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レバノン式モロヘイヤスープの構造

以前の記事でムルキーヤ(モロヘイヤスープ)について触れたが、エジプト式しか紹介できなかったので、今回はレバノン式について。

レバノン式はエジプトと大きく違い、スープ自体にまずネバネバ感がない。モロヘイヤの葉っぱも刻むのではなくほぼそのまま使う。また、鶏肉をほぼ必ず使うという点でも違う(エジプト式も使うが必須ではなさそう)。
個人的にはエジプト式のモロヘイヤスープよりも親しみやすい味なのではないかと思う。

料理の流れ

エジプト式とほぼ同じで、料理は以下3つの要素で構成されている。
・チキンスープ&チキン(スープ作成時に付随)
・モロヘイヤ
・パクチーとガーリック

チキンスープやモロヘイヤをどう仕込むかはいったん後述するとして、これらの要素をどういう流れで調理するかを押さえておくとのちのちイメージがつきやすい。

<パクチー・ガーリック一緒に煮込みパターン>
1.パクチーとガーリックを炒める
2.同じ鍋にモロヘイヤを加えて炒める
3.チキンスープのスープ部分だけを入れる
4.煮込む
5.チキンを乗せる
6.混ぜてちょっとだけ煮込んだら完成
<パクチー・ガーリック後乗せパターン>
1.モロヘイヤを炒める
2.チキンスープのスープ部分だけを入れる
3.煮込む
4.チキンを乗せる
5.別鍋で炒めたパクチーとガーリックを乗せる
6.混ぜてちょっとだけ煮る
7.完成

どっちのほうがよいか?に関しては不明だが、レシピをいろいろ見たところ前者の「一緒に煮込み」パターンが多いように思う。
ただ、パクチーの香りは強く加熱すると弱まってしまいもったいないので、後乗せのほうがパクチー感を楽しむうえではいいのでは?と考えている。これは好みの問題だが、私は後者で作ってみた。

料理の構成要素:チキンスープ&チキン

チキンスープに関してはこだわりだすときりがない、というのは前回のモロヘイヤスープの記事でも書いた通りで、丸鶏を香味野菜とスパイスと一緒に煮込んだりするとよい出汁がとれる。

ただ、そこまでするのも無理がある。かといってチキンブイヨンを溶かして終わり、というのももったいないし、どっちみち鶏肉(むね肉または骨付き肉がよい)を調理する必要があるのでせっかくならそれで出汁をとりたい。

そこでここは全然関係ないのだが南インド料理のイナダシュンスケ師匠の「鶏むね肉を使った出汁の取り方」をアレンジして以下のような出汁の取り方をしてみた。結果的にこれだけでもスープらしくなったように思う。

<材料>
・鶏むね肉 300g
 ※皮は外すべきかどうかは好みの問題で、私は少し油っ気も欲しかったので皮をつけたまま調理
・水 600ml(むね肉の倍 ※上記レシピそのまま)
・塩 6g(水の1% ※上記レシピそのまま)
・お好みのホールスパイスを適当に入れる
 →家にあったローリエ、ブラックペッパー、カルダモン、クローブなどを入れてみた。ほかにはシナモンやコリアンダーシードなども入れてもいいかもしれない。いずれも1~2個程度であれば味のバランスが大きく崩れることはなさそう。
  最低限ローリエはあったほうがよい気がする。
<作り方>
1.鍋に水(常温)、鶏むね肉、ホールスパイスを入れて加熱
2.沸騰してきたら弱火で1分ほど煮る(スパイスの香りを出すため&鶏肉の安全性を増すために少し元レシピより長めに煮た)
3.煮ているとアクが出てくるのですくいとる。この際にうっかりスパイスもすくいとらないよう注意(最初からティーバッグに入れておくと楽)
4.火を止めて蓋をして30分以上放置、余熱で火を通す

料理の構成要素:モロヘイヤ

モロヘイヤは葉っぱ部分だけをちぎって、水でよく洗ってから使用する。野菜のコンディションにもよるが土や細かいゴミがついていたりする。お米をザルとボウルでとぐ時のように、ザルに葉っぱを入れて水で洗う。

そしてここでの洗い方が特殊なのだが、ザルに入れて水で洗ったあと、ザルに葉っぱを押し付けるようにして絞る工程がある。そうすると少しモロヘイヤの粘り気が出てくるが、これも含めて水で洗い、一度水を捨ててまた新しく水を足して洗う。こうすることでスープ全体がねばねばにならなくなる。

この工程をやると絞ったあとの水が少し緑色&ねばねばになる。どこまで葉っぱを絞るべきか?というのは結構難しい問題で、延々と絞っているとそれはそれでうまみや栄養が出てしまっているような気がする(※気がする、であって実際のところはわからないが)。
個人的には3~5回ぐらいギュッと絞ったらあとは使ってもいいのではないかと考えている。

料理の構成要素:パクチーとガーリック

パクチーとガーリックについては単に刻んで炒めるだけなので特に難しいことがない。しいていえば炒めるか時間がレシピによりまちまちで、1~5分ほど。短いほうがパクチーのフレッシュな香りを楽しめるようにも思う。パクチーは葉っぱ部分だけを使うがもったいないので茎も使ってもよいと思う。

オリーブオイルなどで炒めてもよいし、コクを足したい場合はバターを使ってにんにく・パクチーを炒めるとよい。お好みでさらにコリアンダーパウダーなどスパイス類を足してもよい。

結論としてのレシピ

上記3要素をまとめた結果としてのレシピは以下となる。

<材料一覧>
(チキンスープ部分に使用)
・鶏むね肉 300g
・水 600ml
・塩 6g
・お好みのホールスパイス
(モロヘイヤ)
・モロヘイヤ 100g ※葉っぱ部分だけちぎると約半分の重量になる
(パクチーとガーリック)
・バター 10~20g(または近い量のオイル)
・パクチー 1束 ※大きめの粗みじん切りぐらい、茎も入れてもよい
・にんにく 1かけ ※みじん切りにする
<料理の手順>
1.チキンスープを先ほどの手順で作る
2.モロヘイヤを先ほどの手順で水で洗う
3.フライパンに油を引き、モロヘイヤを炒める
4.炒めているうちに多少ねばねばや水分が出てくるが、それらが飛ぶまで中火で炒める(3分ほど)
5.炒まったな、と思ったらチキンスープのスープ部分を400mlほど入れる
6.弱火で5~30分ほど蓋をして煮込む ※煮込み時間はレシピによって差が大きく、モロヘイヤをどの程度ドロドロにしたいかによる
7.煮込んでいるあいだに、チキンスープを作ったときにできたゆでたむね肉を手で割いておく ※皮は使わない
8.煮込み時間が終わったらむね肉を100gほど入れてもう5分煮込む
 ※現地のレシピではこのタイミングでレモン汁やコリアンダーパウダーを入れることもある
9.煮込んでいる間に、別のフライパンでバターを溶かしてパクチーとにんにくを炒める
10.煮込み時間が終わったらパクチー&にんにく&バターをスープに混ぜる
11.完成!

こうやって書くとけっこう面倒そうだが実際ちょっと面倒ではある。チキンスープの鍋、モロヘイヤを炒めるフライパン、パクチーを炒めるフライパンと3つ使うことになるので。

その分できあがったスープはちゃんと美味しい。モロヘイヤやパクチー、ガーリックの香りが渾然一体となって滋味深い味わいを醸し出してしつつ、粘り気もないのでそこまでクセが強くない形で食べられる。むね肉も一緒に入っているので食べてみると意外とボリュームのある一品だ。

参考文献・サイト

https://www.arabfoodsweets.com/post/2018/08/08
数少ない日本語で書かれたレバノン式モロヘイヤスープについての記事。以下ほぼすべて英語。

https://feelgoodfoodie.net/recipe/molokhia/
各段階での写真が撮影されており、一番わかりやすいレシピ。

https://simplyleb.com/recipe/molokhia-with-roz/
同じく写真多めでわかりやすい。文章も丁寧に解説してある。

https://www.youtube.com/watch?v=muqzM9jJjL4
今回紹介した流れ(パクチー&ガーリック後乗せ)に一番近く、流れがわかりやすい動画。

https://www.youtube.com/watch?v=a6BFCJ3tKJE
モロヘイヤを水で洗うプロセスが0:46~あたりから載っている動画。かなり時間をかけて洗っている。

https://www.youtube.com/watch?v=JKBiJ_U0__c
再生回数が多いのでそれなりに人気のあるレシピと思われるがアラビア語しかないので内容がわからない。雰囲気をつかむために見る。

https://www.youtube.com/watch?v=kZRh1T9UnVk
同じくアラビア語しかない。

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