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「父からの1万円」辻家の人々 第26話/文:辻ヤスシ

レジェンドプロ野球選手、その息子から見た家族の肖像。辻発彦の子として育った筆者・辻ヤスシが描く自伝的小説!第26話!

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---では、本編をお楽しみください---


辻家の人々 第26話
「父からの1万円」


とある日の夜のことだった。

野球部の練習でクタクタな僕はいつものように手も洗わずに食卓に着き、学生服のままご飯を掻き込んでいた。すると、その姿を見ていた父親が近くに寄ってきてスッと1万円を僕に差し出した。

父親は僕に対して、お金に関する点では非常に厳しかった。それは小さい頃からずっとそうで、特に決まったお小遣いをもらうこともなく、友達と公園で遊ぶ際にジュース代をたまにくれる程度。それぐらいでは厳しいとは言わない、という声も聞こえそうだが、小学校の高学年や中学生ともなると周囲には毎月お小遣いをもらっている友人が当たり前のようにおり、ウチは厳しい…という思いを抱くのは無理もないだろう。

とにかく、欲しいおもちゃやゲームなどは、クリスマスか誕生日…といった特別な日にしか手に入れることができなかった。

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