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鼻(第1回)

芥川龍之介
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青空文庫より、
芥川龍之介の「鼻」を
3回に分けて読みました。
その第一回目です。

《ふわっとあらすじ》

禅智内供(ぜんちないぐ)
という高僧がいた。
彼の鼻が腸詰めのように
太くて長いことは、
京都宇治の池の尾界隈では
とても有名であった。

気にしていない
素振りをしていたが、内心
彼はとても悩んでいた。

食事の時には、必ず誰かに鼻を
持ち上げていてもらわないと、
ものが食べられないのである。

鼻を苦にして出家したのだ、と
自由勝手に噂する者もあった。
彼の自尊心は大いに傷ついていた。

鼻のコンプレックスを
どうにか克服しようと、
鼻が短く見える角度を
鏡で研究してみたり、
また、寺を訪れる者の
鼻をよく観察した。
同じ鼻を見つけて
安心したかったのだ。

彼はなお、書物からも
同じ鼻の先人がいないか調べてみた。
残念ながら、どこにも
書かれていなかった。

怪しい民間療法なども試した。

しかし、何をやっても
鼻は変わらず長いままだった。


《語句解説》
禅智内供(ぜんちないぐ):この物語の主人公で、
            宮中の内道場に勤める高僧。
池の尾:現在の京都府宇治市池尾

五、六寸:17~18センチ
沙弥(しゃみ):出家して十戒を受けた初心の男子。
       修行未熟な僧。
内道場供奉:宮中の内道場に奉仕し、
      御斎会 (ごさいえ) のときに読師 (どくし) を、
      または天皇の夜居 (よい) を勤めた僧職。

これは専念に当来の浄土を喝仰すべき僧侶の身:
本来ならば往生を願い修行に専念しなければならない身

鋺(かなまり):金属製のお椀
広さ一寸長さ二尺:幅3㎝、長さ60㎝

中童子:寺院で召し使う十二、三歳ぐらいの少年。
喧伝:盛んに言いはやして世間に広く知らせること。
不承不承:いやいやながら、やむをえず物事を行うこと。

僧供:僧に対する供養。
講説:講義して説明すること。特に仏典などについていう。
僧俗:僧と俗世間の人。

水干(すいかん):のりを使わず、水張りにして干した布で
        作った狩衣 (かりぎぬ) の一種。
帷子(かたびら):裏をつけない衣服の総称。ひとえもの。
柑子色(こうじいろ):みかん色をやや薄くした色。
椎鈍(しいにび):椎の実を使って染めた色で、墨色。

内典外典:仏教関係の書籍と、それ以外の書籍。
心やり:ふさいだ気持ちを晴らすこと。
目連:もくけんれん【目犍連】前5世紀ごろのインドの僧。
舎利弗(しゃりほつ):釈迦 十大弟子の一人。十六羅漢の一。
竜樹(りゅうじゅ):2世紀中~3世紀中ごろの
         インド大乗仏教中観 (ちゅうがん) 派の祖。
馬鳴(めみょう):2世紀ごろのインドの仏教詩人。
震旦(しんたん):古代中国の異称。古代インド人が中国を
        チーナ‐スターナと呼んだのに由来する。
劉玄徳:劉備玄徳。後漢末期から三国時代の武将で
    蜀漢の初代皇帝。
烏瓜:ウリ科の植物。朱色の果実で花は夜間にだけ開く。
尿(いばり):小便

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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

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