【詩】犬

わたしは犬との約束の多くを
守ることができませんでした

1『わたしの一生は10年から15年です
どうかできる限り わたしと一緒にゐてください』

2『あなたの求めてゐることを
わたしが理解するまで気長に待つてください』

3『わたしを信頼してください
あなたの信頼がわたしの幸せです』

4『わたしを長い間 叱つたり
罰として閉じ込めたりしないでください
あなたには他にやる事があつて
楽しみがあつて
友達もゐるかもしれない
でも わたしにはあなたしかゐないのです』

5『ときどき 話しかけてください
言葉はわからなくても
あなたのこゝろはわたしに届いてゐます』

6『あなたがわたしと どのやうに接したか
わたしは決して忘れません』

7『わたしを叩く前に思ひ返してください
わたしには鋭い歯があり
あなたの手の骨を噛み砕けるのに
決してあなたを傷つけないやうにしてゐることを』

8『わたしが云ふことをきかないと叱る前に
原因があるのではないかを考へてください』

9『わたしが歳をとつても
どうかお世話をしてください
わたしもあなたも年を取るのですから』

10『最期の時まで わたしと一緒にゐてください
「見ていられない」「看取れない」
などとは云はないでください』

11『そして どうか忘れないでください
わたしはいつまでもあなたを
一番に愛してゐると云ふことを』

わたしと同じ後悔をしなひことを
ここに祈ります