【詩】香り

どこから ともなく 漂つて来た香り分子が
わたしの鼻腔に触れたとき
わたしの顕在意識は潜在意識の中に沈み
失はれた時を求めて
記憶の扉を「コンコン」とノックします
ですが 扉は固く閉ざされたまま
開かれることはなく
ただ 目頭だけが熱くなるのでした