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イマここに生きる!オーガニックオーダー、暦のお話 〈秋分 初候「雷乃収声(カミナリ スナワチ コエヲ オサム)」>

2020年9月22日 二十四節氣 第十六番 秋分

2020年9月22~27日 七十二候 第46候 秋分 初候

「雷乃収声(カミナリ スナワチ コエヲ オサム)」


秋分は、秋の彼岸の中日、昼夜の長さがほぼ同じになる日です。

22時31分、太陽黄度は180度に。

二十四節氣を円グラフで表すなら、春分点のちょうど対極になります。

景色はというと、富士山に初雪が観測され、コスモスが咲き、彼岸花が咲き始める頃。空は晴れていれば秋らしく澄んで高く、うろこ雲が見えるような日もでてくる頃です。

七十二候の「雷乃収声」は、読んで字のごとく、“雷の音が鳴らなくなる頃”の意。雨は雨でも秋雨の淡々と降り続くような雨に変わってくるというところでしょうか。

もしかしたら夕立が無くなる頃という意味もあったのかもしれません。

今年はといえば、台風12号接近の影響で広く雨。

東側の経路で関東地方近域に上陸も予測され、緊張感が走ります。被害が出ないことを祈っています。


どんな日?秋分の日

先ほども触れましたが、春分点の真反対に位置するのがこの秋分点。

春分、秋分とも太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになります。

概ね9月23日がこの日にあたりますが、今年のように閏年となると9月22日にずれることになります。

春分、秋分と言えば「お彼岸」。

彼岸は仏教の行事ですが、日本独自の行事なのだそうです。

小さな頃は、祖母や母が作ってくれるお萩(ぼたもち)が美味しくて、年に二回もあって嬉しいと思っていました。気持ちの良い季節に家族や親族と集ってお墓参りに行って、普段会えない人達と団らんの時間があり、わたしにとっては楽しい思い出が多い頃です。

当時は何も考えず、ただただ楽しかったけれど、振り返れば周囲の人たちの努力と心遣いでその時間は作られ、守られていたのだなと思います。一生を支えるような美しい思い出をもらえたことに感謝があふれます。

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なぜこの日にお墓参り?

一説によると、極楽浄土があるという真西に太陽が沈むことから、

亡くなった人をしのぶ日とされたとか。

春分・秋分の3日前から7日間を、それぞれ春の彼岸、秋の彼岸とします。

春分・秋分は「彼岸の中日」といいます。

9月もしばらくして、真っ紅な曼殊沙華が咲くと「ああ、お彼岸なんだなあ」としみじみ。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、この日を境に真冬・真夏の厳しさが終わり、次の季節への移ろいが感じやすくなると言われています。

『なんだか暑さが続くなあ』と思っていた先日朝、突如、庭先に紅いものが見え、驚いて近寄ると曼殊沙華が咲いていていました。

まだ夏のような気持ちでいたので驚きましたが、その日から暑さが和らぎ始め、あっという間に肌寒いような時間が出てきて、気温が下がると同時に次々とあちこちで紅の曼殊沙華をみかけるようになりました。

空の色も海や山の色も変わり、自然の舞台がシーン替えしていくようです。



季節の花、ヒガンバナ

季節の花と言えば、その名を冠するヒガンバナ。別名が曼殊沙華です。

真紅の色、彼岸という特別な時期に咲くこと、特殊な形状等から、独特の雰囲気を醸しますね。群生する特性があることも関係あるのかもしれませんね。

シニア世代なら、伝説のアイドル山口百恵さんの唄を思い出すかもしれません。作詞➢阿木耀子さん・作曲➢宇崎竜童さんという昭和の歌謡曲ヒットメーカーからの一曲、インパクト大です。

他にも、その独特な雰囲気や、まつわる言い伝えから、「曼殊沙華」や「ヒガンバナ」をタイトルにした唄は多く作られています。

標準和名は『ヒガンバナ』。
ヒガンバナ科ヒガンバナ属です。

多年草で球根があります。

学名 はLycoris radiata リコリス・ラジアータ。

<※1.ハーブのリコリスとは違います。ハーブのほうは甘草の仲間で、スペルも違います。ハーブのリコリス(甘草)は『liquorice』です。絶対にお間違えなきようお気をつけください。欄外に捕捉します。

※2.APG体系による分類。クロンキスト体系ではユリ科。一般的に日本でみかける分類ではヒガンバナ科の分類のようです>


地下の鱗茎(球根)に強い毒性がある有毒植物ですが、かつて救荒作物として鱗茎のデンプンを毒抜きして食べられていたこともあるとか。

ノビルに似ていると言われますが、アルカロイド系のかなり強力な毒があり、畑を荒らすような害獣も、掘り起こしても食べないそうです。
それを調理して食べていたとは、驚嘆しました。

秋の終わりに葉が伸びて夏に枯れるという、多年草としては珍しい性質を持っています。

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どんな植物なの?~季節と毒のこと~

ヒガンバナは、花全体にリコリンやガラタミンなど約20種(!)の有毒アルカロイドをもっています。

毒は特に球根に多く含まれ、毒抜きせずに食すと30分以内に激しい下痢や嘔吐に見舞われ、ひどい場合は呼吸不全や痙攣、中枢神経麻痺といった深刻な症状を引き起こします。

同じ時期に咲いているダチュラ(チョウセンアサガオ、エンジェルスラッパ)も有毒で、トロパンアルカロイドを含みます。江戸時代、華岡清州がこの植物由来で全身麻酔に成功しました。正しく役立てられるのなら良いですが、残念ながら誤って食し、食中毒を起こしたという恐ろしい事実も過去に散見されました。

ヒガンバナがお墓の付近や田畑の畔によく見かけるのは偶然ではなく、毒を利用して地中の動物から大切なものを守るという風習からのようです。
そこから自生していったものもあるのでしょうね。

鎌倉時代や戦時中には、作物を守るだけではなく、なんと救荒作物として利用されていました。

たまねぎのような形をした球根には、デンプンが豊富に含まれています。

有毒植物なので年貢の対象外とされていたことから、食料が手に入らないときや深刻な米不足が起こったときには、イモと並ぶ貴重なエネルギー源とされていたそうです。

昭和初期には、ヒガンバナからデンプンを製造する企業もあったとか…。

しかし、伝わっている毒抜き法をちょっと見ただけでも一週間以上手間をかけてやっと食べられるかどうかというものでした。きれいなお水もたくさん必要です。

毒性が強いため、正しく毒抜きができていないと嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。そもそも触れただけでかぶれる可能性があります。

特に切り口から出る汁には注意が必要で、こちらにも毒性が。綺麗でも摘んでは危ないようですね。

毒抜きしての食用は、通常は行わないほうが賢明と言えるようです。

また、

これも一般の人はトライしないで頂きたいのですが、正しい知識のもとでは精製されたヒガンバナの球根は、「石蒜(セキサン)」や「ヒガンバナ根」の名で漢方薬として利用されることがあります。

消炎作用や利尿作用があり、茎を刻んで搾取した汁で患部を流すとよいとされているほか、根をすりつぶしたものを張り薬にすると、むくみやあかぎれ、関節痛を改善する効果が期待されるのだそうです。

くれぐれも一般の方はトライしないでくださいね。


『曼殊沙華』の由来~歴史の旅~

曼珠沙華(マンジュシャゲ)はヒガンバナの別名です。

由来の定説は法華経からというものです。

サンスクリット語 manjusaka の音写であり、『法華経』などの仏典に由来するとのこと。

梵語(サンスクリット語)で「赤い花」、「葉に先立って赤花を咲かせる」という意味から名づけられたといわれているそうです。

(『法華経』(ほけきょう、ほっけきょう)は、大乗仏教の代表的な経典。大乗仏教の初期に成立した経典であり、誰もが平等に成仏できるという仏教思想の原点が説かれていると言われます。成立年代は不詳ですが、日本に伝来したのは、日本書紀に記録があることから聖徳太子の時代と言われています。現存する原本はサンスクリット語原典,チベット語訳および漢訳3種。)

法華経序品では、釈迦が法華経を説かれた際に、これを祝して天から降った花(四華)のひとつが曼珠沙華であり、花姿は不明ですが「赤団華」の漢訳などから、色は赤と想定されています。

従って四華の曼陀羅華と同様に、法華経で曼珠沙華は天上の花という意味もあるのだそうです。(諸説あり)

とても氣になるこのルーツ。また別の機会に触れられたらと思います。

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学名のこと~西洋では~

学名の属名 Lycoris(リコリス)は、ギリシャ神話の女神・海の精であるネレイドの一人リコリス(Lycorias)からとられました。

種小名 radiata (ラジアータ)は「放射状」の意味で、花が完全に開いたときに放射状に大きく広がっている様子に因むそうです。

英語では、レッドスパイダーリリー(Red spider lily)、スパイダーリリー(Spider lily)など。

…蜘蛛?ですかね…。東洋のイメージとは違って、文化は興味深いなと思います。


この時期の養生

台風接近中でもなく、秋雨で長雨でもないというとき、通常は真夏の湿度が収まり、気温が下がり、寒さと乾燥の季節に変わっていきます。

東洋的観念の世界観を観るなら、秋は、春に蒔かれ、夏に育ったものが実る時期。

良いものなら楽しみですが、悪いものを摘み取っていなければ当然こちらも実ってしまいます。お庭の雑草を抜かなければ、秋にはその草の実がなるのと同じです。自然界に『善悪』はありません。そのメガネは人間のもの。ですから見極めるのも人間です。

春夏でしていた無理があれば、それが表れ始めるのがこの時期。

始めは症状もわずかであることが多いので、しっかりと点検、内省し、表れたものが小さなうちに癒すようにするのが養生のコツです。

『このくらい』『まあそのうち』はしないほうが良いでしょう。

もしこれを放っておくなら、真冬の厳しい季節に、もっと大きな問題を作ることになりかねません。自分の大切なからだや環境、何かを悪者にしないよう、季節の変わり目ごとにチェックしていくと最適なケアにつながりやすいですよ。


秋は○○を癒す

漢方では、秋は『燥』に注意するように言われます。

対応する部位は『肺』『大腸』。

西洋医学の肺は臓器の名称ですが、東洋は観念➢つまりイメージで観ていきます。臓器の名称はそれぞれ、それを含めた“エリア”や“司るもの”で観ていきます。

夏の暑さに馴染んだ心身、気温や湿度の変化に注意深く気をつけなければ、気付かないうちに思いのほか冷えてしまいます。冷えは乾燥を呼びます。

気持ちの面では感傷的になる季節と言われたりもしますが、あながちただの言い伝えとも言えないかもしれません。

もし何とはなしに心に寒さを感じたら、ゆっくり温かくしてお休みして良いサインと思っても良いのですよ。

ハーブのほうのリコリスには、たんを切る作用や抗アレルギー、咳止めなどの作用があると古くから言われています。
咳、のどの痛みを沈静化させたり、気管支系や消化器系の改善に用いられているほか、身体の抵抗力を高める作用も期待されています。

心身に冷えを感じたら、外は良いお天気、目には温かそうでも、そっと1枚羽織って、リコリスのお茶を飲んでゆっくりするのも良さそうですね。

秋『燥』の次は、冬『寒』。今からどちらもケアしてあげたいところですね♥


彼岸の入りは気持ちを切り替えるのにちょうど良い時。

意識的に気持ちを切り替え、体感するより前にケアを心がけて良い養生をしていきましょう。


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※1.ハーブのリコリスについて

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ハーブのリコリス(Liquorice)とはスペインカンゾウ(マメ科・カンゾウ属)という多年草の植物で、漢方でもおなじみの甘草の仲間です。

今回、本文で触れたヒガンバナ(彼岸花・曼殊沙華)とは別のものですから絶対に混同しないよう気をつけてください。


ちなみにハーブのリコリスはわたしも好きで、様々なお料理で助けてもらっています。せっかくなのでこちらも少し書いておきたいと思います。こちらで使う“リコリス”は全てハーブの甘草・リコリスを指すことととします。

分類

リコリス(Liquorice)…スペインカンゾウ(マメ科・カンゾウ属)という多年草の植物

学名を glycyrrhiza glabra(グリチルリチン グラブラ)

草丈は約1mになり、初夏に薄紫色の美しい花を付けます。 

その意味はsweet root、「甘い根」。

この根から抽出したエキスを様々な形に加工します。

イタリアはカラブリア州(ブーツの先のあたり)産のものが最高級品とされているそうです。


主な成分

リコリスの根にはグリチルリチンやフラボノイド(イソフラボノイド)という成分が含まれており、それらは強い抗酸化作用や甘味を含有しています。消化、あるいは喉にも良いということで、キャンディーやグミ、ドリンクなどに形を変えて古くよりヨーロッパや北米では子供からお年寄りまで幅広く愛されているハーブです。
根から抽出されたエキスは、ほのかな森の香りと強い甘み、そして独特な風味を持ちます。

リコリスの特徴はショ糖の50倍もあると言われている甘味成分のグリチルリチンにあります。砂糖より低カロリーということでも話題になったことがありますね。

 グリチルリチンはアニスやフェンネルなど多くのハーブにも含有されている成分のアネトールと似た風味を持つことから、 これにアニスの風味を付けたキャンディーも数多く作られており、大変人気があります。
ちなみに関連商品は化学添加物を一切使用していないにもかかわらず、賞味期限が長いのも特徴なのだそうです。(3年、5年等)


歴史

リコリスの歴史はとても古く、アレクサンダーやカエサルなどのエジプトのファラオ時代から利用されていたという驚くべき記録が残っており、当時は食べるよりも、喉の渇きをいやすために飲まれることが多かったそうです。
南アジアを起源に持つこのハーブは、中東を通り、南ヨーロッパやイギリスへと伝播しました。
イギリスでは、ヨークシャー州東部にあったPontefractという街の男子修道院で初めて栽培されたという記録が残っています。それは利尿作用によるところが大きかったそう。今日ではヨーロッパ各地でそれぞれ特徴をもった商品となって親しまれています。

古くは女性しか加工工程に女性しか携われないということもあったようです。

*妊娠・授乳中の方、高血圧の方は摂取量は注意が必要です。何かに作用するということは、良いことも望まないことも起こりえるものです。薬草は薬効があれば全て禁忌があると捉えたほうが良く、それは悪いことではなく知っていれば良いことです。それぞれに良く知りながら、上手に恵みを取り入れていきたいものですね。

(リコリツィアブル様のホームページを参考にさせて頂きました。https://liquiriziable.jp/?mode=f1)



 





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『透明な栄養』をテーマに有形無形の造形活動をしています。ホリスティック~全体観~という捉え方を活動の基盤にしています。この捉え方は、いのちの息苦しさが紐解かれたり、改善される可能性をかんじます。noteでは日々の思考研究も兼ねて、この考えをもとに書いたものをシェアしています。