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回顧録⑩

母との関係は、私が30歳になるまで、あまり円満ではありませんでした。むしろ、私は母に対してあまり好意的ではありませんでした。

母は家族の中で6人兄弟の末っ子で、容姿が私とは異なり、魅力的で可愛らしい雰囲気を持っていました。若い頃、彼女はピンク色の服を好んで着用し、特にボーナスの時期にはいつも洋服や靴などたくさんのものを購入していました。見た目に対するこだわりが強い人なのです。実際、今でも見た目や行動に関してはよく叱られます。

しかし、母との関係が変わったのは、私が30歳の時でした。それは私が初めて子供を産んだ後のことでした。初めて母を母親としてではなく、ただの一人の人間として見ることができる瞬間でした。母としてではなく、ただの人としての母を初めて見た瞬間でした。娘として見る視点から解放された瞬間でした。それから母の人としての面を見ることができるようになりました。

実際、母は陽気で社交的で、多くの友達がいます。今でも母は友達の家にお菓子を買って行ったりします。でもその帰りにはその友達から差し上げた以上の野菜や果物を持ち帰ってくることがよくあります。そしていつも同じことを言います。「また○○からたくさんもらった。なんかもっていかないと。」そうやってまた友達に会いに行く母は、友達から大切にされているのが娘の私から見ていてもよくわかります。

これが面白いことに、私も同じことをしてしまうことがあります。今でも母と暮らしているからかもしれませんが、たまに自分でも母に似すぎていてびっくりすることがあります。母を手本として私の私生活が出来上がっているのかもしれません。

今は母と友達のような関係にあり、子供の頃には考えられなかったような二人だけの時間を楽しむことができています。結局母との関係性を通して私が学んだことは、人には様々な立場があるということ。母は母の立場として娘を立派に育てないといけないと口うるさく言ってきます。でも同じ母親同士の立場になれば、母のいうことも理解できますし、友達のようになれば趣味の合う利害関係のない良好な関係になれます。

なので私はもし苦手な人に出会ってしまったとしても、違う立場だったらと視点を変えるようになりました。もしかしたら、その人は自分にとってかけがえのない人になるかもしれません。

 

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