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トップガン — マーベリックの思い出

最近『トップガン』の続編、『マーヴェリック』が公開されて話題であるが、その一本目の『トップガン』は私が高校の時に、それこそ超超超大ブームになった映画であった。

クラスメイトで特に男では見てないやつはいなかったし、家族もみんな見た。
そしてそれから何度もテレビで放送されては見た、そんな大人気の映画だった。

確か高校2年生だったと思う。
ある時、クラスメイトのYが言った。

「これから俺のことは『マーベリック』と呼んでくれ。俺、似てるやろ?」

ま・・・まぁな、ちょっと濃い目の顔してるしな・・・と『みんなでこのノリに乗っておくか』という感じで、それからしばらくそいつのことを『マーベリック(なんでやねん)』と呼んだ。

さてそれから数年が経ち、大学を出て社会人になった。

夜、飲み会に向かうために大阪梅田の商店街を歩いていると、飲みに行く人波と呼び込みの人たちでまっすぐ歩けないぐらいだった。

そして、その呼び込みの一人の中に、なんとそのYを見つけたのだ。
私は他の記憶力はおいておいても、人の顔は忘れない自信がある。
間違いない。

私は喜びで興奮し、人込みでYに向かって叫んだ。

「おい、マーベリック!マーベリックやないか!!」

Yは『えっ?』という顔で戸惑っている。

「俺や俺!高校の時のクラスメイトや、覚えてるやろ?マーベリック!」

ますます嫌そうな顔をするY。
あれ?間違えたかな、とも思ったが、いや私の顔に対する記憶力は間違いない。自信満々である。

「マーベリック、ここの飲み屋で働いてんの?後で行くかもしれんからビラちょうだいよ」

お、おぉ・・・と小さな声と共にビラを1枚渡してくれた。

そしてYは、特に何も挨拶も反応もないまま、お店に戻って行った・・・

私はその時思った。
Yはきっと人の顔とか忘れやすいんだろう。また次会ったら話しかけて飲みに行こうと誘おう。きっと思い出してくれるに違いない・・・

それから30年ぐらい経ち、今この記憶を思い出して気づいた。

きっと人前で『マーベリック』と呼ばれたことが恥ずかしかったのだろう。
若気の至りを社会人になっていじられているような形になってしまった。

謝りたい!謝りたいぞ、Yよ!
今どこで何してるんだ、マーベリック!


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