースの可能性が高まります。
4. 市場への影響:使用が著作権者の作品の市場価値や販売機会に悪影響を与える場合、フェアユースとはみなされにくくなります。


フェアユースは、教育、学術研究、報道、評論、パロディーなどの分野で広く利用されています。ただし、フェアユースの範囲は状況によって異なり、明確な線引きが難しい場合もあるため、具体的なケースごとに個別の判断が必要です。

ChatGPT-4

また、オプトアウトについてですが、メールマガジンなどでよく使われる言葉で、その参加に選択的に拒否をすることです。メールマガジンからオプトアウトするというのは、そのメールマガジンを受け取らないように設定するということです。
今回の場合においては、著作権の所有者はOpenAIに対して、自分の著作物を学習されないように拒否することができますよと言っています。

「再生産」は稀なバグであり、私たちはそれらをゼロにするように取り組んでいます。

「再生産」とは、学習に使用した文章がそのまま再度生成される現象を意味しています。あるプロンプトを入力したときに、学習で使われたニューヨークタイムズの記事がほぼそのまま出てきたことが今回の訴訟のきっかけになりました。

以下がこの項目についてOpenAIからの主張をまとめたものです。

OpenAIのモデルは新たな問題を解決するための概念を学ぶようにトレーニングされています。
「記憶」は学習の過程で稀に発生するエラーであり、OpenAIはそれに取り組んでいます。特定のコンテンツがトレーニングデータに複数回登場する場合にこれらのエラーが起こりやすくなります。それに対してOpenAIは「再生産」を防ぐための措置を講じているところです。

https://openai.com/blog/openai-and-journalismより翻訳して抜粋

ニューヨークタイムズはすべてを語っていない。

4つの要点の最後であるこちらの内容がもっとも重要だと思われますので、こちらは全文を翻訳してお伝えします。

2023年12月19日の最後のコミュニケーションを通じて、ニューヨーク・タイムズとの交渉が建設的に進行しているように見えていました。ChatGPTでのリアルタイム表示における付加価値が高いパートナーシップについての交渉は、ニューヨーク・タイムズにとって新旧の読者との新しいつながりを得ることができ、私たちのユーザーはニューヨーク・タイムズの報道にアクセスできるようになる予定でした。私たちはニューヨーク・タイムズに、彼らのコンテンツは他のデータソースと同様に、既存モデルのトレーニングに意味のある貢献をしているわけではなく、また将来のトレーニングに重大な影響を与えることもないと説明しました。12月27日にニューヨーク・タイムズの記事を読んで初めて知った訴訟については、私たちにとって驚きであり失望でした。

彼らは自分たちのコンテンツが「再生産」されたと言及していましたが、問題を調査し解決するという私たちの約束にもかかわらず、具体的な例を共有することを繰り返し拒否していました。私たちはこの問題を真剣に受け止めており、例えば7月には、ChatGPTの機能が意図しない方法でリアルタイムコンテンツを再現することがわかった直後に、その機能を即座に取り下げました。

興味深いことに、ニューヨーク・タイムズが引き起こさせた「再生産」は、数年前の記事が多数の第三者ウェブサイトに広がったもののようです。ニューヨーク・タイムズは、私たちのモデルに「再生産」させるために、意図的に記事の長い抜粋を含めてプロンプトを操作しているようです。このようなプロンプトを使用しても、私たちのモデルは通常、ニューヨーク・タイムズが示唆するような振る舞いをしません。これは彼らがモデルに「再生産」を指示したか、多くの試みから例を選び出したことを示唆しています。

ニューヨーク・タイムズの主張に反して、このような誤った使い方は典型的でもなければ、ユーザーの使い方として許されるものでもありません。また、ニューヨーク・タイムズの代替物でもありません。それでも、私たちはシステムをトレーニングデータを「再生産」させるような攻撃に対して、より強固にするための取り組みを続けており、最近のモデルではかなりの進歩を遂げています。

https://openai.com/blog/openai-and-journalismより翻訳

以上がOpenAIからの声明でした。

法律に関して特に私から意見を言える立場ではないので、静かに見守っていきたいなと思っております。


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