すげぇ女の話。
友達に一個上、同級生、一個下全学年コンプリート(彼氏にした)猛者がいた。
飛び抜けて美人なわけではないけど愛嬌があってかわいい。どんな男子にも積極的。
私は高校時代、日本の鉱山資源かの如く人間関係、特に男子とのそれが枯渇していたため、モテ女=恋愛市場における富裕層にゴマをすりまくり安価(フレンチクルーラー)で恋バナを輸入していた。また、恋愛テクとかいう、そもそも異性との関わりがない女子校では毒にも薬にもならない代物までご丁寧にドーナツを包む謎ツルツル紙にメモしていた。それをここに記そう。
①目があったらとりあえず瞬きを多くしろ
②痰がからんでなくてもエロく咳き込め
③ハンドクリームを多めにとって相手に分けてやれ
おい、ざけんな。よくわからねぇYouTuberがでかい出版社の口車に乗せられて書いた巻頭に薄着のグラビアがついてる自伝か?〇〇明王の金言だとか、満月の日に人が二分化されるとかほざくおばさまが書いた、世間に流布しているわけではなく一定の人が複数購入ために売れ行きがいい自己啓発本か?NAVERまとめか?
そんな薄っぺらいtipsをさも自分が編み出しましたでございと語ってんじゃねえよ。出し惜しみしてんじゃねぇよ。こっちが聞きてえのはてめえのsoulからの言葉であって机上の空論じゃあねえんだよ。ミスドのテーブルがちゃぶ台じゃなくて命拾いしたな…
えっ?
私はここで恐ろしいことに気づくのである。
まさか…この女は全部実践している…?
口の周りの粉砂糖をやけに生々しく親指で拭き取る彼女の瞳には一点の曇りもなく、それでいて、富岡製糸場にお雇い外国人を呼んだ近代日本資本家と同じ、獣の目をしていた。
どの世界も実践がものをいうのだ。どれだけ高尚な考えとも、何年も干していない布団の上でゴミと一緒に寝ているなら、それは哲人ではなくニヒリズムという都合のいい盾に守られたニートである。
田中角栄を見てみろ。中卒でもすげぇぞ。
どんなにcheapで擦られたモテテクだって、あんたという付加価値がついたらすげぇぞ。
恋は概念じゃない。理論じゃない。実践だ。
タイル張りの床を確信という音を立て、一歩ずつローファーで進む彼女の背中が、そう語っていた。
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