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日帰り首都圏乗り継ぎ旅 気まぐれに秩父鉄道まで。

まえがき

 1月13日、土曜日、時刻は22時を回っただろうか。今日は午後に歯医者に行く予定があったのだが、ものの30分で終わってしまって、まあ総じていえば何もない一日だった。明日の予定も特に決めていない。さすがに土日2日間の予定が歯医者だけではつまらないと、パソコンを眺めながらいろいろと考えてみる。
 狙いは一つある。栃木県で行われる皇后杯準々決勝、ベレーザ対埼玉と浦和対千葉の2試合が行われる予定で、観覧無料とのこと。日曜日を趣味のサッカー観戦に充てるというのは最高だが、皇后杯でいえば広島サポーターの私からすると広島で行われる広島対仙台のほうが気になるのも事実。まあ、一晩寝て、明日朝起きたときに気が向けばサッカーを観に行くことにしようか。サッカーを観に行く気にならなかったら、久しくできていない“乗り鉄”でもすればいい。

 1月14日、午前7時前、枕元にセットしたアラームが鳴り響く。まだ眠い、この眠気には勝てまい、早々にサッカー観戦を断念して、適当な時間にアラームをセットし、二度寝を決め込むことにする。
 次に目覚めたのは8時半ごろのこと、さて、今日はどこに行くか。東武の未乗区間を乗り潰しに行くか、関東鉄道や真岡鐡道のあたりに乗りに行くのも良い。久々にひたちなか海浜鉄道のほうにも行ってみるか、未だ乗ったことがない秩父鉄道に乗るのも一案。乗換検索を駆使して適当に調べてみると、ちょうど池袋から西武特急に乗れば秩父のほうまでスムーズに行けそうで、とりあえず秩父に向かってみることにする。そこから先のことはついてから考えればいい。適当に準備をすませて家を出た。

 時は2020年11月、当時大学4年だった私は、コロナ禍の影響で下宿先から実家に帰省することもできず、思い描いていた卒業旅行は儚くも消え、孤独に卒業研究に励む日々を送っていた。さすがにこのまま学生生活終了では虚しすぎると勝手に企画したのが”日帰り首都圏 四番勝負”、今回はそれに続く五番場所、とりあえず出発点を適当に大手町駅と定めて、秩父に行く以外の旅程を全く決めない気まぐれ旅をやってみることにしよう。
(以上、過去作の告知を兼ねた適当なまえがきでした。みんな『日帰り首都圏 四番勝負』もよろしくね!)

大手町9:55→池袋10:10 丸の内線池袋行き

 大手町駅からは真新しい赤色の地下鉄に乗り込んで池袋に向かう。日曜日の10時、休日を都心で過ごすには丁度良すぎる時間帯で、車内は吊革まで埋まるほどの混雑だった。お茶の水、後楽園を抜け、文京区の路地裏を駆け抜ける。茗荷谷近辺の地上区間はこの路線が都心の地下鉄路線であることを忘れさせてくれそうな心地よさが感じられそうな気もするのだが、今日に限っていうと日曜の池袋に向かうこの混雑のほうが明らかに勝っていて、気が付けば茗荷谷も過ぎていた。途中駅で車内確認があったようだが、ほぼ定刻通り池袋駅に滑り込んだ。ホーム上では反対側のホームから回送電車が出発するところで、発車ベルが鳴り響いている。それを横目に、混雑したホームをゆっくり改札口のほうに進んでいく。

池袋10:30→西武秩父11:47 西武特急ちちぶ11号

 勇み足で西武線の改札口へ進んでいく。“特急券”と書かれた赤い券売機に吸い寄せられるように向かっていくと、迷わずちちぶ11号の指定券を買った。とりあえず終点の西武秩父まで、秩父で適当に昼ご飯でも食べて三峰口に向かうことにしようか。

これが本日午前中の主役

 颯爽と改札口を通り抜け、右手の特急専用ホームに向かう。ちょうど特急用の001系”Laview”が入ってきたところで、輝く銀色の車体が眩しい。ホームの自販機で適当にコーヒーを買って、指定券に書かれた8号車1D席に乗り込んだ。Laviewに乗るのは2回目なのだが、まるで1人掛けソファのように独立性と快適性の高い椅子、そして頭上から足元まで広がる大きな窓ガラスで構成される車内は、リゾートホテルの一室のような明るさと開放感が漂う。車内は家族連れの姿も目立つが、座席の半分程度が埋まるほどの乗車率で、窮屈感を感じることもない。
 定刻10:30になると、軽やかに池袋駅を出発する。そのまま椎名町、東長崎と豊島区の住宅街を抜けていく。スピードはそれなりに出ているはずなのだが、このLaviewはトップスピードでも余裕があるように感じられる。恐らく乗り心地が良すぎるあまりスピードを感じにくいのと、遮音性が高く唸るようなモーターの音が聞こえるようなこともないからだろう。池袋駅の自販機で買ったコーヒーを飲みながら優雅に車窓を眺めていると、気が付けば練馬を過ぎ、所沢が近づいてきた。ここでは数名の乗降があり、そのまま飯能方面へ進んでいく。入間市駅の手前では右手に航空自衛隊入間基地の滑走路を望む。ここまで滑走路の目の前を走っていく路線もなかなかないのではないか。滑走路、自衛隊の関連施設群を眺めていると、景色は一瞬で芝生と木々へ大転換、稲荷山公園の真隣を通る。この自衛隊基地から公園への移り変わりは、他では味わえないような温度差があってこの路線の知られざる魅力ではないかと思う。
 列車はそのまま進んでいき、意外にも飯能駅で乗客の半分以上が下車していった。ここから先は進行方向も変わり、山岳路線へ一変する。1月中旬、前日には東京都心で遅めの初雪が観測されたこともあって、飯能から先は地面に少し雪が残っている。進行方向が変わった関係でここから先は南向き、窓越しに程よく日差しが入ってきて心地よい。これくらいの眩しくもなく、程よく暖かい日差しを受けているとうたた寝したくなってくるが、徐々に終点が近づいてくる。今日は臨時停車という芦ヶ久保駅ではほとんど乗降がなく、そのまま少し進むとあっという間に西武秩父駅に着いてしまった。快適な1時間半が一瞬のように過ぎていった気がする。気持ちがリフレッシュできた気がして、爽やかな気持ちでさあ歩みだそうと列車を降りると、雲一つない青空が出迎えてくれた。観光地へ向かう家族連れで混雑する改札口を抜けた。

快晴の空と銀の車体が眩しい
行先は早くも折り返し池袋行きの表示

西武秩父→御花畑 徒歩

 駅舎を出て左手に向かい、御花畑駅まで歩いていく。西武秩父駅に付属して祭の湯という温泉施設があるようで、気まぐれに行ってみようかとも一瞬思ったのだが、今はそのまま秩父鉄道に乗りたい欲のほうが強い。時刻はちょうど12時前、どこか適当に昼ご飯が食べられるような店は無いかと探しつつ歩く。適当に蕎麦でも食べたいなと思いつつ歩き続けると御花畑駅に着いてしまったのだが、なんと駅構内に蕎麦屋が2つ、隣接してカフェが1つある。次の三峰口行きまでは20分くらいあるから、ここで昼食としようか。比較的空いている“はなゆう”で天ぷら蕎麦を頼んだ。
 一見、屋台のおでん屋を思わせるような木造のカウンターで店員に100円玉4枚を渡して暫く待つと、美味しそうなかき揚げの乗った蕎麦が出てきた。冬の寒い中、吹き曝しできれいな青空が見える木のテーブルで蕎麦をすする。温かい蕎麦は凍えそうな体を温めてくれるし、とび魚の出汁が特徴というつゆに蕎麦の麺、そして揚げたてのかき揚げがとにかく旨い。久々にこんなに旨い蕎麦を食べた気がする。店内に客は2~3人だったのだが、私の後に入ってきた50代くらいの夫婦の会話のテンポ感が心地よくて、知らないコミュニティFMを聴いているような気分になる。居心地の良い店内に美味しい蕎麦、いつまでも食べていたい気になるが、あっという間に完食してしまった。

旨い!!!旨い!!!旨い!!!

 旨い蕎麦屋に出会って上がり気味のテンションで駅構内に入る。この駅は2面2線の対向式ホームなのだが、改札の向かい側の2番乗り場は西武線直通の数本でしか使われないらしく、2番乗り場へ向かう階段はロープで封鎖されていた。そういえば蕎麦屋に入る前には2番乗り場に回送列車が止まっていた気がするが、いつの間にかいなくなっている。ゆっくりと駅構内を見渡すと、改札の目の前には昭和の雰囲気漂うカフェがあり、有人改札に駅員がいてと、いまや地方私鉄でもなかなか見かけないような風景が広がっている。改札前のコカ・コーラやポカリスエットの広告も今では見かけないような一昔前のデザインのような気がする。ホームが4両編成分と少し小さめで、春から秋にかけて走るというSLが入ってくるとSLとホームの大きさがアンバランスなのではないかとも思うが、雰囲気的にはすごく合いそうで見てみたい気もする。

御花畑12:18→三峰口12:39 秩父鉄道三峰口行き

 駅員が肉声で放送を入れると、踏切が鳴って列車が近づいてくる。線路に向かって左手が三峰口方面かと勝手に思っていたが、左手側から列車が登場して驚いた。やってきたのは元々都営三田線で走っていたという5000系。
 年季の入ったロングシートに腰掛け、ブレーキが緩むと、列車は一気に加速していく。貨物列車の取り扱いがあり、構内が広い影森駅、大きな屋根とカーブしたホームが特徴の浦山口駅を過ぎると、両側の山々が次第に迫ってくる。山に挟まれた谷底の平地を抵抗制御の通勤型列車が快走していく。こういう“余生を送っている”車両が田畑や山に囲まれた路線で全力疾走しているのはとても好きで、特にこの路線はカーブが少なく直線的だからか、駅に近づくまで減速するようなことがほとんどないから気持ちよい。乗客は各車両数名ずつ、日差しと暖房で車内は適温で、いつまでも乗っていたいが、すぐに終点の三峰口に着く。

駅名標のデザインが良い
登場からは50年、秩父で走り続けて25年弱が経つ。

三峰口駅

 奥にはSLの転車台もあり、2面3線の比較的大きなターミナル駅になっている。木造瓦屋根の駅舎を出ると、錆がかったコカ・コーラの看板がお出迎え。道を挟んで反対側にはバス乗り場があり、三峰神社や駅周辺の観光地を紹介した看板が立っている。駅舎の真横には木のテーブルと蕎麦屋があって営業しており、ここの蕎麦もかなり美味しそうなのだが、さすがに連続で蕎麦2杯は断念した。

ジオコレで発売されてそう

 駅舎に戻ると、掲示板には開運入場券発売中の案内が。発売日を見てみると今日までとのことで、駅員に声をかけて1枚購入した。辰の形を模した入場券に絵馬のような台紙がついていて面白い。三峰口以外にもいくつかの駅で売っていたらしい。
 発車時刻が近づいてきて、改札のカードリーダーにpasmoをかざすと、目の前に停まっている列車のほうへ向かって歩く。全てのドアが閉まっていて一瞬面食らうが、なるほど手で扉を開ければよいのかと、手をドアにかける。手でドアを開けるなんて何年ぶりだろうか。昔広島に住んでいたころ、まだ半自動化される前の可部線のドアは冬になると手で開けていたが、最近なかなかないのではないか。こんなに重かったかと少し驚きながらドアを開けた。

三峰口12:57→羽生15:02 秩父鉄道羽生行き

 車内には数名、後ろの車両の適当な位置に腰掛けて出発を待つ。さて、この先の予定をどうしようか。とりあえず秩父・三峰口方面に行こうとだけ計画して家を出たから、この先のことは全くのノープランだった。路線図を眺めて浮かんだ案は2つ。1つ目は寄居で降りて東武東上線寄居~川越と東武越生線の乗り潰しをする、2つ目はそのまま羽生まで乗り通して東武太田線、佐野線あたりの未乗区間を適当に乗りつぶす。とりあえず寄居あたりまで行ってみて、その時の気分で決めることにしよう。途中で飽きたら熊谷あたりで途中下車してみても良いかもしれない。
 列車は山の隙間を駆け抜けていく。影森で列車交換をして、秩父盆地を抜けていくと、親鼻駅では貨物列車と行き違い。デッキ付きで大きなパンタグラフがサマになっている“デキ”が何両ものホッパ車を牽く姿は圧巻で、列車から風格と誇りのようなものが滲み出ている。ホッパ車をよく見てみると、なかには車掌室付きの”ヲキフ”が混ざっていて、写真でしか見たことのなかった緩急車の存在に胸が高鳴る。秩父鉄道の鉱石輸送はもうなくなったものだと勝手に思っていたのだが、これ恐らくJR線との直通廃止の時の記憶違いだろう。
 長瀞を抜けると、線路もカーブが多くなり、程よい速度、程よい日差しに適温で眠気が増してくる。こういう路線に乗りながらうたた寝するのは最高に気持ちいい。微睡んでいると寄居が近づいてきたが、このまま暫くこの空間にいたいから引き続き羽生まで乗り通すことにしようか。
 気が付けば乗客も多くなり、席はほとんど埋まって熊谷駅に到着する。ここで乗り換える人も多いようで、乗客がかなり入れ替わった。ここから終点の羽生までは30分程度、羽生から先の予定を考えることにしようか。東武鉄道の本線系で未乗なのは桐生線、小泉線、佐野線、鬼怒川線、宇都宮線。宇都宮線と鬼怒川線方面に行く時間は当然なく、桐生線に乗るなら同じタイミングで上毛電鉄やわたらせ渓谷鉄道に乗りたい。残る小泉線と佐野線を候補に予定を考えるが、佐野線の往復は若干時間がかかりそう、小泉線を乗りつぶすと太田から特急りょうもうに乗り継ぐことができる。今夜は日本代表の試合があって、できればそれまでに帰宅はしたいから、佐野線は桐生線に乗りに来るときにでも乗ることにして、今日は小泉線を乗りつぶすにしようか。
 新郷駅の手前、田畑の間を通る小さな道同士を結ぶ踏切があって、そこで中年の女性二人が話をしながら踏切が開くのを待つ姿が目に留まった。冬の田畑、少し西日気味の風景のなかで世間話をする人の姿、どういうわけかそれがとてもきれいな景色に思えて、心に刺さっていくような気がしたのだった。少し走っていくと住宅の数が多くなっていって、2時間の秩父鉄道の度の終着駅、羽生駅に到着する。

秩父鉄道を乗り通す人はなかなかいないんじゃないか

羽生駅

 乗り換え時間は約20分、10分くらい駅前でも歩いてみようかと、東口からロータリーに出る。タクシーが1台停まっている以外には人や車の姿もほとんどない。営業時間前の居酒屋、定休日の書店、そして営業中のカフェと郵便局、適当に散歩するには丁度いい街並みなのだが、コンビニで何か買おうかと思っていたのに自販機くらいしか見当たらなかった。あとで地図を見るとコンビニやスーパーがあったのは西口側のほうで、残念ながら逆側だったらしい。

羽生15:22→館林15:32 東武伊勢崎線館林行き

 駅に戻って、通過列車を一本見過ごすと館林行きの普通列車が入ってくる。車内は座席の3分の1くらいが埋まる程度で、終点の舘林に向かって進んでいく。西小泉で折り返し30分ほどあるからと適当に街の情報を調べていると館林駅に着いた。

2分乗り換えのわずかな合間を縫って撮った結果、逆光の雑な画に

館林15:34→西小泉15:52 東武小泉線西小泉行き

 西小泉行きの乗り換えは同じホームと聞こえたはずだが、目の前のホームに停まっているのは西小泉行きではない。どこだろうと一瞬見回すと、前側に切り欠きホームがあって西小泉行きはそこからの発車らしい。乗り換え時間は2分、駆け足気味で移動して乗り込んだ。
 西小泉がある大泉町は外国人が多い町らしく、この列車の車内も外国人の姿が目立つ。どういう理由で内陸のこの街に外国人が多く住むようになったのか少し興味深いが、パナソニックやSUBARUの工場もあるから、そういうあたりと関係があるのだろうか。
 そんなことを考えていると、太田方面との分岐駅、東小泉駅に到着する。向かいのホームに停まる太田方面行きと全く同じタイミング、同時に出発して、しばらくすると線路が分岐してお互いの車両の距離が離れていく。小泉町で数人組の外国人のグループが乗り込むと、終点の西小泉駅に着く。

エンブレムが輝く駅舎

西小泉

 駅を降りると国際色豊かな街らしく、日本語、英語のほかに中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語と6か国語で書かれた案内看板がある。駅前に出てみると各国の料理屋が並び、ポルトガル語らしき言語で書かれた商店が開いている。商店の中を覗いてみるとあまり見かけないような食品が棚に並んでいる。少し道を歩いてみると”TATTOO”と書かれた看板の店もある。一方で瓦屋根の建物やサッポロビール、FUJIYAの文字もあり、外国と日本が絶妙なバランスで止揚された独特な街並みが広がる。しばらく歩いていると、自転車に乗った小学生の集団に追い越される。全員がしっかりヘルメットをしていて、昔自分が子供の頃に地元で友人と自転車に乗っていたような頃にはなかった光景に郷愁に近い何かを感じた。

駅前の交差点の図。国際色豊かな様子が分かる。

 駅前からはいずみ緑道という遊歩道が広がっている。元々この先に続いていた貨物線の廃線跡のようで、地図で見てみると当時の終点に当たる仙石河岸駅に建てられた野球場まではっきりと路線跡が見えていて面白い。

西小泉16:25→東小泉16:28 東武小泉線館林行き

 定刻になると、どこかから軽やかなメロディが聞こえてくる。時報にしては時間が中途半端で、何の音だろうと不思議に思ったのだが、これは信号が開通した時に鳴るメロディだそうで、LINDBERGの「今すぐKiss Me」が元になっているとのこと。この街と曲に関係があるわけではないらしい。そのまま2駅進んで、1面2線の小さな東小泉駅に到着する。

東小泉16:30→太田16:39 東武小泉線赤城行き

 目の前のホームに停まる太田行きに乗り換える。日曜の夕方、車内は中学・高校生くらいの乗客が目立つ。駅間も比較的長め、夕日に照らされる住宅街とそこから垣間見える田畑を眺めていると、次第に高架に上がっていって、太田駅に到着した。
 少し長めの階段を下り、コンコースに下りる。特急券売機はホーム上にあるようで、とりあえずホームに上がってりょうもう36号の特急券を買う。どこか売店があれば軽食くらい買いたいが、駅構内にはないらしい。暫くすると当駅止まりの特急が入ってきて来て、折り返しのため車内清掃をするとのこと。伊勢崎方面からくるとばかり思っていたのだが、両毛36号は折り返し当駅始発らしい。自販機で適当に飲み物でも買って折り返し作業を待つ。

今日2回目の特急課金

太田16:57→北千住18:12 東武特急りょうもう36号

 指定券に書かれているのは2号車6A、太田駅からの乗客は各車両数名程度で、私の席の周りに他に乗客はいない。ホームを見るとおじいちゃんに会いに来た小さな子供の姿もあって、バイバイと手を振って別れを惜しんでいる。
 17時前、日も暮れて暗くなってきたなか、ゆっくりと太田駅を出発する。自販機で買った温かいはちみつレモン的な飲み物を飲んでみるが、思いのほか苦みがあってこちらは期待外れ。まあ程よく温まれるからよしとしよう。この列車はリバティではなく200系で、車内は旧国鉄型の特急車両のように小さめの電光掲示板があるくらいだが、こういう雰囲気の車内のほうがかえって落ち着くような気がする。
 館林駅を出るころには外は真っ暗になっている。各駅の乗降も少ない。車内は静かで、思わず眠りそうになってしまうが、私が買っている特急券は北千住まで。スマホでネットラジオを聴きながら耐え、無事に北千住駅到着前に自分の席を立った。

北千住18:19→大手町18:45 東武伊勢崎線・半蔵門線中央林間行き

 寒い風が通り抜ける北千住の地上ホームで今回の乗り継ぎ最後の列車を待つ。朝の時点で決めていたことは秩父方面に向かうということだけ、終着点も決めていなかったが、図らずもなんとなく出発点ということにした大手町駅に関東の北側を一周するような形で戻ってきた。約9時間、10本の列車の乗り継ぎと、いわゆる乗り潰し旅にしては小規模だが、土日にやるにしてはこれくらいの規模が丁度いい。今日撮った数少ない写真やメモを雑にまとめていると気が付けば半蔵門線内に入っていて、大手町駅に着いた。

あとがき

 これを書いているのは乗り潰しから2週間後、1月27日のこと。この2週間の間に大量に届いた”当選メール”によって私の今年の予定は埋まりつつある。6月から9月にかけて開催される田村ゆかりさんのツアー、北は新潟や仙台、南は熊本まで、無事手元に大量のチケットが来ることになったから、今年の夏は乗り潰しを進めながら色々なところを巡ることになる。移動手段や宿はどうしようか、どんな遠征記を書こうかと、半年先の予定に向かって早くも胸が高鳴っている。遠征先で今回ほど気まぐれな旅行はできないだろうが、去年の夏のツアーのように色々な景色が見られると良い。今回の西小泉みたいに特徴的な街があれば散歩してみたいし、御花畑駅の蕎麦屋のように旨い食事を楽しみたい、そして在来線や私鉄の特急を乗り継いで移動をしたい。夏に向かって旅行欲が広がっていく日帰り首都圏乗り継ぎ旅だった。

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