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辻仁成⑥~2024/8/7 大阪フェスティバルホール ライブレポ

     2024年8月7日。自分は大阪にいた。
 辻仁成のラストライブに参加するため、大阪フェスティバルホールにいた。
 厳かな雰囲気を醸し出す、赤い絨毯の敷かれた階段を上って入口に入ると、グッズ売り場に長蛇の列が出来ている光景が目に入ってきた。
 まだ開演までは時間あるし、アクスタ買うかと並びの列に混ざる。そして近づくにつれ、商品リストのポスターが見えた。

まさかのアクスタ売り切れは予想してなかった…

    え?あれ!?アクスタ売り切れじゃん!?
 やられた。さすがに完売はないだろうと高を括っていたらこのザマ。事前通販で買っておけば良かったと激しく後悔。辛うじて残っていたフォトクリアファイルを購入。

フォトクリアファイル、アクスタと同じポーズ

    チケットを見せて中を少し歩くと、今回のツアーのロゴとイラストがフォトスポットになっていたので、自分も記念撮影。 

やっぱ右側の絵はECHOES時代の仁成だよなあ

 そしてホールの中に入る。広いねえ。造りは地元の旧北海道厚生年金会館(ニトリ文化ホール・現在は取り壊し済み)を二回り大きくした感じか。
 客席はほぼ埋まっており、さすがに年齢層は高い。それだけ辻仁成の歴史があったと実証するのがこの客層。

 19時を回ったところで客電が落ち、メンバーが登場、それぞれの位置に付く。
 そして仁成が現れた。キャスケットを被り、ノースリーブの上着にスカートのような下。遠くから見たらまるでワンピース。昔、『辻仁成が女性化云々・・・』といった心無い記事があったけれど、あの時はZAMZAで長髪にし始めただけだし、見た目なら今日のほうがぱっと見は女性化してるぞこれ、なんてことを思ったりした。

 セッティングが終わり、「Hey!」壮大なバンドの音と共に仁成が叫ぶ。そして始まった一曲目はCrossroad Again。1986年のECHOESのアルバム『No Kidding』からのナンバーだ。原曲とはアレンジも歌い方も大きく異なる。38年前の曲を2024年の辻仁成の感性で手掛けるとこうなるのか。トランペットがフィーチャーされ、映画音楽のような感じだ。
 
 続く二曲目はStrange People。仁成の孤独感を吐露するような歌い方が、原曲よりも胸を締め付けるような寂しさ、刹那さを強く打ち出している。

 そして仁成のトランペットのように吹く口笛と、ギターのボディをパーカッションのように叩くリズムから始まったのは、『Dear Friend』に収録されている年頃だ。Strange Peopleとはまた違う切なさ、思春期の恋愛における切なさと青臭さが前面に出ている。

 最初から三曲ECHOESのナンバーが続き、ここで最初のMC。
 今回のライブは生前葬だと笑いながら話す仁成。若いうちに、一番カッコイイ姿で引退する、と話す仁成。昔、ロックは持続力なんだ、ミック・ジャガーみたいに長く続けたい、と言っていたのになあ・・・と聞きながら思ってしまった。

 そして次に演奏したのは故郷。続いて水曜ロードショーのOP曲を彷彿とさせるような、またはスパニッシュテイストのようなインスト曲に仁成の口笛や叫びが乗る。

 そこから空 、ガラスの天井と続き、二度目のMC。前日に大阪入りしてうどんを食した際のエピソードを軽く話す。
 次は 孤独をラッタッタ。このあたりから観客席では手を上げて左右に揺らしたり、仁成のアクションに合わせて動いたりというのが出てきた。

 次のMCは大阪でのライブについての思い出。ホールクラスで最後にライブをしたのはECHOES時代とのこと。30年位前かな?いや、もっと前か?と仁成が考えてたので、咄嗟に「91年!」と叫んでしまった。仁成に聞こえたようで、「91年⁉すごいね~」と他人事のように返してくれた仁成。いや、あなたのことですやん、と心の中でツッこんでしまった。
 その後は現在の住処であるノルマンディー地方について面白おかしく語ったり、メンバー・スタッフの誰も引退を信じてくれないと嘆いたりしていた。

 MCが終わり、次はサボテンの心。そしてまたMCに。
 ここでは仁成の死生観から、東京公演で加藤登紀子さんが客席から登場したエピソードを話した。

 MCが終わり、「カモン!」とやや小声で呟いた仁成。
 「カモン!」といえば二曲に絞られる。さあ、どっちだ?でもたぶんあれだろうな?
 その予想は的中し、始まったのはJACK。ECHOESのライブで一番最高潮の時に必ず演奏された曲。イントロが流れ出した瞬間、客席の半分が立ち上がった。
 愛を切らしている君に―
 サビに合わせてこぶしを上げる客席。みんなECHOESに熱中していた頃を思い出したかのように。
 そのまま次のGENTLE LANDでは「愛されたいと願っている」と拳を振り上げて歌う客席。一瞬だけLostChildたちの同窓会となった大阪フェスティバルホール。
 一息ついてピアノの前奏から始まったのは、Someone Like You。ECHOES LIVE RUST で最後に演奏された曲だ。その次は友情。男女の間に友情はあるのかというテーマに辻仁成の実体験を含めて書き上げた、ECHOES珠玉のバラードである。
 その後に流れてきた時を刻むような規則的に刻まれるリズムの後に歌いだしたのは、Good-bye Blue Sky。ハンチングではなくキャスケットだけど、この歌詞を少し意識して仁成は被ってきているのかな、と思った。
 仁成の歌の後に、最初に刻まれてた規則的なリズムがまた鳴り始めた。そしてそれに続いて聞こえてきたのはHello Againのイントロと口笛!これって『Goodbye Gentle Land』のアレンジじゃん!規則的なリズムは時計の秒針の音だったのか!と胸が熱くなった。
 そしてECHOESメドレー最後はAlone。今の時代は固定電話もほとんど使わないし電話帳も個人情報保護の関係でペラッペラに薄くなった。でも曲を聴いてきた当時の思い出は何も変わらない。

 ECHOESメドレーを歌っている最中、客席が着ていたECHOESのTシャツやタオルがいくつも目に入って感極まったと白状した仁成。仁成の目に入った中に、自分が着ていたLIVE RUSTのTシャツはあったのかしらとちょっと思ったけど、15列目だから見えねえよなあと考えを改めた。
 その次に、東京三日目(8/5)のステージで、仁成には今は亡き今川勉の姿が見えたと言った。ああ、遊びに来てくれたんだなと。
 自分は残念ながら大阪に今川勉が来てくれたかどうかはわからない。しかし、ECHOESメドレーが演奏されている中、ドラムの山下あすかさんの、腕をクロスしてやや前傾みでスネアとハイハットを叩いている姿が、ECHOESの時の今川勉の姿とオーバーラップしてしまい、グッときてしまった。勉だよ~って。

 MCの後に始まったのは冬の虹。MCの時に仁成が暗い歌と言ってた通り、原曲よりも切なさと絶望感が満ちているが、アコーディオンからバリトンとトランペット、バスドラの鼓動のような重いリズムと重なっていき、最後には前を向いていこうと気持ちを絞り出すのが、映画を見ているような気分にさせられた。最後のアコーディオンのアウトロもまた良かった。

 ステージの後ろにスクリーンが降りてきて、今回のツアーのイラストが映し出された。照明が派手に駆け巡る中、バリトンから始まったのが、冬の虹とは対照的にアップテンポにアレンジされたCITY LIGHTS。

 メンバー紹介を挟み、仁成のアコギが刻むのは鳥の王のイントロ。『君から遠く離れて』から二曲続けてきた。

 本編最後は『スクエア』から唯一ライブで演奏された、どの方角から誰が来るのか分からないから全部開いてる。すごい久しぶりに聴いたので、歌い始めてもこれ何だったっけ?となかなか思い出せれなかった。

 アンコールが始まり、一曲目はなんとミーイズム。これ演るのか⁉とビックリした。後で調べてみたら、どうやら大阪のみのナンバーらしい(違ってたらごめんなさい)。

 MCを挟み、「フランスの歌聴きたいでしょ?」と問いかけフランス語の歌が始まった。何という曲かは分からず。ぶっちゃけ、仁成の曲を一曲でも多く聴きたいんだよ・・・と思ってしまったのは自分だけだろうか?

 次のMCで仁成が呟いた。
 「今日はスーパーゲストが来ています。伊黒俊彦、トシ」

 うわあああ!トシ来たんだ!と思ったら、自分の前の席に座っていた男性が立ち上がりステージに向かって歩いて行った。そしてステージに登っていった。うわあああ!俺の前にトシ座ってたのかよ!!全然気付かなかったわ!
 ステージに上がり、仁成に促されてマイクを通して話すトシ。
 「ありがとう、ECHOESは不滅です」
 照れくさそうに話すトシの横で
 「俺は引退するけどね」
 と笑いに持ってく仁成。オールナイトニッポンでゲストに来た時に聞いた、軽妙な会話のやり取りが生で見れたことにほっこりした。
 そんな和やかな雰囲気の中、ベースを抱えるトシ。そして始まったZOO。
 正直、世間一般とECHOESを当時から追っていたファンで、ZOOに対する熱量が全然違うというか。もちろん良い曲ではあるし、世間一般から見たらECHOES=ZOOだが、ECHOESが活躍していた当時、ファンの中ではそこまで最重要曲の位置ではなかったと思うんだよなあ。これも俺だけかなあ。

 ZOOが終わり、バックメンバーとトシが下がってステージ上には仁成一人。各方面へ感謝を述べ、これを歌わなければ終われないと言って歌い始めた。

 日本の未来は思うつぼ 僕らの明日はタコツボ

 アンカーマンだ。

 アンカーマンを歌い終わり、そこから急に「愛をください」と歌いだした。この部分だけ繰り返し、客席とコール&レスポンスとなった。
 この「愛をください」が、先ほどZOOを歌っていた時と全然違う。ほんと、ECHOESで歌ってた時の歌い方に戻っていた。泥臭く絞り出すようなあの当時の声。目をつぶったら、革ジャンにブラックジーンズに黒のヘアバンドを額に装着していたクセ毛の仁成が瞼の裏に浮かんできた。そしてゆっくりと涙腺崩壊した。最後の最後に一瞬でもあの当時の歌い方の仁成が見れて良かった。これだけでも北海道から飛行機に乗って見に来た甲斐があった。

 すべての曲目が終わり、仁成は何度も「ありがとう!」と口にして手を振っていた。やり切ったぞという満面の笑顔でステージから去っていった。
 これでミュージシャン辻仁成は終わった。

 ステージ上のスクリーンに映し出された
【終わりよければすべてよし】
の文字が、客電が点いてもそのまま残っていたのだった。

でも、終わってほしくないんだよなあ…

辻仁成 JAPAN ファイナル ツアー 
“終わりよければすべてよし”
2024/8/7 大阪フェスティバルホール

セットリスト

 Crossroad Again
 Strange People
 年頃
 故郷
 空
 ガラスの天井
 孤独をラッタッタ
サボテンの心
~ECHOESメドレー~
Jack
Gentle Land
Someone Like You
友情
Good-bye Blue Sky
Alone
~~~~~~~~~~
冬の虹
CITY LIGHTS
鳥の王
どの方角から誰が来るのか分からないから全部開いてる

―アンコール―
ミーイズム
フランス語の曲(タイトル不明)
ZOO
アンカーマン



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