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世界選手権が中止になったので

コロナの影響でフィギュアスケート世界選手権が中止になった。

仕方がない。

どうしようもできないし一番悔しいのは選手のはずなのに

朝からずっとモヤモヤ。


元々は3/16~23にカナダのモントリオールで開催を予定していた。

日本からは、

男子シングル:羽生、宇野、田中

女子シングル:紀平、樋口、宮原

ペア:三浦璃来&木原龍一組

アイスダンス:小松原美里&ティム・コレト組

(敬称略)

が出場予定だった。


私の押しは、樋口新葉選手。

何がどのくらい好きかは長いし暑苦しいので別の記事に書くとする。

いやあ、とにかく残念。

こんな形でシーズンが終わるとは誰も思わなかっただろう。


そこで…

このモヤモヤを晴らす為、選りすぐりにすぐりまくった

世界選手権ベスト演技をご紹介したい。


①2009年/ロサンゼルス/安藤美姫選手 フリー

サンサーンス-交響曲第3番オルガン付き

私がフィギュアスケートを好きになったきっかけになった選手。

引退してしばらく経つ今でも、ダントツで大好きな選手だ。

彼女の魅力は、キレのあるジャンプ。

特にループが絶品だ。ドリルのようにまわる。

このオルガン付きは、

サンサーンスが自身の子供と死別した後に妻とも別れ、

敬遠していた束縛の激しい母親の元に戻った頃に書かれたらしい。

最も身近な家族との関係に悩み苦しむ一方で

天才的な才能をまるごとぶつけて作り上げられた至極の交響曲だ。

実際、この曲以降交響曲は書かれておらず、まさに集大成の作品になったと言える。

安藤選手の力強く、それでいてしなやかなスケートにぴったり合っている。

フィギュアスケートではよく使われる曲ではあるが、

彼女ほど音楽と一体となって要素をこなせるスケーターはいないと思う。

終盤のステップの終わりからスピンにかけての鳴りやまない喝采と

ポーズを決める前から立ち上がりだすロスの観客を見る度に

全身で感動する。



②2007年/東京/ステファン・ランビエール選手フリー

ビセンテ・アミーゴ-ポエタ

ランビエール選手も私のお気に入りの選手だ。

今は引退し宇野選手のコーチをしていて、日本人にも人気のある選手である。

彼は、美しく高速のスピンと豊かな表現力が武器の選手だ。

正直彼が滑るプログラムはほとんど好きなのだが

今でも繰り返し見るのはこのポエタ。

今シーズン樋口選手もフリーでポエタを使っている。

ドラマチックで情熱的な旋律の中にも切なさが垣間見れる色気漂う曲だ。

振り付けはスペインでも有名なアントニオ・ナハーロというフラメンコダンサーが担当してる。

このプログラムの魅力は、まさにフラメンコ。

氷の上ということを忘れてしまうほど、キレのある振りとフットワーク、

そして最後の高速スピン…!

曲の終わりが近づくにつれて息が詰まるほど魅せられる名演技だ。



③2018年/ミラノ/樋口新葉 フリー

Adele - Skyfall 

このスカイフォールは最高。

この挑戦的な振り付けは実は日本人には少々ハードルが高い。

しかし樋口選手は完全に自分のものにできている。

振り付けはシェイ=リーン・ボーンで鉄板のコラボだ。

昨季のエナージアや今季のBird Set Freeもシェイリーンの振り付けである。

彼女は表現はもちろんだが、ジャンプのキレが凄い。

きちんと飛び上がってから回り始めて、降りる頃には回りきっている。

加えて、躍動感の溢れるステップも毎回魅了される。

曲の様々な表情を読み取り、音を的確にとらえて全身で表現できる

希少なスケーターだ。

実はこの大会は、平昌オリンピックの代表を逃した後に出場した試合で、

あと一歩のところで出場を逃した悔しい気持ちをバネに結果を残しているところがまた泣かせる。

この負けん気の強さも好きだ。



④2019年/さいたま/隋文静&韓聰 フリー

エツィオ・ボッソ-Rain, In Your Black Eyes

中国のカップル競技は全体的に好きだ。

中国人スケーターは情熱や苦悩など

内から湧き出てくる感情の表現がみんな上手だと思う。

この曲はRain In Your Black Eyes。

フランスのアイスダンスのパパダキス・シゼロン組も昔使っていてそれも素敵だった。

中盤までは比較的穏やかで起伏のない旋律になっているが

徐々にダイナミックに変わりスケーティングも力強さを増していく。

そこで豪快かつ軽やかなリフト。

スロージャンプも完璧。

我々の人生にはずっと雨が降っていて、

時には孤独を増幅させ、

時には悲しみにそっと寄り添い、

またある時には愛を演出する。

この曲はシングル競技で表現するのは難しいと感じた。

人と人との関係性における揺らぎや絆の深まりまで表現し得るのは

カップル競技だけであろう。




⑤2008年/ヨーテボリ/テッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア フリー

ミシェル・ルグラン-シェルブールの雨傘

テサモエ。アイスダンスファンならみんな大好き。

圧倒的なシンクロと表現力の高さ。

曲はシェルブールの雨傘。

フランス北部の港町に住む若いカップルの話だ。

ジュヌヴィエーヴとギイはお互いを愛しているが

そんな時ギイが戦争に行かなければならなくなってしまった。

どうしても離れたくない彼女と残りの貴重な時間を有意義に過ごしたい彼。

曲の中盤までは、愛情と悲壮が見え隠れしながらも2人は幸せそうに見える。

最初のツイズルから引き込まれる。

恋人同士の気持ちの満ち引きがうまく表現されている。

3:05あたりからは戦場に発つギイを見送るシーンだろう。

Je ne peux pas, je ne peux pas, je ne peux pas !

行かないで、やっぱり行かないで!

とジュヌヴィエーヴがギイを引き留めるが、結局ギイは旅立ってしまう。

振り付けからも離れたくないでも離れなくてはいけないという気持ちが伝わってくる。

終始シェルブールの町で遠くから恋人同士を見守っているような

不思議な気分になるプログラムだ。


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