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なぜ消費税を廃止すべきではないのかについて考えてみる。

おはようございます。アヒルです。今朝ツイッターをだらだら見ていたら、こんなワードがトレンド入りしていました「消費税廃止」です。今回はこれに関連して、なぜ消費税を廃止すべきではないと考えるのか、税の専門家でも何でもない人間の立場から考えてみようと思います。あくまで雑感ですので、間違いがあったらいつでも指摘ください。

日本人は消費税に対する忌避感が異常なほど強いです。これまで消費税引き上げに取り組もうとした政権は、いずれも国民からの反発を食い、次の選挙で大敗し、政権交代するというパターンを繰り返してきました。消費税の引き上げは、政治家にとってはまさに悪夢。触れたくない話題です。

それにも関わらず、消費税は今後も、長期的にみれば上がり続けることが見込まれます。それは簡単に言えば、消費税は税の仕組みとして非常に優れている税だからです。もっと言うと、新自由主義的税制改革の理念に沿い、経済活動をゆがめないフェアな税制で、かつ安定して多額の歳入を生み出すことができるからです。現在世界中のほとんどの国で消費税は貴重な歳入として扱われており、「世界のトレンド」という観点で見るならば、消費税の廃止は真っ向から世界のトレンドに反することになります。

元々税の世界の原則として「中立、公平、簡素」が挙げられます。消費税のもっともすぐれた点は、中立性です。「中立」という言葉の意味はせいぜい、「どんな経済活動を選ぶかに関わらず、税負担は同じ」くらいの意味にとらえておいてください。この点から見たときに消費税は、小売価格×消費税率を国民が実質的に負担することになるので、企業の経済活動をゆがめません。このため、経済活動に悪影響を及ぼすことなく、しかも「消費」はいかなる時でも行われるので、所得税等と違って、経済がうまく回っていないときでも安定して多額の歳入をもたらすことができます。これが財務省や、(気乗りしない)政治家が国民にとって不人気であることを知りながら消費税に頼らざるを得ない理由です。

なぜ消費税が不人気であるかと考えたときに理由は二つあると考えられます。一つは新聞でかつてさんざん指摘された「逆進性」で、所得の低い人ほど、(所得の高い人に比べて)相対的に税負担が重いと感じられることです。(所得が少ない中でも食い物などは買わないといけないので)所得の低い人ほど所得に占める消費の割合が大きく、結果として消費税の負担割合が大きくなるというものです。したがって、消費税は弱者にキツい税だということです。これを考慮してか、日本を含めた欧州各国では軽減税率が導入されています。一定の生活必需品の消費税率を下げるというもので、日本では食料品と新聞だけですが、欧州では、もっと様々なもの、新聞とか劇場の入館料とかにも適用されています。

もう一つの理由は、消費税の負担は国民の目に見えることです。税負担を考えたときに、国民の目に見える税とそうでない税で負担「感」が変わってきます。消費税の場合は、消費のたびに負担が重くなっているのが実感できるので、その分国民からすると負担が重くなったように感じます。比較するとよくわかるのが、社会保険料です。実は社会保険料もここ数年上がりまくっているのですが、消費税と違い国民の反発を招くことはあまりありません。理由は簡単で、源泉徴収でこっそり抜かれているからです。目に見えて負担があるやなしやで国民の税に関する忌避感、嫌悪感は変わってきます。

さて、かような欠点があるもののの、中立性と歳入を集める力の優れた消費税ですが、これを廃止しよう、もしくは減税しようと主張される方には、おおむね二点の主張があるようです。①コロナ禍で消費税率の引き下げは各国で行われており、国際的なトレンドである。②消費税を廃止しても、法人税率を上げればよいという理屈です。

①について考えてみたいのですが、指摘のとおり、コロナ禍で消費税率の引き下げを行っている各国はいます。ただ諸外国と日本では財政状況などが全く異なり、簡単に比較することができません。まず一つは、日本の財政状況があまりに真っ赤すぎることです。日本がこれだけの借金を積み重ねているにも関わらず日本の財政に対する信認が保たれているのは、日本が財政再建に向けた取り組みを行っているからです。消費税の廃止は、この国際的な見方に反し、日本の財政に対する信頼が一気に低下するでしょう。事実、IMFは消費税率の引き上げを少し前ですが、日本に勧告しています。いかにコロナの状況下といえど、国際社会からの日本の財政に対する信認を崩すのは賢明とは言えません。国債は(当たり前ですが)返してもらえるから買ってくれるのです。万が一日本がデフォルト(債務不履行)するかもと思われてしまえば、日本の経済は破綻します。そのリスクを背負うべきでしょうか?

また、諸外国の消費税率を見てみた際には、消費税率に対する反感(痛税感)が日本ほど強くないことが挙げられます。日本の消費税率10パーセントは、欧州の20パーセント前後の消費税率と比べると決して高くありません。にも拘わらず、国民目線から見たときに、消費税に対する反感は強いことが指摘されています。

加えて、日本と異なり、例えばイギリスでは、消費税率は省令(議会の承認が不必要な法律の下位規範)で定められています。これらが意味することは、日本と異なり、これらの国々は、消費税率をいったん下げたとしてもまた上げられるのです。これに対して日本は、消費税率を引き下げてしまえば、再び上げること、まして廃止した場合に導入するにはすさまじい政治的コストが必要でしょう。後戻りができないという点で、状況が大きく異なります。

最後に消費税の代わりに法人税を上げればいいという考え方がありますが、この考え方はかなり本末転倒です。法人、法人とまるで悪者のように言いますが、法人は結局のところ実在する人間で構成される企業です。彼らの経営を圧迫するように法人税を上げれば、当然その負担は、そこに所属する会社員や、彼らが作り出す製品を購入する消費者に行くでしょう。「法人の負担が増す」ことと「国民の負担が増す」ことはイコールです。両者は別々のものではありません。加えて、国民もそうですが、法人の場合は税負担が増した場合には税負担の低い他の国に逃げて行ってしまいます。これから日本国に海外法人を呼び込んで経済を活発化させようとしているのに、法人税を引き上げて法人を逃がすという考え方は繰り返しになりますが本末転倒です。

消費税廃止という考え方は、一見すると魅力的に見えますが、はっきり言えばポピュリズム政策のように感じます。コロナで苦しむ国民も多い中、様々な選択肢があると思いますが、消費税の廃止は選択肢にすべきではないように感じます。アヒルの雑感でした。



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