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好きだけど、好きじゃなかったThe Smiths

WOWOWで録画しておいた「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」を見た。

公開当時から気にはなっていて、ザ・スミスの楽曲をふんだんに使っているそうだから、作業しながらかけ流しておけばいいか…と気軽に再生し始めたら、これが思いのほか刺さってしまった。

そもそも、私は世代的にザ・スミスど真ん中でありながら、意識的に彼らの音楽を避けてきたのだった。
洋楽はよく聴いていたから、自然と耳には入っていた。バイト先のカフェバー(!)には「ザ・クイーン・イズ・デッド」のLP(!)があったし、もしかしたらその前のアルバムも揃っていたかもしれない。
映像は見ていなかったので、彼らのルックスや年齢については何も(当然、モリッシーの眉毛も)知らず、音だけでの印象だったが、ジョニー・マーのキラキラしたギターとメロディラインはすごく好みで、今聴いても、好きで好きでたまらない!モリッシーのヴォーカルだって嫌いじゃない。だが…

「『心に茨を持つ少年』だと?!これはヤバい!」

本能が告げていた。
たぶん、歌詞は危ない。きちんと歌詞カードを見て聴き込んだら、のめり込んで引き返せなくなるだろう。間違いない…

この予感は当たっていて、年齢を重ねて冷静に聴けるようになったはずの今現在でさえ、いったんザ・スミスをかけ始めるとエンドレスで止められなくなってしまうのだ。
「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」に続いて、これまた劇場で観て、どハマりした「イングランド・イズ・マイン」を見始めてしまった(こちらはU-NEXTにあった)。

ヤバいヤバい。今でも十分ヤバい…
脳内にこだまする♪うぃ~りあ~あぁむうぃ~りあ~あぁあ~あぁ~あぁ~ああぁあ~♪

実は、「イングランド・イズ・マイン」の方がヤバかった。
劇場公開当時、モリッシーがモリッシーになる前の話だというので興味がわいたのだったが、結果としては自身のトラウマをえぐられ、見せつけられることになってしまった。

似ている。
私も田舎町の実家の2階で、悶々と布団をかぶっているような少女時代を送っていたものだった。モリッシーのように創作はできなかったけれど、なんとかこの町を出て、しがらみのないところで暮らすことを願い、幸いそれがかなって現在に至る。
ちょうどその実家から、親戚の訃報の連絡があった。コロナを考慮して帰省は控えたが、母に香典を託し、弔電を打つなどしているうちに、否応なくあの頃の気分に引き戻されてしまった。

「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」は、劇中で使用された楽曲の歌詞にまで字幕がついている。ちゃんとシーンに見合った曲が選ばれているので、当然の配慮だろう。
それで、今まで避けてきた歌詞の意味を知りつつある。

なお、ミューズの「スターライト」の歌詞に元ネタがあったこともわかった。

The ship is taking me far away
Far away from the memories
Of the people who care if I live or die

ザ・スミス – ヘヴン・ノウズ・アイム・ミゼラブル・ナウ

In my life
Why do I give valuable time
To people who don’t care if I live or die?

うーん、真逆のことを言っているようでいて、実は同じだったりして…?
「マシューの歌詞にしては分かりやすい」「ストレートなラブソング」とかいう感想を見かけるけど、本当か?

I just wanted to hold you in my arms

ここ、過去形なんだけど…
マシュー・ベラミーだって、そんなに素直じゃないだろう。

サブスクでは飽き足らず、ザ・スミスのアルバムをDLする日が近いかもしれない。
いや、やはりそれは危険なので、紅茶を淹れてトーストを食べよう。

もしもこのままスミス沼にハマって、浮かび上がれなくなったら…

死して屍拾う者なし。


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