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夢十夜(第二夜)

夏目漱石
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青空文庫より、
夏目漱石「夢十夜」の
第二夜を読みました。

《ふわっとあらすじ》

こんな夢を見た。

寺は広く、森閑としていた。
和尚の部屋から自分の部屋へ戻ると
行灯がともっていた。

灯心を引き上げ、部屋が明るくなった。
与謝蕪村の軸がかかっていた。

座布団の下を調べたら
ちゃんと短刀がそこにあった。
安心してその上に座った。

和尚は、侍なら悟れるはずだと言う。
悟れないなら侍ではない、と
馬鹿にされたものだ。

自分はきっと悟り、
それと引き換えに和尚の命を取る。
私は侍だ。
悟れなければ、自刃する。

短刀を鞘から出すと
緊張で手は汗ばみ、唇が震えた。

それから座禅を組んで
無になろうとした。

しかしいくら念じても
和尚のあざけりが見える
体が痛くなる、腹が立つ、
悔しくて涙が出る。

そのうち頭が変になって
部屋のものが有るようにも
無いようにも見えた。

すると
隣の部屋の時計が鳴るのが聞こえた。
結局、悟れなかった。


《語句解説》
行灯:昔の小型の照明。木などで枠を作って
   紙を貼り中に油皿を置いて点灯するもの。
灯心:行灯の芯。油を浸して火をともす紐。
書き立てる:灯心を上に引き上げて明るくする。
丁子:【丁子頭】ちょうじがしら。
   灯心の燃えさしの頭にできる、
   チョウジの実のような丸いかたまり。
朱塗り:朱色にぬること、ぬったもの。
蕪村:与謝蕪村。江戸中期の俳人、画家。
海中文殊:漁師が釣り上げた文殊菩薩か。
     文殊は智慧を象徴する文殊菩薩。
森閑:物音一つせず、静まりかえっているさま。
丸行灯:円筒形の行灯。
自刃:刃物で自分の生命を絶つこと。
朱鞘:朱にぬった刀の鞘。
九寸五分: 長さが九寸五分の短刀。約29cm。
     戦場で敵を刺し、切腹をするときにも用いられた。
全伽:禅宗の座り方。座禅を組む。
趙州:趙州従諗(じょうしゅうじゅうしん)。
   中国唐の時代の禅僧。
薬缶頭:はげて薬缶のようにつるつるになった頭。
鰐口:鰐の口のように横に広がった口やそのような形。
違棚:二枚の棚板を左右から食い違いに吊った棚で、
   工芸品などを飾るもの。床の間などの脇に置く。
現前:目の前に現れること。


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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

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