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空力デバイス研究②

「ダウンフォースだ!」
今回もミニ四駆用の空力デバイスを研究します。
前回はエアダム型ウイングの揚力係数を測定し、なかなか良い性能だということが確認できました。しかし、エアダム型ウイングだけではダウンフォースが不足するので、車体そのものからもダウンフォースを得る必要がありました。
そこで今回は、車体にアンダーパネルを取り付け、車体から得られるダウンフォース値を測定し、揚力係数を算出して行きます。
なお、前回の記事はこちらです。

実験用アンダーパネル

今回の実験のために作成したアンダーパネルはこちらです。

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流体は、流速が遅いと圧力が上がり、流速が速いと圧力が下がります。車体下面を平滑にし気流をスムーズに流すことで、車体下面の圧力上昇を防止する狙いです。車体下面の圧力が低く、車体上面の圧力が上がれば、上下の圧力差で車体が下に押され、ダウンフォースが生まれます。

サイドウイング部は、エアダム型ウイングと同様の効果を狙った形状にしました。
また、サイドウイングの平面形は、単純な長方形とせず、前方側を斜めにカットした台形としています。これは、今まで何度か遊び半分でアンダーパネルを作ってきた中で、シャーシ本体からサイドウイング前縁に繋がるラインをなだらかにしておかないと、フェンス乗り上げ時の負荷でサイドウイング付け根が裂けてしまうことがあったためです。

リヤ部は、私のメインマシンのブレーキ プレート形状に合わせて、少し特殊な形状になっています。リヤディフューザーの面積を確保しつつ、リヤブレーキを邪魔せず、なおかつ一体成形とするための形状です。

車体に装着するとこうなります。
(アンダーパネルが透明で見づらくてすみません。)

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取付方法は、軽量で付け外しが簡単な両面テープです。電池ボックス部に貼っています。
リヤ部分は、アンダーパネル後端をブレーキプレートの上側に引っ掛けるようにしています。

実験方法

車体に扇風機で風を当てて、スケールでダウンフォースを測定するのが基本ですが、そのためには、気流を妨げない形状で車体をスケールの上に置ける土台が必要です。しかし、ちょっと手元にありません。
そこで、スケールから糸を垂らし、その糸で車体を吊り下げることにしました。

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こんな感じで車体を吊り下げ、扇風機の前に持っていって、スケールの数値の変化を読み取ります。
スケール手持ちだと微妙な上下の動きで数値が変動しそうなので、本当はスケールを何か台の上に置きたいのですが、ちょっと良い台がないので、このまま手持ちで行きます。

扇風機の風速は、前回同様、あらかじめ風速計で測定します。

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風速は羽から60㎝の位置で3.5m/sでした。

実験結果

車体を10°ほど前傾させた姿勢で扇風機の風を当てた結果がこちらです。

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アンダーパネルとボディの有無を変えて、4パターンの形状で測定してみました。
測定値は、スケールに表示された数値です。前回の実験同様、風に強弱の波があるので、感覚で平均くらいの数値を読み取っています。
揚力係数は、測定値のグラム数と、以前の記事で計算した車体の代表面積(11715m㎡)から算出したものです。

考察

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最も揚力係数が大きかったのは、アンダーパネルとボディを両方とも装着してしていたときでした。そこからボディを取り外し、アンダーパネルのみ装着とした場合は、わずかに揚力係数が減りました。
また、アンダーパネルが無いと揚力係数がガタ落ちしていますが、ボディ無しよりも有りの方が揚力係数が大きくなっています。
どうやら、私のミニ四駆のボディは翼を持った形状なので、わずかながらダウンフォースを発生させているようです。

ボディの効果を無視してアンダーパネルの効果だけに注目するため、ボディ無しでアンダーパネル有りと無しのパターンを見てみます。
アンダーパネル有りは揚力係数0.560、無しは揚力係数0.134です。
つまり、アンダーパネルの装着によってダウンフォースを発生させる能力が4倍以上に向上したということです。

この結果から、アンダーパネルの装着によって車体がダウンフォースを発生させる能力を高めることができると言えます。

活用の方向性

アンダーパネル装着ボディ無しの状態で、ストレート3枚着地となる5.9m/sのときのダウンフォース値を求めると、14.2gfとなりました。
目標とするダウンフォース値は、前回の記事に書いたとおり54gfなので、その約1/4のダウンフォースをアンダーパネルによって得られるということです。

前回の実験で使ったのと同じウイングを搭載するとすれば、ウイング1枚のダウンフォースは9.6gfです。搭載数は3枚までと考えると、ダウンフォースの合計は28.8gfです。
これにアンダーパネルの14.2gfを足しても43.0gfであり、目標の54gfにはあと11gf足りません。

つまり、現状のウイングとアンダーパネルでは、まだ少し能力不足と思われます。
アンダーパネルに関して言えば、リヤ部分の幅を広げて面積を増やしたり、同じくリヤ部分のサイドに垂直安定板のようなものを取り付けて上面の高圧空気が下面の低圧部に回り込むのを防止したりといった改良案が考えられます。

ただ、アンダーパネルとウイングを組み合わせることで、単純に合算した以上のダウンフォースを得られる可能性もあります。
なので、アンダーパネルの形状を改良するとともに、アンダーパネルとウイングを両方とも搭載した車体で実験をする必要がありそうです。

まとめ

今回の実験で次の事項が明らかになりました。

・アンダーパネルの装着により、車体のダウンフォースは4倍に上昇する。
・3枚着地の速度ならアンダーパネル搭載車体のダウンフォースは14.2gfで、目標54gfの約1/4。
・今一歩ダウンフォースが不足するため、アンダーパネルの改良が必要。
・また、ウイングとアンダーパネルを両方とも搭載しての検証も必要。

次回は、アンダーパネルを改良するとともに、車体に搭載するエアダム型ウイングを試作して、アンダーパネルとウイングを両方搭載して実験してみたいと思います。
それでもダウンフォースが不足するようなら、さらに次回以降、ウイング形状の改良についても検討していきます。

次回の記事はこちら



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