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夢十夜(第三夜)

夏目漱石
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青空文庫より、
夏目漱石「夢十夜」の
第三夜を読みました。

《ふわっとあらすじ》

こんな夢を見た。

六歳のわが子をおぶっている。
子供はなぜか坊主頭で、目が不自由だった。
そして物言いはまるで大人のようだった。

目が見えないはずなのに、
まるで見えているかのように話す。
この先に起こることを知っている。
わが子ながら怖くなり、
どこかに捨てようと考えだした。

すると子供は鼻で笑った。
お父っさん、重いかい?と。
自分の考えていることも
見透かされているようだった。

自分は子供の道案内の通りに
森の奥へ進んだ。
さっきから雨は降り続いている。

子は自分の現在、過去、未来を
全て知っているように思えた。

もうたまらなくなったその時
突然背中の子が
ここだここだ、と。
この杉の根のところだ、と。

思わず、
うんそうだ、と自分は答えた。

文化五年、辰年だろう?
お前が俺を殺したのは、と。

そう言われると確かに百年前、
ここでわが子を殺したという
自覚が忽然と起こった。

そのとたん、背中の子が
急に石地蔵のように重くなった。


《語句解説》
青坊主:髪を短く切った頭。
八寸角の石:底面が一辺24㎝ほどの正方形の角柱の石。
判然:明らかなさま。
一間:1.81メートル。
文化五年:1808年。

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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

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