人間の持つすべての一般常識をコンピューターに入力しようという野心的なプロジェクト「CYCプロジェクト」


人間なら誰でも知っているような知識をどのように表現すれば、コンピューターが処理しやすい形になるのか。そのための研究がこれまで様々行われてきました。

その中で人工知能の新たなアプローチとしてCyc (サイク)プロジェクト呼ばれるプロジェクトが始まりました。


これは、人間の持つすべての一般常識をコンピューターに入力し、データベース化することによって、人間と同等の推論システムを構築することを目的としています。

「Cyc」とはencyclopedia (百科事典)から由来しています。


1984年に米ベンチャー企業のダグラス・レナート氏によって始められましたが、人間の持つ常識はあまりにも膨大で、いくら書いても終わらず、30年以上たった現在も黙々と人手による入力作業が続けられています。

レナート氏はCycプロジェクトについてこのように述べています。


これまでの音声認識機能は人工知能のようにも感じますが、大量のデータから統計的に回答を導き出しているに過ぎません。また、Amazonは購入時にユーザーに本や映画などをオススメしてきますが、これはユーザーが「なぜこれを購入するのか?」といったことを理解してオススメを表示している訳ではありません。

これらのように、統計的なデータから答えを導き出すのではなく、一般常識などのデータベースから答えを「推論」するのがCycプロジェクトというわけです。

Cycプロジェクトは文章中の余白に何かしらの意味を見いだすなど、高度な推論が可能になることを目指しています。人同士の会話の中には特定の人物や物を、正式名称以外で呼んだりすることがあります。こういった会話は、通常の音声認識機能では完全に理解するのが難しいものです。

しかし、Cycプロジェクトで目指す推論機能が完成となれば、会話を人間的に理解したり、コンピューター的に理解したりも可能になる、レナート氏は述べています。


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