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データは21世紀の石油の真実


はじめに

20世紀はじめのモータリゼーションの開始以来、石油が20世紀の世界の繁栄(と気候温暖化)に多大な寄与をしたことは間違いないと思います。
かつては石炭や石油や鉄鉱石や希少鉱物を押さえることが経済的に大きな意味を持っていました。
物質文明をまわす経済から関心経済、経験経済を支えるサイバー社会の到来とともに、データは21世紀の石油と言われるようになりました。
ビッグデータの最大の寵児はメタ(旧フェイスブック)でしょう。大学の同窓会ネットワークから出発し、どうやって儲けるのかわからないと言われていました。いいねボタンに押し方によって人の行動パターンを解析できることがわかり、嗜好に合わせた広告を出せる技術によって、世界最大の広告会社と言われるようになりました。
生成AIの登場によってビッグデータ時代にも変化が出てきたと思います。今日はデータ神話の終焉のお話をします。

データは21世紀の石油

データは21世紀の原油という言葉を聞いてから10年がたちました。最初に聞いたのは「世界ICTサミット2014」に登壇した日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 マーティン・イェッター氏の講演だったと思います。データは人、モノ、カネに続く第四の経営資源などと言われたものです。今週、楽天モバイルを買収して得られるコンビニ、通信、リアル、ネットのデータを融合して次の4つのデータを統合することが日本に巨大IT企業が生まれるという記事が出ました。その中に次のビッグデータが列挙されています:
(1)リアル購買関連のビッグデータ
(2)ネット購買関連のビッグデータ
(3)GPS関連のビッグデータ
(4)ポイント経済圏としてのユーザー基盤
データを如何に活用するかということがポイントです。データが21世紀の石油とは、21世紀に価値を生み出す天然資源がデータであるということを示しています。

データは21世紀の石油の限界

独占禁止法を越えて大規模なデータを集めるのは相当なハードルがあると思います。21世紀の石油として使うには次の2面性を乗り越える必要があります:

  • データの変化 変化がなければたくさん集めても意味がありません。

  • 経時変化の少なさ あまりにも変化が大きいと蓄積するにつれて前のデータの有効性が減じてしまいます

既に実現した?21世紀の石油

データが21世紀の石油といわれてから10年、もともとデータ集積をビジネスにつなげてきたAmazon, Alphabet (Google), Meta(旧Facebook)を除いてデータで成功したIT企業というのはそんなに多くありません。
一つの例外はOpenAI だと思います。世界中のデータを集積し、それを大規模言語モデルGPTとして実現し、巨大な生成AIビジネスの端緒を作りました。
21世紀の石油としてのデータを体現した例と言えます。逆にGPTは技術の民主化であり、そのデータの集積は、クラウドサービスとして世界中に安価に提供されています。
自分でデータを集積しなくてもGPTのような既存の大規模言語モデル、あるういはOSSのLlama2のような大規模言語モデルを使うことが21世紀の石油を使うことになると思います。

21世紀の石油はやがて人造石油に

GPT-4において人間が作るデータの1%を処理したともいわれています。まだ99%があるとはいえ、人間が作る高品質のデータには限界があります。GPTの後継のどこかでは生成AI自体が学習のためのデータを作るようになり、その時点で、21世紀は人造石油の時代、すなわち、世界から集めてくるのではなく、AIに作らせるものになるかもしれません。

おわりに

データは21世紀の石油という言葉が言われて10年、石油はすでに大規模言語モデルに進化していると感じています。これからは大規模言語モデルをどのように使いこなす時代になると思います。

参考文献

  • データ・ルネサンス―「21世紀の石油」で新しい価値を生む https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00045/ 2019年

  • データは精製されて価値を持つ、企業が「データ品質」をもっと重視すべき理由 https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/wp/b/21/09/17/01882/

  • 日本IBM マーティン・イェッター氏が語る、21世紀における“データ”という天然資源 https://www.sbbit.jp/article/cont1/28284  2014年

  • 楽天はもう食べごろ!喰らうは「KDDI・ローソン」か「伊藤忠・ファミマ」か…サイバー藤田の“漢気救済”はある? https://diamond.jp/articles/-/338899


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