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ウエツフミ秘言・宣言編

※この文章はYouTubeで無料で視聴できます

こんにちは。今回は前回に引き続き「ウエツフミ」という古文書に記載されている、秘言・宣言についてお話しさせて頂きます。

宜しくお願いいたします。


【秘言・宣言とは】

秘言・宣言というのは、簡単に言えば呪文やおまじないの一種です。ウエツフミには合計27つ記述されていますが古事記と日本書紀には各々1つづつしか記載がありません。また、ウエツフミにはひとつひとつに詳細な説明文が添えられているのが特徴です。

【イヨブセの秘言】

では実際に、ウエツフミの中で一番最初に登場する「イヨブセの秘言」を読んで行きます。これは仮死状態のイザナミノ尊を蘇生させる時に使用した秘言です。

〜天津大神は「わが子よ。イザナミノ尊を蘇生させるには、オキク オキク クルコ クルコ ヒレコ ヒレコと左右の手を吹き振れよ。そして心伝をなし、あばき・あやきの秘法を行い、劔刃で祓い、カクツチノ尊に手当を施せよ」と仰せられた〜

と現代語訳されています。

このイヨブセの秘言により蘇ったイザナミをイザナギが肩にかつぎ、おもむろに黄泉国(よもつくに)から脱出しました。ところが黄泉国の総大将ヨモツマガマロヲノカミは、五十六種のカミと一千万のシコオメどもを率いて追いかけてきます。これに対しイザナギはチカエシノカミを千引岩の前に、イザナミを千引岩の後ろに立たせて、自身は千引岩の上に立ち、黄泉シコオメどもに向かって怒ります、十握剣(とつかのつるぎ)を抜いて左手で持ち、右手で高天ノ原を打ち振り、次のように口凝り・神凝り(かむこり)をしました。

〜カヱヌニ カヱヌニ クウアチス クウアチス ヤサヌヨホ ヤサヌヨホ ナニ ナニ。シヱ シヱ シヱヤ シヱヤ ハテ ナニ シヱ ナニ シヱヤ ハテ〜

このように発したあと、大股に踏み構えて大声をあげて厳しく問い詰め叱りました。すると黄泉カミどもはことごとく仰向けにひっくり返って転がりました。そしてひしめき騒いでいたものが泣き沈みしょげかえりました。

以上がウエツフミの中で最初に登場する秘言のエピソードです。

【考察】

“56種のカミと一千万のシコオメども“という箇所ですが、神又は指導者のことを1種2種と数える例は見聞きしたことがないため、56種の何かを一千万のシコオメ達が持ってきたことが推測できるのですが、カミという単語をウエツフミ現代語訳の中で探すと”神”の他に”鬼”や”禍の鬼”と書いてカミと訳されており、この場合はわざわいのおに、つまり56種の兵器か何かを持ってきたのではないでしょうか。

次に泣き沈みしょげかえるとはどのような心情だったのでしょうか。イザナミを追って行った黄泉国集団はイザナギに怒られて泣いたとあるので、イザナミを連れ戻したかったが、例のカヱヌニカヱヌニの秘言とイザナギの叱責により戦意消失し、自ら仰向けに倒れ泣きしょげかえり、イザナミを連れ戻す事を諦めた、という状態を表しているのではないでしょうか。

“大股に踏み構えて“と”シコオメ”と聞いて相撲を連想しませんか、相撲の力士名である四股名は、古典にはシコメと書かれておりシコは醜いという漢字を当てられていました。

次にウエツフミ13巻に「豊作・区作の秘言」が記載されています。この秘言は山幸彦として知られるホヲリノ尊が海津霊ノ宮にて、失った釣針を探し出してもらい受け取る際に授かったものです。

〜ヨヨチ サキチ イツチ ウマチ〜 が豊作を願う秘言で

〜マチヂ オボチ ススチ ウルチ〜 が区作によって禍心をもつ者を懲らしめる秘言です。古事記には凶作の秘言だけが記されています。

ウエツフミ18巻には〜スヰ スヰ〜という短い秘言が記載されています。

これはミスヰノリの秘言と言って、フキアエズノ尊が東国巡幸した時の記録に残っています。

フキアエズノ尊を乗せた船が豊日(ほうにち)の沖合に進んだ時、穴門(あなと)の住民が大船・小船をたくさん仕立ててお迎えをしました。これに相応じて愛媛の住民もまた同様に、盛大なお迎えをしました。そして両国の住民たちは自国にフキアエズノ尊の船を迎えるべく、やかましく争いました。そこでタチカラウワタケノ尊ほか七柱の朝臣(あそみ)たちは言い争っている両国の船に飛び乗り、持っていた高玉を振りながら船中をスヰ スヰと言って駆け巡った、この秘言により争いは鎮まったと記録されています。

次にウエツフミ36巻に記載されている「カムコリのウズのマチコリ」という神授の秘法の中に出てくる秘言をご紹介します。

〜オクツカカ ヘツカカ ツルギカカ イキカカ タリカカ シナズカカ チモリカカ カモリカカ ムシヒレ ハチヒレ ヘミヒレ ケモノヒレ モノヒレ ヒヒ フフ ミミ ヨヨ イイ ムム ナナ ヤヤ ココ トト モモ チチ ヨヨ フルべ フルべ ユラベ ユラベ〜

と言う秘言です。フルベユラベときたら物部系十種の神宝と呪術廻戦を思い浮かべると思います。つまりニギハヤヒ系統の秘法だという事がわかります。この秘言は記紀には載っていませんが「旧事紀」にはミタマ祭の箇所にこれと似た秘言が記載されています。

いかがでしたか、古代の人々は本当に言霊の霊力を使うことが出来たのでしょうか。今回は27個あるうちの4つの秘言・宣言をご紹介させて頂きました。さらにご興味のある方はウエツフミの現代語訳も読んで見てくださいね。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

〜参考資料〜

吾郷清彦著書 古史精伝ウエツフミ原文併記全訳

吾郷清彦・鹿島曻著書「古史古伝体系」 

吾郷清彦著書「日本超古代秘史史料」「古事記以前の書」 

国立図書館コレクション「上記」 

吉村武彦著書「新版古代史の基礎知識」


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