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VTuber音楽をDigろう|2021年上半期10選

音楽系VTuberリスナーを自称しているあごひげ20cmです。

今回は「#2021年上半期Vtuber楽曲10選」という企画に参加して、この半年間で自分が好きになったVTuber楽曲を紹介します。企画の発案者は野良猫のユウさんです▼。

とても面白い企画だと思うので、他の記事も見てみてVTuber音楽をDigってみてください。きっと好きになる楽曲が見つかるはずです。

ではでは、あごひげ20cmが選んだ上半期の楽曲10選を発表します!
歌詞も抜粋して記載したので、曲を聴きながら紹介文もお楽しみいただけると幸いです。リンクを多めに掲載しておりますので、気に入った人がいたらぜひDigってみてください!!

01. 『薫風 恋しくなって』ヒニチ

 第一音から鮮烈なリフが鳴り響く、爽快なマスロックサウンド。5月になって夏が近付いてくる高揚感と、そんな高揚感を感じていた青春時代を遠く振り返る寂しさが楽曲全体を包んでいます。

いつまで経っても 大人になれなくて
いつだって誰かの 記憶に残りたいだけ

 曲の中盤以降は、機械音声のポエトリー・リーディングが挟まります。淡々と読み上げられる詞が、思い出の中の声のようにも、空想上の声のようにも聴こえてきて、その儚さに胸が詰まります。

『夏よりも夏の予感のほうが好きなの。』
そう微笑む君の頬を五月の空のシアンが伝った。

 VTuber音楽界隈ではまだ珍しい実写MVですが、このクオリティの高さと編集センスの光りっぷりも無視できません。美しすぎる自然の情景と、平凡で見慣れた都会の対比。それでも最後に映し出される初夏の都会の空は、鮮やかな青の余韻を残しています。

 ヒニチさんはVTuberとしての活動歴は浅いですが、活動3年目を迎えた実力派です。YouTube上で他に配信されている楽曲も良い曲ばかりで超オススメです。また、紹介した楽曲を含む6曲入りアルバム『蠢動する空白』がBooth上で販売されています。気になった方はぜひ購入してください。


02. 『春さめる』僕らのオープニング

 僕らのオープニングは、月ノ宮よるさんと樫野創音(かしのつくね)さんによる音楽ユニットです。作詞作曲の樫野創音さんのエモーショナルなギターと、月ノ宮よるさんの澄んだ声が共鳴して心地いい。この曲では、春の早朝の微睡みの中、徐々に世界が明るくなっていく様子が歌われています。

おはよう 世界はまだ夜を抱えたまま
飛び出した にじむ赤と
白む群青色の空 まだ眠いよ
朝 ぼやけた空 佇む月
混ざる色は 僕らのストーリー
触れる風でほんの少し 目を覚ました

 こういう時間の流れや情景の変化が感じられる楽曲、本当に好きです。歌詞に合わせてMVの背景も夜の空気から朝焼けの世界へと徐々に変わっていくところが見どころ。ラスサビでは2人が眩しい光に包まれます。

薄紅色が告げる毎日を
寝ぼけたまま見渡した
春の風が頬を少し かすめていく

 お二人は個人でも精力的に活動されています。月ノ宮よるさんは歌ってみたもたくさん投稿されていますし、樫野創音さんはEPやアルバムを発表されていてサブスク上でも聴けちゃいます。


03. 『キャスター、カートン』 Itsuki Miyamura × 夕凪みちる

吸って 吐いて 肺を満たした
白く燻る甘い煙
去って 消えて 底に落とした
滲んで融ける苦い痕

 この記事を書いている最中に発表され、急遽この10選にねじ込むほどに自分はこの楽曲に惚れました。Itsuki Miyamuraさんが作曲されたシンプルで心地よいトラックに、夕凪みちるさんの切ない詞&諦めの滲んだような歌声が合わさります。すごく上質の失恋ソングです。

鏡ごしに覗いた昨日の残り香を
上書きするように今日もひとり火を点けてく

 Itsuki Miyamuraさんの作るトラックは、スロー~ミドルテンポでも聴き飽きさせないのが特徴かなと分析しています。実際、自分はこの曲が発表されてから1時間以上リピートして聴きました。中毒性はないので安心してください。
 オリジナルだけでなく、VTuber楽曲のRemixも発表されていて、どれもSUPER CHILLって感じです。作業用BGMにどうぞ。

キスが苦く変わる程に
積みあげてたカートンの山
傷が深く重なる前に遊びは捨ててオシマイにしよう

 一方、夕凪みちるさんは詞を書く天才だと思っています。押韻の気持ちよさ、情景/心情の描写の細やかさ、比喩表現の豊かさ。どれをとっても一級品です。ダジャレも上手い。また、MVへのこだわりっぷりも尊敬して見ています。
 夕凪みちるさんは、LazuLという音楽ユニットで作詞・ボーカルを担当されていて、『Milkyway』というアルバムを発表されています。そちらはアイドルポップス寄りの曲が多いため、今回の楽曲のビター加減とのギャップに自分はやられました。ぜひ聴き比べてみてください。


04. 『だいじょうぶ』東 雪蓮

 東 雪蓮(あずま せれん)さんの初のオリジナル楽曲です。甘~い声でツラい日々にそっと寄り添ってくれる、とても優しい歌です。

大丈夫 そう 大丈夫
君のことは君が一番わかってる
少しずつでいいよ まだ先は長いから

 サビのフレーズにはとても救われました。私事で恐縮ですが、自分は絶賛就職活動中でして、企業からのお祈りラッシュのときにこの曲をよく聞いていました。皆さんも辛いと感じる時期にぜひ聴いてみてください。心がじんわりと温かくなります。

大丈夫 そう 大丈夫
へたくそなんて みんなも同じだよ
せめて諦めないで あがいてみて この先も

 余談ですが、このエモーショナルなトラックを作られたのは[ahi:](あひぃ)という音楽系VTuberユニットです。華やかでテクニカルなトラックを作らせたら右に出るものはいません。「mandala」「kumoru」というインスト盤もおすすめですが、一番聴いてほしいのは7組の音楽系VTuberがボーカルとして参加している「[FLaSh!!]」というアルバムです。

 東 雪蓮さんはYouTube上で歌ってみたを多数投稿されているだけでなく、『Love-in-a-Mist』というEPも発表されています。サブスクにもあるのでぜひ聴いてみてください。


05. 『8月のモラトリアム』幽夏レイ

 幽夏レイ(かすかれい)さんの1st Single。バーチャルねこさんの蜃気楼みたいに幻想的なトラックに、幽夏レイさんの気怠げながら芯のある声がふわふわと漂います。抒情的な詞を書かれたのはかしこまりさんというVirtual Singerです。

波にまだ揺られてる
眠い 軋んだ髪をほどいて
坂を登ってく 自転車 汗が 滲んで
濡れた髪がまとわりついてく

 初めて聴いたときは、淡々とした曲展開ということもあって、正直あまり印象に残りませんでした。しかし、聴けば聴くほど胸に沁みる曲で、気付けば何度もリピートしていました。うだるような夏の午後、暑さのあまりぼーっとしている情景が自然と目に浮かびます。トラックも詞も歌も見事に合わさって、本当に味わい深い作品になっていると思います。

かすかに覚えてる夢
ぐしゃぐしゃにした思い出
溶けてゆく アイスキャンディ

 幽夏レイさんは、つい最近『ファジーブルーの僕らは』という2nd Singleも発表されました。そちらは、歌声の幅が広い楽曲になっており、幽夏レイさんのまた違った魅力に触れられます。爽やかで夏っぽいトラックとは裏腹に、青春の葛藤が歌い上げられていてエモいです。


06. 『都市伝説』メトロミュー

 音楽を作りながら宇宙をひとり旅しているメトロミューの5th Single。浮遊感のあるエレクトロなトラック、儚げなウィスパーボイス、そしてHYPERSPACEさんが作り上げる唯一無二のキャラクター像と世界観。他にはない存在感を放つVirtual SSWです。

ベランダに出て
踊る星がきれいだねって凍えて話してる日々
どこに行けばあるの

 『都市伝説』は、メトロミューの楽曲の中でも一番寂しさが漂う楽曲です。宇宙をひとり旅しているメトロミューの、誰かと交流する時間やのどかな日常への憧れ。感染症の流行によって多くの行動が制限されている現在、我々が感じている不自由さと重なるものがあり、胸に響きます。

どきどきストレスはやだ
妄想したいしたい浮かれたい

 上記の部分で一瞬だけ映る「※妄想したいしたい体操」だけはどうか見逃さないでください。他の場面でもすべての造形が可愛いんですが、ここの瞬間最大風速の破壊力は本当に凄まじいので。

まわるよレコード踊る
君がいた部屋 メロディー 愛をつらぬけ
君を待っているよ

 メトロミューは、オリジナル楽曲の他、cover動画もたくさんYoutTubeに投稿されています。どれも宇宙的なエレクトロアレンジがされていて素晴らしい出来です。また、『STELLAR BOX』というアルバムを最近発表されました。アルバムを聴いてメトロミューと一緒に宇宙を旅しましょう。


07.『Rainy proof』HACHI

 HACHIさんは、清々しいほどに伸びやかな歌声が持ち味のVirtual Singerです。この2nd Singleは、陰鬱な現状を吐露するような歌い方と、サビで負の感情を発散するような歌い方のギャップが素晴らしいです。

Rainy proof 君が望んだままに
Rainy proof タバコもやめていたけど
その全てに意味がなくなれば
私はまた火をつけるだけ

 恋人といるときに相手に合わせて我慢してしまう部分って、多かれ少なかれありますよね。そんな我慢も意味がなくなり「また火をつけるだけ」という言い回しは、直近の失恋を過去のものとして割り切るための強がりに見えます。
 ところで「~proof」は「~に耐える、抵抗する」といった意味の英単語ですが、造語であるRainy proofの意味合いを考えると、この「強がり」が当てはまるんじゃないかと自分は解釈しています。

愛せないなら愛せないなりの
愛し方を探してよ まあいっか
助手席に座ることも
座らせることだって二度とないから

 未練まじりの非難と、それを「まあいっか」と振り切ってしまう瞬間。この感情の揺れ動きを、HACHIさんは見事なまでの表現力で見せつけてくれます。初めて聴いたとき、涙腺が枯れるほど心を揺さぶられました。
 また、悲嘆の中で揺れ動く感情を、五感の描写だけで表現されている以下のフレーズも印象に残ります。匂いにフォーカスが当たり、次に雨音へと意識が向く。目に映るものがモノクロに見え、また雨音に耳を傾ける……というように。

ぺトリコールが匂い立つ
雨音が強くなる
いま全て灰になる
雨音が強くなる

 HACHIさんは色んなジャンルの音楽をどれも上手く歌いこなされていて聴き応えたっぷりです。最近もDJ WILDPARTYさんと[ahi:]とのコラボ楽曲『アイソレイション』を発表されたり、5th Single『Greyword』がゲームのテーマソングに起用されたりと、目が離せません。ぜひ聴いてみてください。


08. 『駆ける、止まる』長瀬有花

 楽曲だけでなくMVも特に素晴らしい曲その1。RIOT MUSIC所属の長瀬有花さんの初のオリジナルソングです。どこかにある”答え"を探して、右往左往したり、堂々巡りしたりする曲です。

駆ける 止まる
振り返って戻る(目を閉じる)
一つ 二つ 進む度
はてなが 増えた

 長瀬有花さんは「だつりょく系アーティスト」という自称どおり、リラックスした癒しの声が特徴です。高音もしっかり出ているんだけど、力んでいる感じではない、不思議な感覚。たくさん聴いていても疲れない声質がクセになります。

まわる 地球儀のダンス
眺めて眠ろう
アナグラムに隠された
誰かの日々と共に

 この素敵なMVを作られたのは映像クリエイターののんたんさん。3Dの造形といい、動きといい、配色といい、洗練された魅力で惹き込まれる映像です。実は、自分がこの楽曲を知ったのは、自分の好きなデザイナーがこのMVをベタ褒めするツイートをしていたことがきっかけでした。
 映像に興味をもって再生してみると、魅力的な歌声、動いたり止まったりする楽曲展開、そしてそれらを視覚表現に落とし込んでいる映像センス。この全てに自分は魅了されました。何度も見たくなるMVです。

答えは(一つじゃない)
きっともっと側で見つかる(目を凝らして)

 長瀬有花さんはYouTube上に歌ってみた動画をたくさん投稿されています。どれも歌声の持ち味を活かした素敵なアレンジに仕上がっています。何気に映像のクオリティも高い…!なお実験的に三次元の動画投稿もされています。


09. 『アノニマス』高峰伊織

 楽曲だけでなくMVも特に素晴らしい曲その2。高峰伊織さんが複雑な変拍子を感じさせないほど軽やかに歌い上げるのが印象的な1曲です。

歴史書の余白に生きた 失われた
幾千億のアノニマス
今日を謳歌してはいても いつの間にか
「私」は薄れてゆく

 アノニマスとは「匿名の、無名の」を指す英単語です。この曲では「歴史に名を残さない者たち」という意味合いで使われていると、自分は解釈しています。名は残らないけれども、これまでに歴史を積み重ねてきて、今後も継承していく無名の人たち。

遥かな未来では 私の墓標はもう無くて
けれど足跡なら
あの村に あの街に あの海に あの空に
あの星に あの人に 世界の隅まで

 MVでは様々な世界観/時代観が交錯しています。タコの怪物が暴れている現代的な世界観かと思えば、見慣れぬ形状の宇宙船が墜落の危機に瀕し、墜落した先では松明や壁画といった古代的な営みが描かれます。そういったバラバラに見える世界を1つに繋げるものとして、無名の人たちの「継承」を歌っているのだと思います。
 この素敵なMVを作られたのは巡宙艦ボンタさん。古き良き映像技術を試行錯誤でキャッチアップしつつ、独特の世界観を構築される映像クリエイターです。『Born To Be』、『星凪の地』といったMV作品も非常にオススメ。

この「現在(いま)」が繋がる何か 
ここからじゃ視えないけど 預けるよ 
旅をする 君の手に

 高峰伊織さんは、歌唱力が高いだけでなく、リズム感・グルーヴ感においても飛びぬけている存在です。Jazz Cover EP『Daydream Jazz』、オリジナルEP『POLESTAR』、アルバム『Eudemonia』など、難しい曲をさらりと歌いこなす姿がかっこいいので、ぜひ聴いてみてください。


10. 『インベーダー・ラブ』あくまのゴート feat.アザミ, アラン(from memex) , 江戸レナ, ころねぽち, Ci(from BOOGEY VOXX), 羽子田チカ

 楽曲だけでなくMVも特に素晴らしい曲その3。あくまのゴートさんの突き抜けるような力強いボーカルと、豪華すぎるゲストボーカル陣による可愛いながらも不穏なコーラス。明暗が入れ替わるような展開に引き込まれる1曲です。

ドナドナ音が聞こえたら
イチニイサンと呼ばれたら
最後に一つアイラブユー
つまるとこぼくら未来はない

 宇宙人が地球を侵攻する様子を、インベーダーゲーム風の映像でさほど深刻でもないように描く表現には脱帽しました。対空砲が宇宙人を墜とそうと弾を撃つも届かず、一方的に撃破されてしまいます。細かいですが、対空砲がやられるたびにスコアが加算されています。つまり、プレイヤーは宇宙人側を操作してるんですよね。
 この見どころが多くて語り尽くせないMVを作られたのはアイゼンさんです。イラストやLive 2D作成もこなすマルチクリエイターロボット。背景画を描かれたのは姫騎士タルツーさん。楽曲とMVの相乗効果で、本当に素敵な作品になっていると思います。

See you later, aligator.
Okey-dokey, it's allright.
明日も晴れるでしょう
あなたと合言葉
ソ・ソ・ソラシド

 ゴートさんの作る音楽は、キャッチーで耳に残るフレーズが多いです。この曲も、数回聴いただけでもサビを口ずさんでしまう中毒性があります。
 一方で、曲や歌詞のいろんなところに疑問が残るような"仕掛け"があるのもゴートさんの作風だと思います。この曲だと「途中の呪文詠唱はなんだ??」とか。隅々まで趣向を凝らして作品を完成させる悪魔なので、気になる方はBoothで楽曲を購入しましょう。長文のライナーノーツがたっぷり読めます。
(※ちなみに呪文の正体が知りたい方は【https://youtu.be/3QniGwH9-K0】を見てください。背すじがピリッと凍ります。)

万物霊長ピラミッドなんて
思い上がっていたのはどっち?
あたしは世紀の大悪女だけど
そんな歴史すら残らない

 ゴートさんは自身のオリジナル曲だけでなく、VTuberの方々に楽曲提供をたくさんされていたりもします。意外なところでは「防音室レビュー」や「YouTube広告の出し方」などの講座動画も出されています。最近、2ndアルバムがサブスク解禁されたので、1stアルバムと併せてぜひ聴いてみてください。

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以上、あごひげ20cmが選んだ上半期の楽曲10選でした。
上記10曲をまとめた再生リストはコチラ▼。

同時投稿した記事では、「なぜ(現実のミュージシャンではなく)VTuber音楽を聴くのか?」という問いに答えてみました。併せて読んでいただけると幸いです▼。

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また、27組の音楽系VTuberを紹介した過去記事もあります。「コイツ、選曲センスあるな」と思っていただけた方はぜひご覧ください▼。


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