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留学はもちろん、海外に住んだことのない私が英語を習得できた私の英語習得法01

第1章 英語の習得を始めるときに考えていた方がよいこと


 英語を習得しようと努力し始めてから、長い時間がたちました。その中で私自身のことからだけでなく、周囲にいる英語学習者の人々の様子からも、いろいろなことを学んできました。ここで書く内容は、そのような学びに基づいています。実際、私自身が英語習得の活動を始める時には、以下の内容について、それほどはっきりとしたイメージを持っていたわけではありません。しかし今では、以下の内容を最初からもっと意識していれば、もう少し効率よく学習できたのではないかと思っています。

・英語を学ぶ目的は何か?
 英語を学ぼうと決めたときに考えておくべきことがいろいろありますが、その中でも重要なことの一つが、英語を学ぶ目的です。この辺をあまり細かく考えていない方の場合は、 “英語を学ぶことが目的だ”と漠然と考えることが多いようです。私が、英会話学校や英語学習の取り組みなどの活動で多くの人を観察したことから得た印象では、”英語を学ぶこと“はあまり良い目標のようには思えません。
 私の考えでは、目的として重要なのは”英語を学ぶこと“ではなく、“英語で何をするか?”の“何?”の部分だと思っています。英語を学ぶことが目的の場合、どういう場面で自分の英語の進歩の度合いを測るのでしょうか。そこが漠然としていると、モチベーションが徐々に落ちてくる可能性があります。何故なら、英語を学ぶために多くのエネルギーを使っても、最初はそのエネルギーに見合った達成感は中々得られないからです。最初は遅々とした歩みのように思われることが多いでしょう。
 私の場合の最初の目的は、”国際学会において英語でコミュニケーションが取れるようになる“でした。このような目的であれば、国際学会に参加する経験を積むことによって、自分の英語がどのように進歩していっているかを自分で自覚することが出来ます。つまり、達成度のフィードバックを得ることが出来るのです。従って、習得へのモチベーションを維持することが出来ますし、実際にそうでした。

・英語を学ぶ当面の目標
 大きな目的が決まったとしても、多くの場合に、すぐに成果が上がるわけではありません。その為、英語を学んでいく上での当面の、身近な目標を決めることが必要だと思っています。私の場合は、この意味での目標も当初ははっきりしませんでした。しかし、初期のいろいろな活動の中で得た気づきから、私の場合は、まず発音練習を当面の目標にしようと決心しました。この辺の細かな経緯は後々書いていきますが、現在でも正しい発音の習得は英語学習の重要な要素であると思っています。
 但し、発音が重要だからと言って、その他の学習をしないわけではありません。リスニング(昔はヒアリングと言っていましたが、listening comprehensionの方が適切だと思います)の練習や、基本的な構文や語彙を覚えることも重要です。しかし、大変興味深いことに、発音練習をしっかりすることがリスニングの向上にもつながることが、続ける中ですぐに分かってきました。いろいろな発音の要素を細かく練習していくと、実際の会話の中で、自分のリスニング力が上がっていることを自覚する瞬間が出てきます。そうすると、さらにモチベーションが上がってきます。

・英語習得のための行動を習慣化する
 次に重要なのは、英語習得の活動のための時間をどうやって確保するか、ということです。週に数日、一日数時間の英会話学校での授業だけでは、急速な学習効果は期待できません。これについてもいずれ書いていきますが、英会話学校に通っていても、その時間だけで英語力を上達させるのは難しいと思います。英会話学校の時間は、実は英語のアウトプット(出力)のための時間なのです。その時間に向けて普段の生活の中でインプット(入力)しておくことが重要なのです。インプットのための時間として、普段の生活の中で発音を練習したり、構文を覚えたり、語彙を記憶したりして、入力しておくのです。そして、入力しておいたことを、英会話学校の時間の中で出力するのです。
 私が通っている英会話学校の生徒さんは、社会人がほとんどです。当然何らかの仕事を持っています。彼らがよく言うのは、英語学習のための時間が十分にとれない、ということですが、私はその話を聞いていていつも”本当に時間はないのでしょうか?“と質問したくなります。私の場合は、英語学習のための時間がないということはありませんでした。何故かというと、生活の中で普通の人が活用していないスキマ時間を有効に使っていたからです。一番有用な時間は、通勤などの移動のために使う時間です。私が英語習得を始めたころには既にウォークマンが世の中にありました。ウォークマンのような機器を使えば通勤時間にいくらでも聞くことが出来ます。また、車を運転している場合には、ラジオではなくカセットテープを聞いていました。
 ウォークマンの為のカセットテープを準備する時間が必要になりますが、その時間が持てないほど忙しい人は、普通はいないでしょう。(もしもそういう人がいたとしたら、間違いなく働きすぎです!)私の時代には既にラジオ番組を録音できるカセットレコーダーがありましたから、それでラジオ番組を1週間分録音しておいて、次の週に通勤時間やいろいろな移動時間を使ってそれを聞いていました。
 こういう風にすると、毎週一定のリズムで学習するようになります。つまり、英語習得のための時間が、習慣化するのです。この習慣化も重要な要素になります。ほぼ同じ時間帯に練習をすることによって学習行動が習慣化します。そうなると、あまり余分なエネルギーを使うことなく練習を継続することが出来るようになります。

・英語の進歩の仕方の特徴
 英語の進歩の仕方にある特徴が認められることを、皆さんご存じでしょうか。この特徴は私の英会話仲間の間でも共有されています。これについての詳しい情報も後々書こうと思っていますが、重要なことは進歩の仕方は一直線ではないということです。
 沢山のエネルギーを使って英語の学習をしたとしても、使ったエネルギーに比例して直線的に英語が上達していくということは、まず起こりません。進歩の仕方は不連続で、階段状になるのが普通です。つまり、いくら練習しても、しばらくは全然進歩せずに同じレベルに停滞しているように感じられる時期があります。特に練習を始めた初期に、停滞した時期が長く感じられるかもしれません。それでも頑張って練習を続けていると、あるとき何かのきっかけを境にして、自分の英語が少し進歩したことが分かる時期が来ます。一つ階段を上がったような状態です。
 しかし、残念ながらその後は、また同じレベルの状態がしばらく続きます。それでも頑張っていると、またある時、階段を一つ上がっていることに気づきます。つまり、進歩の仕方はゆるやかでフラットな部分が長い階段状なのです。特にこういった経験を自覚するまでは、多くの人は頑張っても進歩しないように感じられて、途中で学習を辞める人が出てきます。きっと、何回かこのような進歩の仕方をして、様子が分かってくると、学習を続けることが容易になってくるでしょう。

・“映画を字幕なしで理解する”は有効な目標か?
 最後に、多くの人が目標に挙げる、”映画を字幕なしで理解できるようになる“という目標について、私が考えていることを記しておきます。この目標について「ありか、なしか?」と訊かれたら、私の答えは、”Yes and no!” です。その理由は以下の通りです。
 私も最初の頃に、この目標を持っていたことがありますので、これを目標にしたい気持ちはよく分かります。もし、目標とする映画が特定の映画(複数)であり、貴方が大好きな映画で、何回も飽きずに見ることが出来るのであれば、字幕に頼らずに、その映画で話されている英語がそのまま分かるようになりたい、という目標は“あり”だと思います。
 しかし、あらゆる種類のどんな映画でも字幕なしで見ることが出来るようになりたい、ということであれば、英語が母国語ではない人にとっては達成不可能な目標のように思えます。何故なら、このレベルに到達できるということは、ネイティブ同士の会話に入っていって全く問題なく会話に参加できるレベルになる、ということと実質的には同じだということです。これは、以前書いたように、希望することはできても、到達するのは難しい目標であり、高すぎると感じます。移住して英語が第一言語の国に長年住めば可能かもしれませんが、私が置かれている環境では不可能だと思います。
 以上のような簡単な説明では納得されない方もいると思いますが、いずれ詳しく議論したいと思います。

・現在の私の目標は?
 これまでの説明と矛盾するようですが、今の私には特定の目標はありません。何故なら、英語を話すことが苦痛ではないからです。むしろ楽しくて仕方がないのです。英語で楽しい会話をする時間を持てていますし、英語でいろいろな情報を読んだり、聞いたりして好奇心を満たし、英語を話さない人は知らないような興味深い情報を得ることが出来ています。死ぬまで英語を話し続けるのは間違いありません。

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