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意味はない。

2019年、二月二十四日のブログより(一部)。

 少し前は狂ったように本を読んでいたが、最近は落ち着いてきた。しかし、まったく本を読まないでいることは出来ないのが活字中毒である。
 こういう時に必ず取り出すのが、東海林さだおの丸かじりシリーズ。もう、何度読んだか判らないほどだ。それでも飽きない。丸かじりシリーズではないのだが、所有する東海林さだお氏の文庫の中に『ヘンな事ばかり考える男 ヘンな事は考えない女』というのがある。これも何度か読んでいるが、その中に凄い文章がある。『人間は哀れである』という文章だ。
 長くなるが、一部を引用する。
「仄聞するところによれば、あらゆる生命体は、種を次の世代につないでいくための単なるヴィークル(乗り物)だというではないか。
 ということは、個の事情、個の言い分、個の幸、不幸には意味がないということになる。
 ライオン君、意味がないんだよ、キミ個人には。
 そうやって、たてがみを風になびかせているけれど、ときどき血みどろになって獲物をつかまえて食いちぎったりしてるけれど、みーんな意味がないんだよ。
 君に要求されているのは、一定期間、息をし続けていてくれることだけなんだよ。
 君に不幸があろうがなかろうが、苦しみがあろうがなかろうが、一切、関係ないんだよ。
 一定期間、息をし続けてくれたあとは、意味なく死んでくれていい。
 きょう一日あったこと、意味がないんだよ。
 若いころ、とても辛いことがあったこと、意味がないんだよ。
 これから先、いろんなことがあるだろうが、意味がないんだよ。
 唯一、意味があることは、ときどき腰をヘコヘコさせることだ。
 だが、腰をヘコヘコさせて、君の種を次代につなぐものを出してもらわないと困る。
 一生のうちに何回か、これだけはやらないとまずいことになる。
 いま地球上のあらゆるところで、動物たちがヘコヘコしているにちがいない。
 なんという哀れなことだ」

 なんという透徹した哲学であろう。これを読んで生きる気力が湧いてきた。
 変ですか?

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