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板バネリフター

ミニ四駆のミニテクニック!

今回は、調整が容易&しっかり上まで持ち上げてくれるリフターを紹介します。

板バネリフター概略

今回は、私が使っているリフターをご紹介します。

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長さが異なる複数のスリーブを重ねて構成したリフターです。
リーフスプリング(重ね板ばね)に似ているので、板バネリフターと呼んでいます。

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実際に提灯アームにひっかけているのは最も上のリフター(親バネ)だけで、それより短いリフター(子バネ)が下に数枚あり、親バネを支え、適度な反発力を与えています。

そもそもリフターとは?

リフターとは、提灯に上向きの力を与える装置です。
通常時は提灯の重さによって押し下げられていますが、ジャンプ時等、マシンが空中にあるとき(=無重量状態のとき)は、上向きの力によって提灯を持ち上げます。
提灯を持ち上げることで、着地時のマシンのバウンドを抑える能力を向上させることができます。
また、スラスト角が可変のバンパー(いわゆるATバンパーなど)を提灯と連動させることで、マシンが空中にあるときだけスラスト角を増大させることもできます。これにより、スロープでジャンプした直後、マシンが浮いたままの状態でコーナーに突入したとき(いわゆるコーナーイン)や、立体レーンチェンジでマシンが浮いたときなど、ローラーのダウンスラストが強くなることにより、コースアウトの防止が期待できます。

リフターに求められる性質

リフターの機能は提灯を持ち上げることですが、では、
「どのように持ち上げるのがいいのか」
を考えてみます。

マシンが路面を走っているときは、提灯が浮いておらず完全に下まで落ちていることが求められます。あえて少しだけ浮かせるといったセッティングもあるかもしれないですが、とにもかくにも、提灯が自身の重さのみによって基準の位置まで落ちていけるくらいの、わずかな弾力である必要があります。

かと言って弾力が弱すぎると、スロープでジャンプした時などに提灯をしっかりと持ち上げることができず、着地時のバウンド抑制がうまくいかなかったり、ATバンパーの連動がうまくいかずスラスト角を増大させることができなかったりと、リフターに求める機能が得られません。
しっかりと力強く提灯を持ち上げてもらう必要があります。

つまり、提灯をしっかり持ち上げられるだけの強さを持ちつつ、マシンが浮いていないときはちゃんと下まで落ちるくらいの、ちょうどいい弾力にする必要があります。弱すぎても強すぎてもダメです。

このようなちょうどいい弾力のリフターをつけていると、マシンを手に持って軽く上下に動かしただけで、提灯がフワフワと動きます。フワフワであればあるほど着地時に跳ねにくいですし、レーンチェンジでのコースアウトもしにくくなります。

しかし、リフターは時間と共に徐々にヘタって来ます。また、提灯に取り付けるマスダンパーの重さを変えたときは、それに合わせてリフターの弾力も変えるのが望ましいでしょう。
このような時にフワフワ感を維持するためには、弾力の調節ができると有利です。

つまり、提灯が自重で下まで落ち、かつ、フワフワ動くくらいの強さで、しかも弾力の調節ができる
これが、私がリフターに求める性質です。
この性質を持っているのが板バネリフターです。

板バネリフターの利点

なんと言っても、弾力調節の自由度がとても高いです。
後述しますが、長さの違う子バネをいくつか用意しておき、重ねる枚数を変えたり、子バネを長さの違うものに交換したりすることで、リフターの強さを柔軟に調節できます。

利点はもう1つあります。
板バネリフターは、提灯を上までしっかりと持ち上げてくれるのです。
これは、曲がりぐせのつきにくさによるものです。
リフターは、スリーブでもポリカでも、徐々に曲がりぐせがついていきます。曲がりぐせが大きいと、無負荷時のリフターの位置が下がります。このため、曲がりぐせがついたリフターは、提灯の開いた高さが同じなら、曲がりぐせがつく前と比べると、無負荷時からの変形量が小さくなっています。
通常、板でもバネでも、その反発力は、大きく変形させているときほど強く、変形が小さいほど弱くなります。
つまり、「変形量が小さい」ということは、「提灯を持ち上げる力が弱い」ということなのです。
もちろん、曲がりぐせがついたリフターでも、曲がりぐせのないリフターでも、提灯が自重だけで基準の位置まで下りて来られるくらいの絶妙な反発力のものを作ることは可能です。提灯が基準の位置にあるときの反発力を等しくすることもできます。どちらのリフターも、提灯が持ち上げられていくにつれ反発力が弱まるのも同じです。
しかし、弱まる勢いが違います。
提灯が持ち上がったとき、曲がりぐせのあるリフターは、そうでないリフターに比べて、無負荷時からの変形量がより小さくなってしまうため、反発力の減少が大きいのです。
板バネリフターは、全く曲がりぐせがつかないわけではないですが、曲がりぐせを小さく抑えることができます。
このため、曲がりぐせによって無負荷時のリフター位置が変に下がってしまうことがなく、提灯が完全に持ち上がった位置でも反発力を大きく損なうことがないので、上までしっかりと持ち上げてくれます。

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なぜ曲がりぐせがつきにくいのか

ちょっと実験してみます。

普通、スリーブやポリカ端材のリフターは、1枚だけの構成であるか、複数枚重ねていても、同じくらいの長さのものを重ねていることが多いのではないかと思います。
こうしたリフターがどのように曲がっているのかを見てみましょう。

まずは、1枚だけのもの。

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根元に近い方が大きく曲がっており、先端に近い方はほぼ変形していないのがわかると思います。

続いて、2枚重ねのもの。

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こちらも、根元の方は大きく曲がっていますが、先端の方はあまり変形していないのがわかります。

当然ですが、部材を大きく変形させるほど曲がりぐせは強くなります。
普通にリフターを作ると根元の方が大きく曲がるため、根元に強い曲がりぐせがついてしまうのです。

リフターが大きく変形するのを避ければ、曲がりぐせも小さくできるはずです。しかし、変形が小さいと弾力が弱く、リフターを持ち上げる力も高さも足りなくなってしまいます。

曲がりぐせをつけないよう変形量を小さくしつつ、提灯をしっかり持ち上げられる強い弾力を得る方法はないのか。

それを実現するするのが板バネリフターです。
板バネリフターを曲げたところを見てみましょう。

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透明でわかりにく意ですが、この作例は3枚で構成しています。
では、曲げます。

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根元の方だけでなく、リフターの全体が概ね均等に曲がっています。
つまり、板バネリフターは、根元から先端まで変形量が均一に分散され、各部分が少しずつ変形することで全体的な変形量を稼いでいるということです。1枚のみや単に重ねただけのリフターは、全ての変形量が全体に分散されず、根元だけに大きく集中していたとも言えます。
板バネリフターは、局所的に大きく曲がる部分がないので、強い曲がりぐせがつくのを防ぐことができるという仕組みです。

板バネリフターの作り方

構造が簡単なので作り方というほど大層なものではありませんが・・・。
私はスリーブを幅7㎜でカットし、2.5㎜の穴を開けてビスとロックナットで取り付けています。

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穴は2㎜でもいいですが、付け外しがスムーズにいかないので大きめの穴にしてます。
幅は個人の好みによるでしょう。8㎜でも6㎜でも、何㎜でもいいと思います。求める弾力の強さとか、ボディとの干渉によって選定してください。
ビスは、シャーシに1.8㎜の穴を開けて裏から6㎜の皿ビスを付け、接着剤で固定しています。

リフター本体は、一番上の親バネを最初に作ります。板バネリフターは大きく円弧状に膨らんだ形に変形するため、1枚だけのリフターに比べるとサイズは長めになります。私は、少し長めにスリーブを切り出して、ひとまずそのまま取り付け、様子を見ながら余分な部分をカットして長さを合わせています。先端は、上側にフック状に曲げて、リフターが提灯から外れるのを防止しています。
なお、これは提灯アームの位置にもよりますが、私の場合はリフター先端がギヤカバーのモーター上部にある網状の中央フレームに干渉するので、一番前のブロックだけフレームを切り取っています。

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子バネは、板バネ3枚重ねなら、長さが親バネの1/3と2/3のもの、4枚重ねなら1/4、2/4、3/4のものを作ります。
ただ、長さはあくまで基準です。
子バネの長さを微妙に変えることで、リフターの強さを柔軟に調節できます。
また、もちろん、重ねる枚数の変更も調節手段のひとつです。
例えば、板バネリフターと言えども全くヘタらないわけではないので、ヘタってきたら子バネの一部を少し長いものに変えてみるとか、重ねる枚数を増やしてみるとか。
あるいは、提灯が完全に下まで落ちきらなければ、子バネのどれかを数㎜切って短くしてみるとか。
調節方法はいろいろです。
細かい調整が可能なので、フワフワする提灯を容易に実現できます。

注意点としては、どうしても高さが出てしまうので、ボディとの干渉への対策が必要です。ネオVQSのような、前方中央部の内部空間にゆとりのあるボディなら大丈夫です。

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素材について

私がリフターにオススメする素材はこちら。
「ミニ四駆ベーシックボックス (スリーブ付)アバンテJr.30周年https://www.tamiya.com/japan/products/95456/index.html)」に付属していたスリーブです。
AOパーツの「ミニ四駆ベーシックボックス クリヤーカバー(https://www.tamiya.com/japan/products/10322/index.html)」もあります。
スリーブは、ほぼ全面が凹凸のない平坦な形状で厚さが均一なので、素材として活用しやすいです。
ポリカボディと似ていますが、材質はPETで、ポリカーボネートではありません。PET製ゆえ、ポリカに比して割れやすいというデメリットはあるものの、大きな衝撃を受ける部位に使用しない限り問題となるものではなく、総合的には素材として極めて優秀なグレードアップパーツだと思います。

おわりに

板バネリフター、いかがだったでしょうか。
クルマ業界では、他に優れたサスペンション形式がいくつもあり、リーフスプリングサスペンションは廃れつつある形式かと思われます。それこそ、モータースポーツが好きな人ほど、リーフスプリングサスペンションにあまり良いイメージがないのかもしれません。
戦車業界でも同じです。
そんなリーフスプリングですが、ミニ四駆ではこういう意外な使い方もある、というアイデアでした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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