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第2回 おしっこトラブルの色々な形(その1)


第1回の最後に、下部尿路症状の訴えは ①蓄尿症状 ②排尿症状 ③排尿後症状 に分類しよう、とお伝えしました(図1)。


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蓄尿症状の色々な形・原因を知ろう

今回はそのうち蓄尿症状(おしっこをためられない状態)ってどんな原因で起こるのか?という事を掘り下げて行きたいと思います。

主に以下の5要因が考えられます(図2)。では、1つずつ見ていきましょう。

蓄尿症状原因


① 膀胱に感染、炎症、物理刺激が加わっている

蓄尿症状を起こすものとして、最も一般的なものとして細菌感染が挙げられます。細菌性膀胱炎や細菌性前立腺炎ですね。鍼灸院での鑑別は困難ですが、頻尿の他に、排尿痛、残尿感、尿混濁等を認めるので、疑わしい場合は医療機関での検尿を促すと安心です。また急性(細菌性)前立腺炎では膀胱炎と異なって、発熱が重要なサインとなる事もあり、この場合、血清PSA(前立腺特異抗原)値の上昇によって診断されます。
 膀胱結石は、上部尿路で作られた結石が膀胱内に下降したものを指し、血尿で見つかる事が多く、膀胱刺激症状を呈する事があります。
 特に注意したいのは膀胱腫瘍です。実は膀胱癌も頻尿、尿意切迫感など膀胱刺激症状を呈することが知られており、痛みはない事が殆どです。最も頻度の高いのは肉眼的血尿で、膀胱癌患者の64%に認めると報告がある1)ので、基本的に高齢者の血尿は尿路の腫瘍(腎癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌)の可能性を念頭に置きましょう。
尿路感染、尿路結石、腫瘍は鍼灸不適応で、おしっこトラブルを診る際はまず泌尿器科的なスクリーニング検査(検尿、細菌培養、尿細胞診)を済ませておく事が大切です。


② 膀胱の働きに異常がある

過活動膀胱、神経因性膀胱とは、膀胱知覚の亢進、排尿筋過活動(膀胱の筋肉が過剰に収縮してしまう状態)が起こるために、頻尿、尿意切迫感(突然の抑えがたい強い尿意)、切迫性尿失禁(尿意切迫し間に合わず漏れる)といった症状を呈します。

過活動膀胱(Overactive Bladder : OAB)の概要

蓄尿症状として、皆さんが日常臨床で最も高頻度に遭遇するものの1つで、専門家はよく略してOAB(オーエービー)と呼びます。現在の国内の人口構成から患者数1040万人と推定され、その半数以上が尿失禁を伴っています2)(図3)

OAB疫学


【過活動膀胱の定義】 尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常は頻尿と夜間頻尿を伴う。切迫性尿失禁は必須ではない。

「尿意切迫感を必須」という点が重要で、かつ1日8回以上の排尿があれば診断されます。逆に言うと、どんなに頻尿でも尿意切迫感を伴わなければ過活動膀胱ではありません。患者さんの自覚症状ベースに診断される症状症候群の特徴で、一連の症候の原因はよく分からないけど、共通の病態を示す患者さんが多い場合、そのような症状の集まりに名前をつけて扱いやすく(効率的に診断/治療しやすく)したものなんですね。

過活動膀胱の原因分類を図4に示します。以下の2つに分類されます。

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