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俺の地下ドルへの偏見をとっぱらってくれたDEMON FACTOR


1.はじめに

DEMON FACTOR (以下DF)とは札幌で活動しているアイドルグループで、幾度となるメンバーチェンジを経て2022年で活動3年を迎えた。
母体はメイドカフェあみゅーるで、メンバーはそこで働いているメイドである。
自分が初めて見たのは2020年の春頃で、最初の感想は「え、地下ドルの楽曲なのにこんなにかっこいいの!?」という、それまで抱いていた地下ドルへの偏見を見事に取っ払ってくれた。

2.現メンバー

結成から現在まで幾度とメンバーチェンジを繰り返し、一時期は結成時からのメンバーであるなむ一人となっていたが、2022年の春に新メンバーとしてじゅりと浅葱が、そして10月にシャルが加入し、現在この四人となっている。

①じゅり

Twitter: @Juri_demon
Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )
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(Twitter: @professor_pip2 )

ダントツの顔の良さで「次DFに加わるとしたらじゅりだろうなあ」と自分を含むオタク達から予想はされていたが、加入前に行われたカラオケ大会で歌声を聞いた限り、緊張のせいもあるだろうが、ぶっちゃけ歌はそれほど上手いとは思えなかった。だから加入発表の時は「やっぱりな」という思いと「歌大丈夫かよ」という思いが交差して複雑な気分になった。
そして迎えた新生DFのお披露目ライブ。ステージにいるじゅりを見て「じゅりすっげえ歌上手くなってるやん!」とビックリした。と同時に、じゅりが超のつく生真面目で愚直なくらい真っ直ぐで負けず嫌いで完璧主義ということを思い出した。その性格ゆえ「ここまで上手くなるにはDFのレッスンに加え半端ない量の自己練したんだろうな」とすぐに想像できた。
顔の良さに加え愛想も良いし、初見さんを引っ張りこむ力が一番あるであろう、可能性の塊じゅり。

②浅葱

Twitter: @asagi_demon
Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )
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顔も良いし長身でスタイルも良い、ステージでは曲の世界にどっぷり浸かって見る者を引き込んでしまう、才色兼備の浅葱。とはいえ浅葱の歌声は聞いたことが無かったのでどんなものか未知数ではあったが、いざ聞いてみると低音が安定していて、なむとじゅりには無い声の良さがある。また先に挙げた曲毎に異なる表情の魅力に加え、長身というスタイルの良さからステージでの動作が映えること。
三人時代のDFのアー写を見てみると、

三人時代のDFアー写

浅葱一人だけカメラに顔を向けず横を向いている。改めていろんなアイドルのアー写も見てみたが、顔を売ってなんぼのアイドルのアー写でこれをやっているのって実はあまりいないと思われ、むしろバンド系がよく一人だけカメラ目線をしないパターンを使用しているのが多い。
アー写の浅葱を見て「これよこれ!DFにこういう要素が欲しかったんだよ!」と一人勝手にテンションが上がったものだ。
しかしいったん口を開けば、笑えるくらい見事なポンコツっぷりを見せてくれ、良い意味でのギャップも備えているのが浅葱である。

③シャル

@shall_demon
Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )
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現メンバーの中で一番最後に加入したシャル。
今だから書くが、なむBDライブで新メンバーお披露目するとのお知らせが発表された時点から、周囲では「新メンはシャルでしょ」と噂されており、発表の場では正直そんなに驚きは無かった。むしろ、「この三人に囲まれてシャルはどうやって自分の個性を打ち出していくのか?」とDFの中におけるポジションに対しての期待と不安を持っていた。
そして迎えた なむBDライブでは新曲の『Restart』が初披露されたが、そこでのシャルは高音を生かしつつも甘い感じの声で歌っており、他の三人との違いをすぐに見せつけられ、ほう、と驚いた。
また、その後もライブを重ねるにつれ、長身を生かした振りがステージでとてもよく映えるようになり、今までのDFに無かったダイナミックさがシャルのおかげで加わった。
伸びしろがいちばんあるであろう、今後が楽しみなシャル。

④なむ

Twitter: @namu_demon
Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )
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(Twitter: @professor_pip2 )

今や唯一のDF結成からの初期メンバー。
今年の春先、最後に一人残ってたなむがもし途中でもう無理と白旗を挙げていれば、その時点でDFの楽曲は歌われることもなく埋もれてしまってたし、今のじゅりと浅葱とシャルもメンバーとして加わることもなかったわけで、もはやDF=なむと言っても過言ではない。
だけど今のDFでは過去の経験値から三人を従えるという感じではなく、三人にステージで伸び伸びとしてもらうよう敢えて一歩引いたような感じにも見えてしまうのもまた事実。ステージ上で三人をぐいぐい引っ張っていくのだろうと思っていたから、シャル加入前の三人体制での初ステージを見た時には軽く驚いた。きっと今までの経験値の差がはっきり出てしまうと、三人が躊躇してしまうかもしれないという思慮によるものかもしれない。そう思うほどにやっぱりなむの歌唱力と踊りは安定感が際立っている。

華やかさを振りまきつつも聴衆に染み込むような歌い方をするじゅり、曲の世界観に溶け込み一曲毎に様々な表情で客席を魅せるあさぎ、幼さを醸し出しながらもステージでは弾けるようにダイナミックに踊るシャル、そして三人が伸び伸びと出来るように一歩引いたスタンスにいるよう見えるけれども、歌と踊りの土台をきちんと支えているなむ・・・四人の個性がうまく際立ち、各々の個性が見えつつもしっかりとバランスが取れているのが今のDFである。

3. 楽曲について

2022年11月現在、基本は恋愛をテーマとした6曲に加え、グループ名となっている『DEMON FACTOR』、そして最近発表された『Restart』、『君の涙枯れるまで』の合わせて計9曲がある。
が、まだ現メンバーでの歌割りが全曲で完成していないのか、2022年11月現在においてライブで披露した曲は半分くらいである。
その中からいくつか紹介する。

『DEMON FACTOR』

イントロの出だしからギター・ベース・ドラム・キーボードが真正面からぶつかり合うように音を重ねるが、Aメロでは一転し、感情を押し殺すような歌声を引き立てるかのように静かにリズムを刻み、Bメロでは静かな空気を切り裂くかの如く各楽器が断続的に再び音をぶつけ合う。
そしてBメロの終わりでブレイクし、そのままサビで一気呵成に畳みかけるという、私達が DEMON FACTOR だ!という意志表示と意気込みがそのまま音となって聴衆の胸ぐらをつかむかのような攻めの一曲。グループ名がそのまま曲のタイトルとなってて、ライブでは間奏で客席を煽り、盛り上がりの起爆剤ともいえる役目を担っている重要な曲。

『リセット』

個人的にはDFを知ったきっかけとなって、初めて聴いた時には完成度の高さに度肝をぬかれた思い入れのある曲。今に至るまで何度となくコーラスを入れ直したり重ねたり、たぶん『リセット』がいちばん音源に手を加える回数が多かったであろう。
音的にはAメロ⇒Bメロ⇒サビへの流れるような展開が綺麗だけれども、音色が切なく繊細で、特にギターが一瞬でもエフェクターの切り替えを間違えると全て台無しになるくらいの緊張感に溢れている。過去に生バンドを従えてのライブでこの曲が披露された時、ギター凄えよとほれぼれして見ていた記憶がある。
そしてこの曲はとにかく浅葱の感情移入が凄い。
Aメロの平静を装ってる感じから始まり、Bメロの特に二番の間奏後の「そんなの頭じゃわかっているの」の爆発を抑えきれないでいる歌い方が鳥肌立つレベル。
そのあとに続くなむとじゅりの「でも心がまだ追いつかないの」「このまま進むことできないの」は、正気を保とうとするかのような抑えた歌い方が浅葱とのコントラストを描いていて、最後の「黒い薔薇を送るわ」は前二回の同フレーズと違って語尾を伸ばすことによって余韻を膨らませ、そのまま一瞬ブレイクしてサビに入るまでの流れが最高過ぎる。
DFを知らない人に一曲だけ勧めるとなった場合、迷わず選ぶくらい好きな曲。

『刹那』

物々しいタイトルとは裏腹に突き抜ける疾走感が全体的に溢れていて、どこか夏っぽさを感じさせる、DFのキラーチューンともいえる曲。
『DEMON FACTOR』とはまた違う感じで各楽器がぶつかり合うイントロから始まり、ワクワク感を抑え込んでるようなAメロ、徐々に盛り上がっていくBメロ、そしてスコーンと突き抜けるサビ。
この曲は特にじゅりのサビの歌い方が秀逸。透明感があって聴衆の心に染み込んでいくかのような声と歌い方が曲のイメージに凄い合っていて、聴いていて凄く気持ち良い。その気持ち良さを引きずったまま、サビ最後の「騒げ!」で一気に開放感が弾けるのがクセとなる。
しかしここ最近、オーラスのサビに入る前のブレイクに合わせて言っていた、「手ぇ上げて!」というなむの煽りが無くなったのが寂しい。あの一体感を誘導する煽り、また復活してくれたら嬉しい限り。

『Restart』

DFの楽曲を最初から辿って聴いていくと、Restart 以前と以後で大きく変わっている。
それくらい Restart には、曲にも歌詞にも新しい試みが散りばめられている。
まず曲的に特出すべきこととして、ピアノをイントロの最初に導入し、全般的にピアノの音が取り入れられている。シンセサイザーを活用してるのはこれまでいくつかあったが、Aメロの連弾のようにここまでピアノがフィーチャーされたのは初めて。
その後に続くイントロから全体を通しての音の作りは、今までのハードロックなテイストではなく、メリハリの効かせたロック寄りな作りと変わっている。例えるなら、X JAPAN がデビュー当時は紅とかモロヘビメタだったのが、JOKERのようなロック的な曲調も演奏するという感じかと。
今までの曲調とはまた違い、良い意味で大衆受けしやすいキャッチーなメロディとアレンジである。

歌詞においては、今までのDF楽曲での歌詞における肝であった「様々な恋愛における状況」ではなく、自分を取り巻く環境や内面を振り返り、そこから未来へ向けて踏み出すという、初めて「自分と向き合う」ことに主軸を置いた内容となっていて、メッセージ性が前面に出ている。
諦めや挫折を味わい、現実を受け入れつつもそこから立ち上がっていく。これから辛いことが起こったとしても覚悟を決めて自分の可能性を信じて自分を奮い立たせる……といった、聴き手側にも自分のことと感情移入出来るような歌詞の内容となっていて、サビの部分で拳を振り上げれる一体感もある。
個人的にはBメロの歌詞の内容と、その部分のじゅりの感情を露わにしたような歌い方が印象に残っている。
透明感のあるじゅりの歌声に繊細さが加わり、壊れそうな潰されそうな心境でも前を向こうという決意が上手に表現されていて、歌声が歌詞の内容に凄くマッチしている。じゅりの新しい部分が引き出されたと印象に残った。

『君の涙枯れるまで』

『Restart』に続くDFの2022年新曲第二弾『君の涙枯れるまで』。
『Restart』が自分で自分を鼓舞する内容に対して、『君の涙枯れるまで』は二人称的な世界観になっているが、しかしそこには恋愛的な意味はなく、同士としての二人が描かれている。
『君の涙枯れるまで』は二人で前を向いていこうと示してくれるものとなっていて、一人称と二人称の違いはあるが、『Restart』と共通する部分も見える。
同じアイドルで例えるならばももクロの『DNA狂詩曲』のような、厳しさもありながら背中を押してくれるような感じ。
寂しさを醸し出すギターリフから始まり、静寂を壊すかの如く間髪入れずドラムとベースが重く響いている中を再びギターがエフェクターを効かせて刻むという、DFの中でも一番ストレートで剥き出しなハードロックとなっている。
最初からサビに至るまで重厚感のある音が醸し出す空気の中、最後に重い空気を切り裂くように「君の涙枯れるまで」と締める。
この先どうすれば良いか一人もがいている答えの見つからない思考の中、天から蜘蛛の糸が差し出されたかのような「そばにいるよ、ずっと 君の涙枯れるまで」の言葉。
今までのDFには無かった、手を差し伸べるアプローチの曲である。

4.ライブ

Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )

普通のアイドルのように元気よく楽しく笑顔を振りまいて…といったのは『刹那』の時くらいで、普段のDFのライブは楽曲のコンセプトの下、笑顔よりも曲によって凛々しい顔や切ない顔を見せることが多い。
一曲ごとに曲の世界観に没入し、展開ごとに様々な表情で歌いこなすDFメンバー。特に浅葱の入り込みようの凄さは多くの人に見てほしい。

Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )

とはいえ、ライブ中のMCはメンバー全員揃いも揃って見事なくらいのポンコツ具合をさらけ出しており、そこでのトークや笑顔が、歌っている時と正反対なくらいに観客を引き付けている。
このようなライブは普通のアイドルライブをイメージしているファン層には想像しづらいかもしれないが、裏を返せばそのような展開をしているアイドルグループは少ないため、新しいファンを引きずり込む可能性が大いにあることも示している。実際に三人時代の対バンライブにおいて、他のグループのファンからの「DFかっこいいな」「かわいいな」という声をいくつも耳にしている。

Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )

四人体制となり、楽曲の歌割りも再設定し終わるだろう2023年のDFには、様々な対バンに出て行って、認知度を上げてファンを獲得していってほしい。今のDFならメンバーのキャラ、楽曲、ライブのカッコよさといった、新規ファンを獲得する要素は整っている。

Live photo by プロフェッサーさん
(Twitter: @professor_pip2 )

5.これからのDFに

デビューして3年が経過し、度重なるメンバーの卒業や脱退などあり、認知度や動員数などを含めた、札幌の地下アイドルにおける今のDFの位置づけはハッキリ言うと下の方にいることは否めない。
しかし下にいるということは、上に上がるチャンスはいくらでもあるということだ。
なむが一人支えてきたところにじゅりと浅葱、そしてシャルが加入し、新章のスタートを共にするには充分な新曲も手に入れた。
新たなファンを獲得するべく対バンや遠征、メディアへの出演など、道を切り拓くのが2023年のDFがするべきことであろう。

『Restart』は何も個人だけではなく、DEMON FACTOR というグループにも当てはまるわけで、2023年のDFに大いに期待したい。


と、いろいろ書いたけれども、結局は
「音源聴いて」
「ライブ見て」
に尽きる。
多くの人に知られずこのまま埋もれて終わっていくには勿体なさ過ぎる。

DEMON FACTOR 覚えて損は無いアイドルグループ。

Twitter : @demon_factor

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