生きることを選んだので分籍をした話。
人というのはつくづく良く出来ていて、
特に記憶に関しては美化し続けてしまう。
誰だって苦しく生きるのは嫌なのだから、当然なのかもしれないけれど
ふと思い出す記憶たちはいつだって柔らかく温かい。
美化されてしまった。
私自身がそうせざる負えないと判断を下したのだろう。
街中の音、耳に流れ込んでくる音楽、微かに漂うタバコの香り、色、靴、声、風景、髪の毛を揺らして歩く女性、
全てが私の記憶を底から掬い上げる。
あれほど痛く苦しかった言葉や仕草を私は幾度となく見てきて、それでも思い