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第4回 おしっこトラブルの色々な形(その3)

おさらい

第2〜3回では蓄尿症状(頻尿や尿失禁)の原因には大きく分けて、過活動膀胱をはじめとする膀胱に起因するものと、全身疾患が絡む多尿/夜間多尿がある事をお話しました。今回のテーマは蓄尿症状とは逆の状態『排尿症状』です。排尿症状とは、ためたオシッコがスムースに出せない状態を指します。さらに蓄尿症状と排尿症状が共存するパターンについても触れたいと思います。


1. 排尿症状とは

排尿症状とはオシッコがスムースに出せないわけですが、具体的には以下のような状態を指します。

尿勢低下:勢いが弱い
尿線途絶:途中で途切れる
排尿遅延:出始めるまでに時間がかかる
腹圧排尿:排尿時にいきむ

図1


2.排尿症状(尿排出障害)の原因

排尿症状原因


(1) 通過障害(下部尿路閉塞)


前立腺肥大症: 通過障害を引き起こす最大の原因です。前立腺は膀胱の直下にあり、尿道を取り囲む臓器なので、肥大してくると膀胱を圧迫したり、尿道を締め付けます(膀胱出口部閉塞と言う)。排尿時、膀胱は尿を押し出そうと収縮しますが、縛られた風船の口のように締まった出口からは、尿はスムースには流れ出ません。これが通過障害です。治療にはα1遮断薬(膀胱出口の緊張を緩める)や5α還元酵素阻害剤(前立腺体積を縮小させる)等の内服治療が行われ、無効な場合は内視鏡での切除術が行われます。

画像9


尿道ポリープ: 写真1は膀胱出口部(膀胱と尿道のつなぎ目)にできたポリープ(良性腫瘍)ですが、たくさん出来ると尿の通過障害を起こす事があります。

尿道ポリープ

骨盤臓器脱: 経膣分娩の経験や、筋力低下してきた中高年女性が中心になります。骨盤底をハンモック状に支える骨盤底筋群の弱りから骨盤内臓器(膀胱、子宮、直腸)が下垂したり、酷くなると体外に露出してきますので、患者さんはお股から何か出た!とビックリします。膀胱が下垂してくると、尿道が押し潰され形が変形しますので、出口部閉塞が起こり尿の通過障害が起こる原因になります。治療には軽症ではペッサリーというリング状の器具を挿入しますが、図2の様に、重症になると下垂臓器を引き上げ固定する手術が必要になります。骨盤臓器脱は放置して良くなる事はありませんので、疑わしい訴えがあれば速やかに専門医へ紹介しましょう。近年、ウロギネコロジー科(ウロ:泌尿器科、ギネ:婦人科を併せた性質を持つ診療科)と標榜する医療機関が増え専門的な尿失禁手術が行なわれます。

画像2


(2)膀胱の働きに異常がある(低活動膀胱)

下図は第2回の「過活動膀胱」で示した図ですが、脳や脊髄といった中枢神経系は障害される高位によって、起こるオシッコ問題は変わってきます。脊髄ではTh12〜L2が境界と覚えましょう。

神経因性膀胱

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