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金継ぎ、ゴムの木、長く引き延ばされた一日。

随分前から、趣味で金継ぎをしている。
趣味で、というか、やむにやまれず自分でやっている。

私は料理好きが高じて器を収集する癖があるのだが、そんなに高いものはもちろん買えないが、コツコツ集めたものはみんなそれを作った作家がいて、一つ一つに思い入れがある。

ある時そのうちの一つを欠いてしまい、仕方なく買った店に同じものを求めに行った。しかしもちろん手作りのため、同じ商品とは言ってもかなり風合いが違う。
私が店でそれを手に悩んでいたら、経験豊富そうな店員さんが「無理にお買いにならなくても、欠いた方を金継ぎで直したらよろしいじゃないですか。」と言ったのだ。

早速その足で東急ハンズで「金継ぎキット」を手に入れた。

初めての漆は、知らないことばかりだった。塗っては乾かし、次の工程で塗っては乾かし、ゆっくり、丁寧にことが進む。
おまけに漆というのは乾燥した空気ではうまく乾かないのだ!乾きすぎてカチカチになると、せっかく塗った器からポロッと取れてしまうのだ。

室、などという準備はないため、段ボールにガムテープで目張りをし、湿度を保つためにグラスにたっぷり水を入れたものを添えて「ここは乾くまで二週間、次は乾くまで10日」と、気長に保管しつつ工程を進める。

天然の素材の力はつくづく素晴らしい。素人でも、なんとか形になるものだ。お陰様で、「いや、これ割っても捨てられない」という器が全て救われている。

昨日は久しぶりに行った金継ぎが完成した。これでまた、しばらく使えなかった器たちが食卓に戻ってくることができる。

ところで、室内のグリーンの植え替え。
枯れそうになっていたゴムの木を救うべく、ノコギリで新芽の出ている枝をゴリゴリと切って水に挿したら、見たこともないほど元気になった。残念ながらヒョロヒョロの幹は救えなかったが、小枝たちをまた鉢植えにして、再び根がつくのを待とうと計画している。

昨日は雨で、夫が出かけたため車もなく、一日中家に篭っていた。
長く引き延ばされた一日。家事も読書も金継ぎも、全て終わっても午前中だった。

暇そうにしている私を遊びに誘おうと猫が付きまとったり、撫でようとすると逃げたりの繰り返しの一日・・・。

そういえば今気づいたが、あの器屋さんの店員さん、金継ぎはまさか私が自分でやると思ってあのセリフだったのだろうか?「どこかプロにお願いすればいいじゃないですか?」という意味だったのだろうか??

続く





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