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おとなのゆかりちゃん祭り感想

なんだか威勢のいいことを言っているオタクがいますね・・・。

 終演直後、ぷかりさん橋の目の前で寒い夜風に吹かれながらスマホを取り出して書いたのがこの一文、普段のライブやイベントとはちょっと違う終わり方をして、余韻というか儚さみたいなものを感じていたのだが、それよりも何よりも一度は見て見たかったこういう雰囲気のライブ(座組的にはイベントだが)に参加できた嬉しさが勝って勢いでこういうツイートをしたのだった。

 昨日終電まで飲んで帰宅し、乙女モードを聴いて寝たから、少し遅めの起床。そのまま横浜に向かって、本人確認を済ませ、適当に(全く横浜らしくない)昼飯を食らって物販に並ぶ。物販で20人先に並ぶフォロワーさんを観測したり、ギリギリのところでタブレットケースを買えたりして、そこからはみなとみらい近辺を適当に散歩。昨日停泊していたダイヤモンドプリンセスはもういなくて、青森に向けて航行中らしい。ご時世が変わっていった象徴みたいな出来事に巻き込まれた船が元気に走ってるの、なんだか感慨深いものがあるな、そんなことを考えていると気が付けばスマホの万歩計は2日連続の2万歩をカウントしていた。

 開場して自分の席に荷物を置いて、偶然会ったフォロワーさんとお土産を交換したり(もらった羊羹をさっき書きながら食べたら美味しかった)、トイレに行った帰りに某先輩に手招きされたりと、それなりに気ままな時間を過ごし、開演を待つ。

おとなのゆかりちゃん祭り感想

 客入れのBGMが止まって、開場は暗転。一瞬の静寂ののち、流れてくるメロディは3拍子。水の流れを思い起こさせるようなイントロののち、落ち着いた雰囲気の中で少し低めの声で歌い始めるゆかりん。これは間違いない、先週の乙女モードで初披露された新曲「金魚」だった。なんと1曲目からこれが聴けるとは。一度生で聴いてみたいとは思っていたのだが、まさかここで『Altoemion』収録の曲が聴けるとは思わず、早くも夢がかなってしまった。個人的な話で恐れ入るが、この「金魚」は私が王国民になる前にいた界隈(いまでもCDは買うから過去形で書くと切ないが)の曲調やメロディライン、そして3拍子というところがよく似ていて、曲の雰囲気だけでいうとものすごく好みの"ど真ん中"にある。まさかゆかりんがこういう曲を出してくれるとは夢にも思っていなくて、ラジオで聴いたときから心が奪われていた。暗闇の中に一筋の光が差し込むように、静寂の中に輝く一筋の音色。それはとても綺麗で、そして優しさに溢れていた。歌と音色に魅了されるあまり、まだ歌詞をはっきり捉えられていなくて、このあたりは発売後に歌詞カードをじっくり読んで楽しみたいのだが、たぶん川島さんらしい深みのある歌詞なのだと思う。
 続いて「囀りのない部屋」。『Princess Limited』の中盤あたりの落ち着いた曲はとても好きで、そこの部分だけ聴くこともあるのだが、こちらも個人的には生で聴くのは初めて。ちなみにこちらも3拍子の曲で、数少ないゆかりんの3拍子曲が2曲続けて、それも1曲目と2曲目に置かれることなんて、今までならまずありえなかったのではなかろうか。私はこういう曲が頭から続くライブを一度でいいから見てみたいと思っていて(あと、1曲目が「花チル夜道」みたいなセットリストも見てみたい)、なんとまさかその夢がかなってしまった。
 3曲目は「シレーヌの心音」。TCツアーの頃の光り輝く衣装が思い起こされるところもあるが、冒頭から3曲続けてこんなに歌声の美しさ、綺麗さが際立つような曲が連続するとブラックホールみたいなものに吸い込まれてしまいそうな感覚になる。なるほど、“ゆかりちゃん祭り”だからてっきり10年前と同じ系統かと思って「めろ〜ん音頭」も復習していたのだが、こちらの方向性か、予想外だが嬉しい。

 MCで法被にハチマキ装備の王国民を一通り弄ると、続いてはスタッフさんのリクエストコーナー。まず最初の選曲は「赤いスイートピー」。言わずと知れた名曲で、ゆかりんが歌うとかわいさと曲が持つメロディラインの美しさが溶け合っていて圧倒された。続いては「少女A」、ミレニアムまであと2年というあたりで生まれた私でもギリギリ知っている曲で、少し低めの音域で力と感情を込めて歌う姿に圧倒された。
 そして6曲目、「友達でいいから」。この曲は全く知らなかった曲で初めて聞いたのだが、これが今回のライブで一番印象に残った。明るめの曲調に少し甘めのゆかりんの歌声、そしてやや危うさを感じさせる要素を持つ歌詞。特にサビのメロディラインがとても好み。あまりにも良かったから、改めて原曲を聴くのも野暮な気がして聴かないでおこうかとも思ったのだが、感想を書くにあたって歌詞を読みながら高橋由美子さんのものを聴くと歌詞が男性視点で書かれていて驚いた。ライブで聴いていた時は一言一句歌詞を解釈しているわけではないから、てっきり片思いの少女の歌とばかり思っていたのだが。おそらくライブで聴いたときにはゆかりんの声色や表情からそういう世界観に聴こえたのだろう。
 続いて、「貴方の恋人になりたいのです」。私はゆかりっくFesのブルーレイで聴いたことがあって、その時にとてもいいと思っていたのだが、まさかここで生で聴くことができるとは(Fesで歌っていた人と今ステージに立っている人の関係性とかそういうのは一旦考えないことにする)。ストレートなメッセージと心地よいメロディライン、これにゆかりんの優しさを感じさせる歌声が合わされば最強に決まっている。

 続いては桃色男爵とのコラボコーナー。まずはノリさんとのコラボで、ギターを片手に2人で歌うのは「世界中の誰よりきっと」。ノリさん歌うますぎる。wmツアーでもメタルのコーナーでそれが垣間見えていたのだが、ギター片手にその安定感はずるい。
 続くはキーボードのラビさんとのコラボで「寂しい熱帯魚」。緊張している様子のラビさんがゆかりんと腕を組むと曲が始まった。実は昨年夏に行ったとあるライブにラビさんことモチヅキヤスノリさんが参加していて、そこで激しくコーラスを入れる姿を見たことがあり、当時とてもびっくりしたのだが、今回は激しくはないにしても歌も振りも完璧だった。音楽になると途端にスイッチが入ったかのようにプロフェッショナルになるラビさんの姿を改めて見せつけられた。
 次は会長の番。ノリさんの口上とともに始まった曲は「銀座の恋の物語」で、いままで高円寺のカフェだったはずのパシフィコがスナックに一変する。気が付けば会長の片手にはブランデー、カフェとはどこに。会長の渋いダンディな歌声はカッコいい。途中から万札が首に掛けられ、優雅で煌びやかな夜の雰囲気が漂った。
 次はエンゼル。デュエットではなく、一緒に演奏したい曲として披露されたのは「丸ノ内サディスティック」。この曲は色々な人がカバーしている印象があって、誰のカバーを聴いてもその人の見たことのない一面が垣間見える。まさに今回のゆかりんも同じで、あまりこういう系統の曲を歌っているのを聴いた記憶がないこともあって新鮮だった。もちろん最高に上手い。これをうまく形容する表現を私は知らないのだが、やや粘度の高い何かが流れていくようなこの曲調の大人っぽさはまさに今回のイベントのセットやコンセプトに合っているし、何よりも演奏しているエンゼルが楽しそうだった。曲が終わって感想を求められ、何も言葉が出ないエンゼル。本当に幸せそうで充実感溢れた表情がそこにあった。
 最後はメリーさん。先程歌わなかったはずのエンゼルがなぜか巻き込まれ、ゆかりんとともに3人そろってヘッドセットをつけている。体が勝手に動くって言ってたよね?と客席に振りコピをするよう煽ると始まった曲は「Timing」。振り付きで歌うメリーさんとエンゼルの姿を見るのは普段とのギャップを感じて面白いが、ゆかりん含め3人とも完璧だった。最後には振りに合わせて「1、2、3」と掛け声が入って、見事に決まった。

 ドキュメンタリー的な映像コーナーが終わり、ラビさんとともにステージに出てきたゆかりん。ラビさんのほぼとなり、ステージ上手側のベンチに座ると、始まる曲は「you」。この「you」のようにピアノの要素が強いゆかりんのバラードは普通に聴くと心に刺さりすぎる気がして、普段あまり聴かない。私はSsLの時代を知らないので、SsLの時のこの曲の意味合いみたいなものは聞いた話でしか知らないが、TCの時は会場で聴いていて、そのときの涙ながらに歌うゆかりんの印象が強く、その後TCのDVD/BDが出てもその部分はあまりにも心に響くから直視しないようにしていて、まともに「you」を聴くのはTC中野初日以来かもしれない。あの時は悲痛や悲鳴に近いようなものに聴こえた"Don't say Good-bye"が今日は少し違って聴こえた気がした。
 男爵の残りのメンバーが入ってきて、続くは昨日の乙女モードで初解禁されたばかりの「夢のあと」。イントロのギターの音色がとても好きで、そこに続いてくるグロッケンみたいな音色も含めて美しい。そこにゆかりんのアルトの歌声が優しく入ってきて、シックな空間ができあがる。暗闇に滔々と輝く(そんな日本語はないのだが、私はサクマさんと川島さんの曲をこう表現したい)ようなところはサクマさん、川島さんがこれまで作り上げてきた曲たちと同じで、私の心に自然に入ってきて、そして心を震わせてくる。前の日にラジオで聴いたときも今回も歌詞を全く聴き込んでいなくて、歌詞は発売後にしっかり読み込もうかと思っていたのだが、これはライブ後の感情を表したものらしい。それを聞いて改めて聴き直してみると、たしかにそう思えてくるというか、ライブ、そしてその後の感情みたいなものを言語化するとこういうことなのだろうと思う。メロディも詞も好きで、多分発売されたら毎日のようにこの曲を聴くんだろうなと思っている。
 MCを挟んで次の曲は「だって×2ウキウキ」。まずはAメロのリズム感の速さと緩急に圧倒される。こんなことを言うのもどうかと思うが、滑舌はさすが。歌詞には銀座や有楽町のような地名が出てくる。高円寺は今のところ登場していないが、奇しくも本日3回目の銀座登場で少し面白い。
 ミュージカル的な雰囲気が漂った後に続く曲は「トラウマの耳たぶ」。『春待ちソレイユ』は個人的にとても好きなアルバムで、実は昨日ファンクラブイベントから帰る電車の車内でも聴いていたのだが、ここでセトリに入るとは全くの予想外だった。サビのコーラスのところで完璧にクラップを入れる客席も流石だが、なによりもゆかりんの歌声の艶というか色香みたいなものがすごく出ていて呆気にとられてしまう。
 MCで“日和ってセトリに入れた”と語ると始まったのは「Umbrella Sign」。振り付けのかわいさもそうだが、特に雨や傘がモチーフになっているゆかりんの曲は最高に良くて、この曲はずっと聴いていたくなる。私にとってはこの曲を聴くのも初めてで、ようやく聴くことができた嬉しさに浸っていた。
 落ち着いたイントロから“そばにいて”と始まったのは「Le paradis」。これもいつか聴きたいと思っていた曲で、今回セトリに入っていて感激した。ゆかりんの声の綺麗な部分が100%出ているような歌声に魅了されて聴き入ってしまう。歌われている世界観とは違うが、個人的には夜の落ち着いた時間に聴きたくなる曲で、そういう意味でもタイミング的に完璧で、改めてこの曲の虜になった気分だった。
 最後のMCを挟んで、いよいよ終盤に差し掛かる。続いては先週の乙女モードで初OAされた「null」。歌声にエフェクトがかかっているのが印象的で、“愛しているに似ていた さよならみたいな ありがとうに似ていた ごめんねみたいな”という詞に歌われる、言葉が持つ内包的なもの、裏表的な部分の表現がとても好きで、こちらも発売後に歌詞をじっくり読み込みたい。
 曲が終わると会場は暗転して、桃色男爵がステージを去る。今日はイベントでアンコールもないだろうから、そうか、次がラストかと少し寂しくなる。始まったのはこちらも前日のラジオで初めて流された「スーパーノヴァ」。なんと発売前のアルバムから4曲も披露された。ラジオで聴いたときにどの曲も早くライブで聴いてみたいと思っていたのだが、なんと1週間足らず、曲によっては一夜にして夢が叶ってしまった。こちらもサクマさん川島さんらしい曲で、歌声には優しさと凛々しさを感じる。曲を曲として浴びるのが精一杯だったからこちらも歌詞をしっかり認識できていないのだが、川島さんが書く詞なんて深いし巧みで好きになるに決まっている。2人が書いてゆかりんが歌う曲はどれも好きで、この2日間で何曲も聴くことができたのは本当に嬉しい。
 後奏でゆかりんがステージを去ると、鳴り止まない拍手。しばらくするとオルゴールのような音色が聴こえてくる。「うらはら兎のねがいごと」のオルゴールアレンジ。いつもとは違う終わり方で、そうか、これで終わりなんだと実感した。普段のようなフィナーレ感とは違って、流れていくような終わり方で、余韻と儚さみたいなものを感じる。記憶ごと流れていってしまいそうだが、まずは我にかえって今までの3時間を振り返る。こういうセトリ、流れのライブは一度は見てみたいとずっと思っていて、一方で“ゆかりちゃん祭り“という言葉に引っ張られていたからまさか今日とは思っておらず、完全に嬉しいサプライズだった。

 いつもこちらの想像の斜め上の世界を見せてくれるゆかりん、来週発売の『Altoemion』も期待しかないが、今回もとんでもなくすごいもの、これを計量する単位や形容する言葉を知らないのだが、そういうものを受け取った気がしている。おそらく何年経っても私は王国民なんだろうな、そんなことを考えながら帰路についた”夢のあと“だった。


終演後、寒さと興奮で何枚撮っても斜めになったうちの1枚


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