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リンポチェという存在

私にはリンポチェの友達がいる。

ブータンは世界で唯一のチベット仏教を国教としている国だ。
チベット仏教の祖、グル・リンポチェ。
この名前はブータンに住む人なら全員が知っている。
「リンポチェ」という敬称は「precious one」という意味で、色々な受け取り方があるようだが私の同僚の説明である「輪廻転生した人」という解釈を私はしたい。

私の情報は知り合いから聞いた話とネット上の情報にとどまるため、不確かな部分があったら申し訳ない。と先に断っておく。

チベット仏教では、人間は輪廻転生すると考える。
来世でよりよい存在になるために、今世で徳を貯める。
通常、前世の記憶は残らない。

しかし、リンポチェは前世の記憶があり、幼いころから前世の出来事を回顧できたり、前世にあった身体的特徴(傷など)を受け継いでいたりする。
仏教的に偉大な人の生まれ変わりである。
私やあなたが、リンポチェの父母になることもあり得るのだ。

私の友達はそのリンポチェである。

友人の紹介でリンポチェと出会い、普通に友達になり、その日のうちにその人がリンポチェだということを知った。
その頃はリンポチェが何かわかっていなかったので、ふーん、というくらいだった。

リンポチェの役割は、相談に来た信者たちの悩みを解決したり、大事な法要を行ったり、後輩僧侶を育てたりといういわゆる偉い僧侶だ。

リンポチェにも格があり、もともとの存在がどれだけ偉大だったかが重要となる。
彼は、特に偉大な存在の生まれ変わりだという。

ブータンでは僧侶といっても、外食もするし、お酒も飲むし、恋愛も結婚もする。
そういった規律はないし、信念に背かなければなにをしてもいいということらしい。

私はそのリンポチェとお酒を飲み交わし、クラブに行き踊った。
Instagramだって相互フォローだ。

そして今回、彼の実家に共通の友人とお邪魔することになった。
やや遠いため、日程は予定では7日間だったが色々あり出発が遅れたため6日間となった。

みなそれぞれ懇意の僧侶やリンポチェがおり、イベントごとに招いたり訪れたりして仏事を行っている。

通常リンポチェは僧院的なところに所属してそこに信者たちが出向くことが多いと聞いた。
彼の場合は修行のための山小屋はあるが、普段は自宅に信者を招いて施しをする。

彼は朝5時には起床し、訪問者が来たら対応をする。
それ以外の時間は書物を読んだり瞑想をしたりする。
夜遅くまでそれが続き、また朝が来る。
ひっきりなしに訪問者が来るため忙しそうだった。
病気の訪問者にお祈りや自分で薬を処方したり、農家の豊作についてや、家庭内の問題の相談に乗ったりなどをする。

彼は水と風を操ることが特に得意らしく、
天気を操ったり、水の上を走ったり、空を飛んだり、できるとのこと。

そんなこんなで家で過ごさせてもらったと言っても、だいたいの時間は私と友人とで喋っていた。
仕事の合間を縫って、運転手と一緒に街観光したり、自然豊かなところに連れて行ってくれたりした。
夜はほぼ毎日彼の部屋で酒盛りをした。

そんな6日間だった。

熱烈な仏教徒ではない私からすると、
彼はリンポチェである以外は、その年齢の普通の男の子だ。(私よりdecade若い)。
大人びているし、物知りだ。
用心深く、配慮もできて優しい。
その反面、ややわがままで構ってちゃんな部分もある。
私は彼をリンポチェとしてではなく、ただの一友達として接している。
しかし彼にとってそのような存在はかなり少ない。
だからその分私たちのことをすごく大事にしてくれるのだと思う。

彼はこれからもリンポチェという大きな役割を背負いながら、たくさんの人を救っていくのだろうなと思った。

一緒に公園行ったときの写真

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